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往きは良い良い、帰りは……物語 №86 [文芸美術の森]

こあみ句会通信
       
      こふみ会7月幹事  岡田尚哉・大友下戸 

こふみ会 葉月のご案内

今月は、わたくし尚哉と下戸さんが、幹事を担当いたします。
さて、この「バーチャル句会」「接待を伴わない句会」(弁当や酒がないからね)のネーミング、なんですが、
  「網句会」を活かして、「こあみ句会」
 ネットのこふみ句会、ということで、「ねふみ句会」
この2つを考えてみました。いかがでしょうか。
では、兼題を発表します。
立秋(8月7日ころ)前後で、選んでみました。

枝豆   紙魚(しみ)   風鈴   香水

●8月10日(日)までに、投句をお願いします。
●8月12日をメドに、投句一覧をバックいたします。
●15日までに、選句結果をお送りください。
  天句の鑑賞文、とてもいい企画と思うので、今回もお願いします。
●20日には結果がみなさんに届くよう、がんばります!
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この案内にたいして、孝多氏からこふみ会会員あてにメッセージが届きました。

こふみ会会員各位

8月の句会における兼題「紙魚」をめぐって、混乱が生じている様子ですが、その混乱を解消するために、下記を会員にお告げ致します。
つまり、今回の句会で言う「紙魚」とは、通常の歳時記や国語辞典に載っているとおり、或る種の昆虫を指すものです。
決して、液体としてにじむ「よごれ」「染み」を指すものではありません。この点をはっきりさせておきたいと思います。「紙魚」でも「染み」でも、どちらでも良いというわけではありません。
発音は同じでも意味は違います。「紙魚」の句は《昆虫関連》としてお詠みくださいますよう!
勿論、《昆虫》と知りつつ、それを、どう扱うかは各自の自由、創作のココロとワザの問題です。何ら制約を受けるべきものではありません。
よろしくお願い申し上げます。
(以上令和2年8月6日)
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選句結果の発表です。

暑さもようやく峠を越えようとしています。皆さま、おかわりありませんか。
さて、お待たせしました。標記の集計結果をお届けいたします。
今回は、史上まれにみる大激戦となりました。
特筆すべきは、19人の参加者が選んだ天句が、なんと18作!
つまり、少数の句に点数が集中することは全くなかった、ということです。
みなさんの嗜好が、とにかく、分かれました。
では、そんな百家争鳴状態の跡、たどっていきましょう。

作者別 獲得点ランキング
「天」 29点 可不可さん
「地」 24点 弥生さん
「人」 22点 紅螺さん
「客」 21点 茘子さん
「客」 20点 美留さん
「客」 20点 孝多さん
「客」 19点 一遅さん
「客」 19点 下戸さん

作品別ベストテン
12点 下戸さん   窓ふたつ開けて風鈴生き返る
11点 紅螺さん   ろくでなしと 枝豆食べて 言う女
11点 可不可さん  ほつほつとまず枝豆の夕餉かな
11点 美留さん   枝豆の色よきを我が手柄とす
11点 茘子さん   紙魚喰いし 古き手紙の 若き夢
11点 可不可さん    香水やいずれ消したき記憶かな
10点 弥生さん   征きて還らぬ人の蔵書や紙魚のあと
10点 孝多さん   風鈴や 二人が黙った 時に鳴る
  9点 弥生さん    風鈴の音が引き戻す現実(うつつ)かな
   9点 紅螺さん    微香水 愛でも恋でも ない夜明け

「天」 鑑賞文  枝豆
茹でたての枝豆のひげキラキラリ   (小文) 6票
 :キラキラした枝豆は、お味も抜群と思えます。(華松選) 

ろくでなしと 枝豆食べて 言う女  紅螺さん 11票
 :「ろくでなし!」って言葉を最近あんまり聞かない!
  昭和の男女の歌謡曲にあるような関係が羨ましい。(舞蹴選)

つほつとまず枝豆の夕餉かな  (可不可) 11票
 :夕飯を待ちながら、ビール?と共に枝豆を摘む風景に親しみを感じ、ほつほとという言葉が暑い夏夜の食卓を連想させます。 (小文選)
 :オノマトペの勝利。たぶん恬淡であろう暮らしぶりも想像できます。(尚哉選)

枝豆のたわわに届き母元気  (一遅) 6票 
 :鬱陶しいこの8月の句会で一番元気のいい句・元気な母 へ天。(鬼禿選)

