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往きは良い良い、帰りは……物語 №80 [文芸美術の森]

第602回こふみ句会
令和2年(2020年)1月12日    於 TCCクラブハウス

           俳句・こふみ会同人  岩永矢太

 こんにちは。孝多さんが突然ヘルニアで入院されました。盲腸ですね。それで、孝多さんの次に古参の不肖矢太が、この「こふみ句会レポート」代筆を、ということになりました。昨日ご本人からお電話あり。無事手術終わり退院なすった由。いつものようにお元気な若々しいお声でしたよ。ご安心ください。
 さて、そういうわけで、正月初句会というのにちょっと寂しい空気、と言いたいところですが、いやいやどうして、いつも以上にお酒やワインがどっさり。賑やかな座となりました。

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お酒いろいろ
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「醍醐」のお寿司

 2020年の正月句会です。こふみ句会はいったい何歳になったんだろう。と誰かが言い出して、俳句作りに入る前に昔話が盛り上がりました。

 第一回がたしか1969年の12月だったから、51歳になったということだろう。いや、それは数え年だから50歳かもしれないね。じゃあ、602回目じゃないかなあ。孝多さんに確かめてみよう(指を折っても誰もうまく計算できません)。
 思い起こせば、第一回は銀座の旅館“小富美”だった。だから、「こふみ句会」というんだよ。今思うとイージーな命名だったね。「創設メンバーは今はもう二人しかいない。孝多さんと僕だけになっちゃった。」と矢太が呟けば、可不可が「僕が最年少で28歳だった。」と笑う。その可不可もいまは喜寿を迎える。それにしてもよく続いているなあ、などと話が弾む内に締め切り時間が迫ってきました。

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 さて、今月の幹事は、紅螺と弥生さん。女性デュオです。ひねった兼題(宿題)でした。

「咳」と「初」
「咳」は、毎年のように出される季題ですね。俳人の名句も多い。おなじみだけに新味を詠うのはむつかしいなあ。「初」は季語ではない。KEY語でしょう。あくまで季感のある使い方をしなさい、と幹事からの案内にありました。「初恋なんてダメですよ。」と釘をさされました。
 席題(当日の出題)も同じような趣向でした。
「手袋」と「遊」
「手袋」も類句に気をつけなくっちゃ。「遊」も季語ではないから気をつけて。遊女なんて使い方はいいけどね。などと冗談がかわされて。

 さて、時間の立つのは早いもので、あっという間に〆切です。1時間後、こんな俳句たちが誕生しました。清記された用紙のコピーが回ってきました。

「咳」
止まらぬ咳眠れぬママあさの4時 珍椿
柩からたしかに一つ小さき咳 矢太
終点まで父子の尻とり折々の咳 弥生
明朝はプレゼン同僚の咳止まず 美留
咳込むぞ360度気を配る 下戸
隣室から咳ひとついまだ我あり 一遅
!咳一つ噛殺されて箱二つ(関空P・J待合室)鬼禿
咳ひとつふいに轟くパイプオルガン 可不可
咳やまぬ一人住まいの明日は雨 玲滴
咳までは隠しきれずにかくれんぼ 舞蹴
父と子が似た咳をする宵の道 紅螺
咳止まず拳骨硬く握りけり 虚視
咳ひとつこの妻(ひと)と添い遂げるのか 尚哉

「初」
吉か凶つねならぬいろ初あかね 虚視
ルージュ引く今年もやるわよ初鏡 鬼禿
初競りの声高く今年の願いこめ 玲滴
初日見る勇気なき老い寝床かな 美留
脱ぐ順もいつも通りの初湯かな 可不可
初湯かな湯気のむこうのまろき背は亡母(ルビ→はは) 弥生
初仕事老婆の手を取り下着売り場 下戸
初句会ほろ酔い状態筆走る 舞蹴
初詣あつかましくも幸せ所望 一遅
初雪や口を開いて子が走る 舞蹴
初場所や行司だまりに知った人 紅螺
御利益も万分の一かや初詣 尚哉
初雪やとうとう兄に会わぬまま 矢太

「手袋」
手袋を脱いで指切りげんまんね 矢太
手袋の移り香で知る落と主 虚視
片手袋何が悲しくて道に落ち 尚哉
駅階段見上げて手袋しかと填め 美留
脱ぎ捨てし手袋指の形して 弥生
手袋の片手なくすはババの常 玲滴
手袋をしたママ交わす握手かな 可不可
手袋のポンポンとたたき旅たちぬ 一遅
同伴の絹の手袋あるやうなないやうな 下戸
凍てついた歩道で招く片手袋 鬼禿
身を焦がす恋とはいかず赤い手袋 舞蹴
手袋の指の穴にも風寒し 紅羅
函から逃げて手袋はめて箱の中 珍椿

「遊」
雪が降るやっぱりあなたはこないのね 矢太
遊印の朱も濃く年賀のねずみかな 紅羅
若だんさんお遊びなはれ今の内 珍椿
旅立ちし孫と遊ぼうゴールデンウイーク 玲滴
燗酒の喉で遊んで落ちにけり 可不可
未来などどこふく風か遊び人 舞蹴
酔っ払ひ宇宙も地球も遊泳禁止 下戸
寒き朝も遊びをせんとや目覚めけん 弥生
梅香りゆっくり遊歩道に車椅子 一遅
ゆふゆふと雲遊びおりベイルート 鬼禿
ゾーンに入るがごとく童の独楽遊び 美留
六十代遊びをせむと生きまくれ 尚哉
遊園地冬陽のなかで木馬が回る 虚視

 選句戦は、次の5句が短冊天争いを繰り広げました。

脱ぐ順もいつも通りの初湯かな 可不可
吉か凶つねならぬいろ初あかね 虚視
咳ひとつふいに轟くパイプオルガン 可不可
初雪や口を開いて子が走る 舞蹴
初雪やとうとう兄に会わぬまま 矢太

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で、得票数順位。総合天は、60票獲得の可不可さん。地が、54票紅螺さん。人は、51票虚視さん。


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天地人三人並んで


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水野タケシ

矢多さま、リポートありがとうございます!!楽しく拝読しました!!

孝多先生、まだまだ寒い日が続きますから、どうぞご自愛専一に!

先生のビールは、私が頂きますので!!W(//∇//)
by 水野タケシ (2020-02-01 09:01) 

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