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対話随想余滴 №38 [核無き世界をめざして]

余滴38  中山士朗から関千枝子へ

                 作家  中山士朗

 お手紙拝見し、新型コロナウイルス感染拡大の影響の重苦しさがひしひしと伝わってくるのを覚えました。ことに、「原爆の図」を展示する東松山市の「原爆の図丸木美術館」の新館建設の計画を直撃しているというニュースは、あらためてその影響の恐ろしさを感じずにはいられません。
 お手紙にありました、関さんの朝日新聞への図書館についての投書に関して反響が大きく、一カ月後に反響特集が組まれた由。そして、図書館を愛する人の多さに感動した、と関さんは書いておられました。私も朝日新聞を購読していますが、私が住んでいる大分県では、朝日新聞西部本社福岡本部で制作されるため、東京版の記事が割愛されたのではないでしょうか。残念でした。それにしても、自粛が要請される中にあって、女性「九条の会」で、内海愛子さんを囲む学習会を行われたり、展覧会などに行かれたりと、「行動する人である関さんのお姿がありありとうかんで参ります。
 それに比し、自粛が促される以前から、万年自粛生活の我が身が思いやられずにはいられませんでした。
 考えてみれば、被爆直後に顔のケロイドに鬱屈して、家に閉じこもってばかりいた頃のことに非常に似通った現象であることに気づいたという次第です。ですから、先の手紙でアメリカのトランプ大統領や日本の安倍首相が大型コロナウイルスの感染拡大の混乱について「戦争」という言葉を用いたことに反発を覚えた文章を書きましたが、その直後の五月六日付の朝日新聞に、対コロナ「戦争」の例えは適切か、と題した社説が掲載されていました。国民の生命を脅かし、経済にも大きな打撃をもたらす、その危機の深刻さを訴える狙いがあるとしても、新型コロナウイルスへの対応を「戦争」と例えることに、政治家はもっと慎重であるべきだろう、という書き出しではじまる論説が私の心を捉えました。
 それによると、
 トランプ大統領は、
 「戦時大統領」と名乗り、
 中国の習近平国家主席は、この闘いを
 「人民戦争」と称した。
 フランスのマクロン大統領も
 「我々は戦争状態にある」と述べた。
 ドイツのシュタインマイヤー大統領は、国民に向けたテレビ演説で、「感染症の世界的拡大は戦争ではない。国と国、兵士と兵士が戦っているわけでもない。私たちの人間性が試されている」と語っているとあります。
 そして、最後に、
 「ひとびとの生命と暮らしを守るたしかな行動を促すため、冷静に考え抜かれた言葉こそ、政治家にもとめられる」
 と結ばれています。
 話が後先になりましたが、関さんの通院や薬の記録を拝読しながら。私自身の日常生活を振りかえりましたが、同病相憐れむというか、同じ苦難の道を歩んでいるのを強く感じました。
 お手紙のなかにありました、
 「今年は被爆七五年、幼少期に被爆、やっと切り抜けたのに人生の最後に来てコロナ」と怒る人の言葉、まことにもって身に沁みます。


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