枝豆の色よきを我が手柄とす  (美留)  11票
 :措辞の素晴らしさに感服致しました。まさに語彙力の現われです。有難うございました。 (孝多選)

「天」 鑑賞文  紙魚
征きて還らぬ人の蔵書や紙魚のあと  (弥生) 10票 
 :八月、戦没された方を静に偲ばれる一時が目に浮かびます。戦時も遠くなりました。(紅螺選)

紙魚走るアグネスラムの腰の上  (すかんぽ)  8票
 :アグネスラムにまさかの紙魚の取り合わせ。一瞬、「グラビア印刷に紙魚出るんだっけ?」と思いましたが、ちょっとエロい虫だったのでしょうね。 (美留選)

紙魚喰いし 古き手紙の 若き夢  (茘子) 11票
 :古き手紙!若き夢!ああ! (可不可選)

本の中で 眠るよ僕も 紙魚虫(しみむし)も  (孝多)  7票
 :昔、感動をもって読んだ本へのオマージュ、素敵です。どなたの作なんでしょう。 (弥生選)

「天」 鑑賞文  風鈴
風鈴の風ひとつ聞いて猫あくび  (一遅)  5票
 :風を聞くというのがいい。以前、わが家にいた猫を思い出し、猫のいる日常の幸せをかんじました。(玲滴選)

窓ふたつ開けて風鈴生き返る  (下戸) 12票
 :「生き返る」の擬人化が効いていて、一陣の風まで目に浮びました。(すかんぽ選)

風鈴の音が引き戻す現実(うつつ)かな  (弥生)  9票
 :気怠い午後でしょうか、いつの間にか夢という桃源郷に遊び呆けているとチリンと風鈴。現 実に引き戻されそうになるが、まだまだ体の半分は桃源郷から抜け出ていない。いや、抜け出たくない。こんな気分の表現が見事。風鈴の音もチリンでは無く、チイリィ〜〜〜ンとくぐもったように聞こえたのでは。 (虚視選)

風止んで 風鈴の下の 尊厳死  (鬼禿)  5票
 :風が止むことと、命の終わることとのシンボリック対比が大変、新鮮でした。風鈴の題で、この句が出てくるのがすごい。(一遅選)
「天」 鑑賞文  香水
微香水 愛でも恋でも ない夜明け  (紅螺)  9票
 :香水の季語に、微香水を引き出したセンスが好き。若い女性の、凜とした生きざまが伝わってきてグッとくる。(下戸選)

久々に香水付けてあの人と五時 (一遅)  6票
 :開放感と少しの気恥ずかしさ、胸キュンな明るさを感じました (兎子選)

朝支度ひと吹きの香水は鎧  (小文)  8票
 :大人の礼儀をわきまえた秀逸な作品です。(珍椿選)

Mitsoukoてふ香水だけは気をつけろ  (すかんぽ) 6票
 :MITSOUKOのフランス語綴リ。あの頃の情事の景色がまざまざと蘇って、切ないです。(矢太選)

