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検証 公団居住60年 №51 [雑木林の四季]

第三章 中曽「民活」~建替えいたいする居住者温存と抵抗

     国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

2・建て替え事業の概要と自治協の見直し要求

 建て替え団地に指定されて居住者、自治会はどのように対応し、戦ったかを述べるまえに、公団が事業着手にあたって提示した事業のすすめ方等は各団地共通であるから、はじめこ概略を紹介しておく。
 まず「居住者説明会」が事業開始の基準日となる。説明会で公団は、事業の進め方、建て替え計画の概要、間取りと概算家賃、移転の条件、当面の手続き等について1時間30分程度、計画は確定したものとして一方的に説明し、30分程度質疑応答をしたら強引に打ち切って閉会にする。説明会は公団にとって事業開始の儀式でしかない。
 事業の進め方はつぎのとおり-説明会の日から2年後を移転期限とし、居住者に一時使用賃貸借契約への切り替えと建て替え同意の覚書締結をもとめる。住宅希望調査をして建設計画を確定、団地内に仮移転先確保のため工事を前後に分ける工区を設定し、期限内に本移転者は他団地等へ、戻り入居予定者は後工区の空き家または他団地へ仮移転する。2年間の移転期限がすぎ、1年半から2年をかけて先工区の除却・建設工事をおこない、建て替え後住宅が完成、戻り入居希望者が入居する。後工区はすべて空き家となり、除却・建設工事がはじまる。後工区の建て替え後住宅が完成すると入居者の一般公募をおこなう。
 この工区制のほに、団地の規模や立地条件などによって、期別制、ブロック期別・ブロック制等の実施方法がとられている。
 従前居住者にたいしてはつぎの措置をとる(措置は1998年度までに若干改Eされた)。

① 建て替え後賃貸住宅への戻り入居
② 戻り入居住宅の家賃減額措置(公募家賃から7年間減額)
③ 仮移転が必要な場合の仮移転住宅あっせん
④ 他の公団住宅の優先あっせん
⑤ 本移転先公団住宅の家賃減額措置(2万円を上限に移転先家賃を40%、5年間減額)
⑥ 減額措置に見合う額の支払い(他の公団賃貸以外への本移転に100万円)
⑦ 移転にともなう費用の支払い
⑧ 退去時補修費用の免除
⑨ 世帯分離を希望する者にたいする2戸割り当て
① 建て替え後分譲住宅の優先入居権付与

 全国自治協は、1986年5月に建て替え着手第1号に指定された神奈川・小杉御殿団地の事業の進め方とその内容を検討して、ただちに「建て替えの抜本的見直しを求める7項目要求」を提起した。

① 居住者にとって居住性の向上となる真の建て替えにすること
② 建て替え後も現行家賃に準じたものにすること
③ 団地全体を画一的に建て替えるのではなく、実施に柔軟性をもたせ、居住者に考慮と選択の余地を保障すること
④ 公共賃貸住宅として建て替えること
⑤ 高齢者・身障者世帯等に配慮した家賃、住宅設備にすること
⑥「国の施策」として補助金等の特別措置を講ずること
② 計画の検討段階から自治会・自治協と十分に話し合い、一方的な押し付けをしないこと

 事業の進行状況について具体的に、東京都内で建て替え第1号となった蓮根団地(816戸、板橋区)と東京多摩地区第1号の柳沢団地(512戸、保谷市、いま西東京市)、公団が明渡し請求訴訟を起こした金町団地(226戸、葛飾区)での特徴点をみておこう。

『検証 公団居住60年』 東信堂

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