SSブログ

浜田山通信 №266 [雑木林の四季]

3密と秋霜烈日

                 ジャーナリスト  野村勝美

 政府が緊急事態宣言を解除した5月25日にアベノマスクが郵便受けに入っていた。なんとも間の抜けた話である。同封のちらしには「このマスクは洗って再利用できます」「新型コロナウイルスを防ぐには?」「3つの密を避けましょう」などの注意事項が印刷されている。3つの密というのが、年寄りには、いやモーロクしている私にはどうしても憶えにくいのでありがたかった。換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、間近で会話や発声をする密接場面、以上3つの条件がそろうとクラスター発生のリスクが高いのだそうだ。
 新型コロナウイルスのおかげでPCR検査、ソ-シャル・ディスタンス、ロックダウン、ECMO、テレワーク、テークアウト、ロードマップ、リモートワーク、フェイス・シールドなどカタカナ新語を知らされた。漢字でも濃厚接触なんてどういうこと? 恋人同士、夫婦、家族、会社の同僚、スポーツ選手、演劇仲間、みんなダメということになる。要するに新型コロナは人間社会をぶっ壊したことになる。日本は欧米と比較してコロナによる致死率はずい分と低い。しかし経済に与えた影響は回復不能と言ってもよいほどに大きい。世界中の自動車、航空機、観光、宿泊、飲食業などありとあらゆる産業がストップ、崩壊の危機にある。すべて金儲けにかけるトランプがいくらコロナより経済だと叫んでみたところで、今回の全世界がうけた経済的損失は一年や二年で回復するはずがない。
 私は昔から人間はどうしようもないと言って友人からたしなめられてきたが、このコロナ鬱に拍車をかけたのは、黒川弘務東京高検検事長のカケ麻雀退職問題だ。黒川検事長を検事総長にするために定年延長の関連法案を出したころは、いまやなんでもありのアベ内閣ならやりかねないなと思っていたが、そのかんじんの検事長が新聞記者との常習かけ麻雀犯だった。しかもそれこそ3密禁止のさなかに。空いた口がふさがらないとはこのことだ。
 私は昔々の大昔、新聞記者の駆け出しのころ造船疑獄という政界を揺るがす大事件があり、東京地検の自動車の追っかけ要員として裁判所クラブに察回りからひっぱりあげられたことがある。昭和29年(1954年)、狙いは時の第五次吉田自由党幹事長佐藤栄作(のちに首相)だったが、犬養建法相が指揮権を発動し、疑獄はつぶされた。犬養建は昭和7年、5・15事件で海軍青年将校に射殺された犬養毅(木堂)首相の二男。作家でもあったが、指揮権発動後まもなく辞任、再び政界に戻らなかった。佐藤栄作は10年後首相になる。法務大臣の指揮権は、検察トップの検事総長に対してだけである。以来検察は政界の汚職には及び腰になり、いまや自民党政権の腰巾着になっている。もちろん黒川検事長はそこを見込まれたのだが、それにしても新聞記者とかけ麻雀の常習犯とは、秋霜烈日の検事バッジが泣いている、なんて古すぎるか。

nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。