香水やいずれ消したき記憶かな  (可不可)  11票 
 :さらっと語っていながら与える想いは深い。(茘子選)
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こあみ句会葉月 全作品一覧
<枝豆>
 茹でたての枝豆のひげキラキラリ (小文) 
 枝豆を束ねて茹でて友を待つ (舞蹴) 
 青空にピィーンと枝豆 飛ばしてみるか (鬼禿) 
 コロナ下に今年も届くかだだちゃ豆 (玲滴)
 ろくでなしと 枝豆食べて 言う女 (紅螺) 
 ほつほつとまず枝豆の夕餉かな (可不可) 
 枝豆のたわわに届き母元気 (一遅) 
 茹でたての 枝豆青し ただ青し (尚哉) 
 在宅の身に枝豆の塩からし (すかんぽ) 
  亡き父の 庭の枝豆 枯れ果てる (兎子)
 枝豆の色よきを我が手柄とす (美留) 
 ひまつまむ箸で枝豆ポツポツと (虚視) 
 枝豆の弾け転がる夕げかな (弥生) 華美
 八十年 婆(ばば)は枝豆 茹(ゆ)でている (孝多) 
 やわらかき枝豆が好き殻を積む (華松) 
 カウンター客二合トックリと枝豆 (珍椿)
 枝豆をポケットに入れる風来坊 (下戸)  
 惑星の遥かなる孫か枝豆は (矢太) 
 枝豆の 産毛に宿る 朝の露 (茘子) 
<紙魚>
   手にとれば 紙魚跡古き 広辞苑 (紅螺)
   江戸に生き紙魚江戸を喰み江戸に死す (虚視) 
   解けない文字を紙魚に聞く (珍椿)  
   染みひとつ残して紙魚は死ににけり (可不可)
   征きて還らぬ人の蔵書や紙魚のあと (弥生) 
  紙魚連れてあの頃への旅蔵書繰る (一遅) 
   神田の本ひらけば紙魚出づ山手線 (美留) 
  純文学 紙魚一つなし 開高健 (下戸) 
   わが書斎 三千三尾の 紙魚を飼う (尚哉) 
  ごきげんよう活字の森に泳ぐ紙魚 (小文) 
  消しえない 八月の紙魚 黒い雨 (鬼禿) 
  A(アー)カミュの行間を泳ぐ紙魚一尾 (矢太) 
  紙魚走るアグネスラムの腰の上 (すかんぽ) 
  箪笥には 母の着物と 紙魚の跡 (兎子) 
  紙魚喰いし 古き手紙の 若き夢 (茘子) 
  ほの暗き図書館の臭い紙魚のあと (玲滴) 
  本の中で 眠るよ僕も 紙魚虫(しみむし)も (孝多) 
  もぢもぢと紙魚が留まる恋あたり (華松) 
  黄ばみたる荷風の本に紙魚の跡 (舞蹴) 
<風鈴>
    風鈴の 目覚めを待って 夕涼み (茘子) 
  風止まり風鈴もまたひと休み (舞蹴)
  風鈴はためらひがちに ちりと鳴り (華松) 
  風止んで 風鈴の下の 尊厳死 (鬼禿) 
  風鈴に纏わり付きし京ことば (可不可) 
  声は無き かさなり風鈴 涼はこぶ (小文)
  風鈴の風ひとつ聞いて猫あくび (一遅) 
  このたびは 風鈴吊るし 換気かな (尚哉)
    風鈴や 二人が黙った 時に鳴る (孝多) 
  短冊を替へし風鈴高らかと (すかんぽ) 
  夕闇の出窓に風鈴を聴く (珍椿)
  空き家あり 風鈴だけが 生きている (兎子) 
  窓ふたつ開けて風鈴生き返る (下戸) 
  風鈴をねらひ仔猫の眼の動き (美留)
  風鈴や娘の門限とうに過ぎ (矢太) 
  風鈴や 先手の駒を 音高く (紅螺) 
  静けきを求め贖う一風鈴 (虚視)
  風鈴の音が引き戻す現実(うつつ)かな (弥生) 
  風鈴をつるす軒無し振って音聞く (玲滴) 
<香水>
    香水はマスクの奥のお人柄 (鬼禿)
  香水や 心が散歩に 出かけます (孝多) 
  香水や時計は元に戻せない (矢太) 
  今人知るやモンローのシャネルの五番 (玲滴)
  香水がいつかの人をよび戻し (華松) 矢
  微香水 愛でも恋でも ない夜明け (紅螺) 
  久々に香水付けてあの人と五時 (一遅)  
  朝支度ひと吹きの香水は鎧 (小文) 
  Mitsoukoてふ香水だけは気をつけろ (すかんぽ) 
  三面鏡 古い香水 捨てられぬ (兎子) 
  萎み(しぼみ)ゆく手首に着ける薔薇香水 (美留) 
  エレベーター 香水の香の 降りてくる (茘子) 
  香水を嗅ぐ生きることへの不安 (虚視) 
  香水に少し勇気をもらう夜 (舞蹴) 
  遺されし香水涸れて遠き母 (弥生) 
  別れの際 クロアチアの香水贈りぬ (尚哉)
  香水やいずれ消したき記憶かな (可不可) 
  パフュームロングバケーションー夜の愛欲 (珍椿)
   香水の甘い匂いがほぼあなた (下戸)       以上18名76句
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後日、秋員からこんあ声が届きました。

ネット句会、回を重ねだいぶ慣れてきました。
顔を合わせての句会の時、
天句の感想はざわざわとして居る中で聞き取れないことも多かったので、
とてもいい感じになりましたし、
後からじっくり見ることはとても勉強になります。
 



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