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私の中の一語一会 №206 [雑木林の四季]

    米・ナイキ社の厚底シューズ「ヴェイパーフライ」シリーズは魔法のシューズ?
    ~陸上長距離界の常識を変える“厚底シューズ”でマラソンは高速化時代へ~

        アナウンサー&キャスター  藤田和弘

 正月のニューイヤー駅伝や箱根駅伝に続いて、19日に広島市で行われた都道府県対抗駅伝(男子)でも6チームが大会新記録でゴールした。
 3年振りに8度目の優勝を遂げた長野県のタイム2時間17分11秒は、今までの大会記録2時間18分43秒を28秒短縮するものであった。
 驚いたことに、タイムの更新は長野だけではなかった。
 2位の兵庫に続く埼玉、佐賀、静岡、茨城の上位6チームが、すべて従来の大会記録を上回る大会新記録だったのだからスゴイとしか言いようがない。
 翌日のスポーツ紙は,超ハイペースのレースを演出したのは、スポーツ用品大手、米・ナイキ社の厚底シューズ「ヴェイパーフライ」シリーズの存在があったからだと書いている。
 全7区間のうち2区間で区間新記録、別の2区間では区間タイ記録が出るという高速レースになった。
 出場した多くの選手がピンク、オレンジ、グリーンなどナイキカラーの“厚底シューズ”を履いていたのである。
 福島のアンカーを務めた相沢晃(22=東洋大)は37分10秒の区間記録にあと1秒届かなかったが、厚底シューズについて「ナイキがずっと研究して作り上げたシューズだ。選手はそれに見合う走力がないと履きこなせない」と話した。
 宮城県のアンカーはリオ五輪の男子5000,1万メートル代表だった旭化成の村山紘太(26)が務めたが「自分の足がしっかり出来ていれば自然に前へ進んでくれる、魔法みたい。一種のお守りのよう・・」というコメントを残した。
“一足のシューズ”がマラソンや駅伝など陸上長距離界に旋風を巻き起こすようになったのは2017年春頃からである。
 ナイキ社が5年の歳月をかけて開発した“厚底シューズ”を発表した時、「早く走るためのツールとしてのシューズが誕生した」とアスリート達の間でアッという間に評判になった。
 今や、世界中の長距離ランナーの多くがナイキ社製の厚底シューズを履いているようである。
 今年の正月の「箱根駅伝」では、出場選手の約85%がナイキの“ヴェイパーフライ”シリーズを履いていたという調査結果もある。
 2020箱根駅伝は、区間新記録が続出したという意味では“駅伝史上に残る”大会だったと言えるのではないだろうか。
 以下は区間賞を手にしたランナー達である。
  1区、米満 玲 (創価大)1:01:13  区間賞
  2区 相沢 晃 (東洋大)1:05:57   〃
  3区 イエゴン・ヴィンセント・キベット(東京国際大)
               0:57:25 区間新記録
  4区 吉田 祐也(東洋大)1:00:30   〃
  5区 宮下 隼人(東洋大)1:10:25   〃
  6区 館沢 享次(東海大)0:57:17   〃
  7区 阿部 弘輝(明治大)1:01:40   〃 
  8区 小松 陽平(東海大)1:04:24   〃
  9区 神林 勇太(青学大)1:08:13   〃
 10区 嶋津 雄大(創価大)1:08:40   〃
この内、10区の嶋津を除く9人全員がナイキの厚底シューズを履いていたことが分かっている。
 ナイキの“厚底シューズ”はデビュー以来、世界中で記録を塗り替えてきた実績を持っているのだ。
 着用した多くのトップアスリート達の声を聞き、データを蓄積して改良が重ねられた。
 現在の“ヴェイパーフライ”シリーズは3代目になるという。
  今年の箱根駅伝、1区から3区までのランナーを調べてみると・・・
 1区で“ナイキ以外のシューズ”を履いていた選手は、帝京大が“ニューバランス”、日大が“ミズノ”で2人だけだった。
