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梟翁夜話 №71 [雑木林の四季]

「台風の進路」

               翻訳家  島村泰治

誰の書き物だったか、川の流れと獣道は土地の起伏に沿って自然に決まるものだ、と云ふ意味のことを読んだ。なるほどさう云ふものか、と頷いた記憶がある。植物でも空間を縫うやうに育つわけだし、直に育てるには敢えてその空間を按配すればいい。子供なども、…などと生活哲学まで話を広げる気はさらさらないが、この伝で最近気になる現象がある。

唐突だが、台風のルートがそれだ。九月から十月へ、南の海で育った台風が次々と日本列島を襲ふのが常のことで、中には変わった進路を取るのもあるが、大方は九州沖縄まで北上して列島に沿って右折するとしたものだ。右折の角度で本州のどのあたりかが暴風雨の洗礼を受ける。台風の発生ごとに稲作地帯は一喜一憂するわけだが、どうやら恒例の台風の進路に変化が見られるのだ。

月が改まって九月も十日、それまで四、五本の台風がすべて直進し、これは流石に右折するかと思ひきや、直近の十号までもが朝鮮半島から支那大陸へ真っ直ぐに突っ走った。たった数本ながらすべてが直行型だと云ふことになる。さてこうなれば、今年の台風の振る舞いは奇怪な現象にすら見える。

この現象が何かの原因で起こっているとすれば、それを是非知りたいものだ。気象学などは縁がなく全くの門外漢だが、地球温暖化の影響などでもあるとすれば、話は単純ではない。大陸では何やらダムの決壊や水害が懸念され、台風が来ないとなると日本列島も水害とは真逆の水不足に悩みはしないか、云々。

私事だが、筆者は台風が嫌いではない。穏やかでない言い草だが、台風が直撃するときのダイナミックな風雨の変化に惹かれる。特に、目に入った瞬間に風が一瞬止まる様子が好きなのである。自然の息遣いを感じる瞬間が例えやうもない。あまり人様にはひけらかせない話だが。

台風の進路の話に戻るが、もしこれが異常気象の一環だとすれば、太平洋の水温の上昇もあらう、海流の変化も絡んで来はしないか、もしさうだとしたら秋刀魚の不漁にも関わってはゐまいか、と憶測を逞しくする。九月も深まれば台風も本番、さて気になるところではある。

ところで、迷惑な台風にも乙な季節感がある。野分けと云ふのは台風のことだから、俳句を嗜む向きには、まるでこないのは不都合にもなる。とまれ、今年の秋は台風とコロナが気になることだ。生活環境の多様化と云ふことか。


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