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浜田山通信 №272 [雑木林の四季]

熱中症のつらさ

           ジャーナリスト  野村勝美

 新型コロナと熱中症のおかげで今年の夏は汗をかかなかった。一日中冷房のきいた家にとじこもり、ほとんど外出しないのだから汗もかきようがない。しかしこれも新陳代謝をしないということだから体にはよくなかっただろう。コロナと熱中症のダブルパンチ。私は脚も大分弱くなって散策もままならず、今年はまだ電車に乗っていない。
 コロナはことしの初めからだから大分慣れてきたが、熱中症は8月になってからの話。8月といえばTVでは戦争、原爆、敗戦のドキュメンタリーが毎日続く。私は敗戦が旧制中学4年生だったから工場動員、軍事教練、福井空襲と完全な戦時下、青春も何もあったものでなく、いまだに悔しさがこみ上げてくる。とりわけ空襲の恐ろしさは半端じゃない。照明弾で昼のように明るい夜空いっぱい、シュルシュルと不気味な音とともに焼夷弾が落ちてくる。私は母親とともに逃げたが、途中で直撃を受けて逃げる体勢のまま背中の赤ん坊とともに死んでいる母子を横目でちらと見て走り去った。50メートルばかり近くに爆弾が落ち、ものかげに体を寄せたが、母親は「私はちょっとここで休んでいくから先に行きね」という。もう町はずれのちいさな町だ。「ほんなら先行くざ」と母親を置いて走り出した。幸い母親とはあとで落ち合うことができたが、おれはなんて冷たい人間だといまにいたるも後悔の念がわく。あれから75年、長生きしたものだ。しかしいくつになっても、というより、同年の学友知人も4、5人になったが、やはり、いまだに死にたくなく、生への執着は卒寿以降、より強くなったようだ。
 熱中症はクーラーをつけっ放しにして、ときどき水を飲めという。すると、こんどは体が冷えて寒くなり、あわてて長袖のシャツを着込んだり、外に出て熱を取り戻さなければならない。ちょうどよい冷房というのが難しい。だから、この夏、コロナより熱中症の方が辛かった。
 コロナうつ対策としては、身体を動かすことが大事で、何ごとも前向きに考えること、それが免疫力も高めるそうだ。どうやら一日中TVをぼんやりと見て過ごすのはよくない。しかしアベさんも病気には勝てないらしく辞任した。 
 話は変わるが、テニスの大坂なおみ選手に感心した。米中西部ウイスコンシン州で黒人男性が警察官に撃たれた事件に抗議して、全米オープンの前哨戦で4強までいったのに棄権してしまったのだ。「私はアスリーとである前に黒人女性。白人が多数を占めるこの競技で討論が始まれば正しい方向に踏み出す一歩になると思う。警察官の手で黒人が虐殺され続けるのを見ると胸が痛くなる。同じ会話が何度もくり返され、同じことを言うのは疲れる。いつになればおわるのでしょうか」
 同様のメッセージはメジャーリーグやアメフト、バスケットの世界でも巻き起こった。大坂なおみはすごい。因みにアンジェラ・サイニー「科学の人種主義とたたかう」によれば、人種というものはなく、黒人も白人も黄色人も同じ人間という種にすぎない。

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