日めくり汀女俳句 №62 [ことだま五七五]
六月二十九日~七月一日
俳句 中村汀女・文 中村一枝
六月二十九日
滞るる石濡れ得ざる石梅雨の庭
『紅白梅』 梅雨=夏
選挙の日の朝、友人から電話。
「もう投票行ったの。すごいわよ、あんなこと初めて。長い列ができてて待たされたわ。
投票率上がるかもね」前日までどうせ結果は同じかな、投票もどうしようと思っていた私はばちっと目をあけた。
なるほど地区の小学校はいつになく大勢の人出。列もできている。黒板を見ると、二時で投票率三〇%。高くはない。でもこの人出だもの。何か期待できるかな。
夜になり、深夜になり、期待感は下がる一方、あの大勢の意志はこんなはずではなかった。疲れた一日でした。
『紅白梅』 梅雨=夏
選挙の日の朝、友人から電話。
「もう投票行ったの。すごいわよ、あんなこと初めて。長い列ができてて待たされたわ。
投票率上がるかもね」前日までどうせ結果は同じかな、投票もどうしようと思っていた私はばちっと目をあけた。
なるほど地区の小学校はいつになく大勢の人出。列もできている。黒板を見ると、二時で投票率三〇%。高くはない。でもこの人出だもの。何か期待できるかな。
夜になり、深夜になり、期待感は下がる一方、あの大勢の意志はこんなはずではなかった。疲れた一日でした。
六月三十日
見つづけし夢は捨つべく明け易し
『紅白梅』 明易し=夏
十七歳という年齢がまるで魔物のように聞こえる昨今。本当に十七歳は危険な年なのか? いやまるで違う。戸惑いと混迷、反服従・反社会規範、大人なんか皆、うその上塗りの小汚い人に見えて仕方なく、そのくせ自分の中にうつぼつと燃え上がる不安も憧憬もどこにぶつけていいのかわからない。
だれしも一度はそういう道を通り過ぎてきているはずなのに、自分たちの十七歳は、清浄にして、胃すべからざる犠牲と献身にあふれているように思う。
時代、環境は変わる。でも十七歳は十七歳なのだ。
『紅白梅』 明易し=夏
十七歳という年齢がまるで魔物のように聞こえる昨今。本当に十七歳は危険な年なのか? いやまるで違う。戸惑いと混迷、反服従・反社会規範、大人なんか皆、うその上塗りの小汚い人に見えて仕方なく、そのくせ自分の中にうつぼつと燃え上がる不安も憧憬もどこにぶつけていいのかわからない。
だれしも一度はそういう道を通り過ぎてきているはずなのに、自分たちの十七歳は、清浄にして、胃すべからざる犠牲と献身にあふれているように思う。
時代、環境は変わる。でも十七歳は十七歳なのだ。
七月一日
蕗萎える山の天気やほととぎす
『紅白梅』 ほととぎす=夏
富士山の山開きをテレビのニュースでみると、実感として夏がきたという気がする。山を見るのは好きでも、登るのはあまり好きではない。今ごろ、小淵沢駅から小海線に乗ると、電車の中は山支度の中高年で大にぎわいである。いかにもキャリアのありそうなおばさんがとくとくとして山の経験談を語る。
何事でもそうだが、入れ込んでいくうちに、一層山の深みに魅せられていく気持ちは分かる。車内の人たちの深く刻まれた敏が、この時ばかりは二十年いや三十年は若くなって豊かな表情に変身する。
『紅白梅』 ほととぎす=夏
富士山の山開きをテレビのニュースでみると、実感として夏がきたという気がする。山を見るのは好きでも、登るのはあまり好きではない。今ごろ、小淵沢駅から小海線に乗ると、電車の中は山支度の中高年で大にぎわいである。いかにもキャリアのありそうなおばさんがとくとくとして山の経験談を語る。
何事でもそうだが、入れ込んでいくうちに、一層山の深みに魅せられていく気持ちは分かる。車内の人たちの深く刻まれた敏が、この時ばかりは二十年いや三十年は若くなって豊かな表情に変身する。
『日めくり汀女俳句』邑書林
2020-07-14 07:47
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