 2区は早大の“アシックス”で一人だけ。
 3区は帝京大が“ミズノ”、法政大は“アディダス”、拓殖大が“ニューバランス”、神奈川大“アディダス”、早大“ニューバランス”の5人であった。
 最終的には210人が走った中で177人(往路87人、復路90人)がナイキで、“ナイキ厚底シューズ着用率”は84.3%であった。
 ナイキ以外のシューズも各メーカーの厚底プロトタイプ(試作品)だから、厚底シューズであることには変わりがない。
 厚底シューズは、文字通り「厚い靴底」を特長とするが、ナイキ以外にも国内メーカーのミズノやアシックス、アディダス,ニューバランスなども新型シューズの開発に力を注いでいるというのが現状だ。
 尾張旭市の体育施設スタッフが発信したオフィシャルブログによると、履いたことのある人は「ピョンピョン跳ねるみたい」とか「トランポリン?」などという感想を漏らすそうだ。
 靴底の少し上部を“ミッドソール”と呼ぶが、ここにカーボンプレートが埋め込まれている。
 ミッドソールから高い反発力が生み出され“前へ進む推進力”に変わるから楽にスピードが出るというのだ。
 クッション性にも優れているので長く走っても脚にかかる負担は少ないという。
 しかし、しっかり走り込んで“履きこなす”ことが出来なければ、宝の持ち腐れになってしまう。
 臀部を中心とした筋力トレーニングも必要になってくる・・要するに“素人向きではなく”、しかも自分に“合う”,“合わない”があるということなのだ。
 合えば、鬼に金棒になるが、合わないと故障につながる可能性もあり、厚底シューズを履けば、誰でも早く走れるという訳ではない。
 26日の大坂国際女子マラソンは、ダイハツの松田瑞生(24)が2時間21分47秒でゴールテープを切り、2年ぶり2度目の優勝を果たした。東京五輪へ大きく前進である。
 レースはハイペースに終始した。
 松田が仕掛けたのは早めの31キロ地点だったが、最後まで脚力の衰えは見えなかった。
 2時間21分台の記録を持つベレテ(バーレーン)を置き去りにしてゴールに飛び込んだのである。
 五輪派遣設定記録2時間22分22秒を35秒上回る2時間21分47秒は日本歴代6位の好タイムであった。
 松田瑞生はニューバランス製の“非厚底シューズ”で走ったというスポーツ紙の記事を読んで、ナイキではないことを知ったが、「誰もがナイキを履くという思い込み」は捨てなければならないと思った。
 彼女が履いたのはニューバランスだったようだが、レース直前にソールを新たにつくって調整してもらい、履き心地を確かめてからレースに臨んでいたのである。
 シューズの調整を手掛けたのは、名工といわれる靴職人の三村仁司さん(71)とのことだが、「彼女は外反母趾なので既製品では無理だ」ということだった。
 足首にテーピングも施すなどのサポートもあったそうである。
 シューズが足に“合う”か”合わない”かを見極めるのが、如何に大事かという貴重なエピソードだと思った。
 今月半ば、英・デーリーテレグラフ紙の電子版など多くの英国メディアが、世界陸連による委員会が“シューズの底の厚さに制限を加える規制”を設けることになるのではないかと報じたため、世界はハラハラしながら成り行きを注目していた。
、正式発表は31日になるようだが、「全面的な禁止は見送る方針」と伝わって、関係者も安堵したことだろ。
 高速化が進む陸上長距離界で「厚底シューズ禁止」などの規制がかかれば、五輪の日本代表選考などに混乱が起きる懸念もあったのである。
 3月1日の東京マラソンには、大迫傑、設楽悠太、井上大仁らが招待選手として名を連ねている。
 彼らは2時間5分50秒の日本記録更新が目標だとか・・頑張って欲しい。
 ナイキの厚底シューズ“ヴェイパーフライ”シリーズは「魔法のシューズ」であることは間違いないなさそうである。


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