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私の中の一語一会 №204 [雑木林の四季]

          大学入試共通テスト、「英語民間試験導入を断念」で分かったこと
      ~大学入試改革は、受験生のためではなく、教育業界のためってホント?~

        アナウンサー&キャスター  藤田和弘

 大学入試は、センター試験に代わる新しい“大学入学共通テスト”なるものを導入して、2021年度の入試から適用することになっていた。
 ところが2019年11月1日、萩生田光一文科相が「大学入試共通テストに“英語民間試験を導入しない”ことが決まった」と発表したから、大学を含めた教育界はひとまず“安堵したようである。
 さらに12月1日には“国語と数学の記述式問題”も延期することが決まって、高校生たちはかえって不安を募らせているのではないかと気の毒に思った。   
 今回の新しい改革案が中止になったことで、一番迷惑したのは受験生だろうが、多くの大学関係者もホッとしているというハナシがあちこちに散らばっている。
 萩生田文科相の「身の丈発言」が国民の反発を招いたことがキッカケとなって、英語の民間試験導入には“幾つもの疑念や疑問がある”ことが炙り出されたといってもいいだろう。
 英語民間試験は、今の高校2年生が来年(2020年)4月~12月の間に英語の民間試験を2回受け、その成績が大学に提供されるというものであった。
 2回の試験で得た成績を出願資格にするか、成績を加点対象にするか・・などは大学によって分かれるので、受験生を迷わす恐れが考えられる。
 1回の受験料が2万円を超えるものもあり、2回受けなければならないのは経済的な負担増につながる心配がある。
 受験できる会場も、英検やベネッセ関連のCTECなどに限られるというから、住む地域によっては受験生が不便を強いられることにもなる。
 経済的に余裕のある家庭の受験生は何回も腕試しが出来るというのも、教育の機会均等という視点からは問題なのではないか・・
 記述式問題の採点は、大量の回答を民間の採点者に依頼することになるので、“公平な採点”という点でも疑問が残る。
 このように、ちょっと考えただけでも問題多発という印象は拭えない、メリットなどは浮かんでこないのだ。
 そこへ萩生田文科相の「身の丈に合わせて頑張ってもらえれば・・」という差別容認ともとれる失言があったから、野党に追及される羽目になった。
 さすがに与党からも見直しを求める声が出たこともあって、実施を見送らざるを得なかったのである。
 萩生田文科相は「自信を持ってお勧めできるシステムになっていない」として導入断念を発表した。
 今後1年をかけて新しい制度を検討して、2024年度からの実施を目指すとことになった。
 こんな無理な入試改革が何故進んだのだろうか?・・
 一体誰のための入試改革だったのだろうか?・・知りたいことがたくさんある。
 首都大学東京の山下裕介教授が現代ビジネスに発表した小論文によれば、「これだけ杜撰な入試改革は、文部科学省がすすめたものではないだろう。何らかの意図をもった“政治からの強制”があったからと考えるのが自然だと述べている。
 そもそも英語民間試験の導入は、教育界ではなく財界から湧いた話だったようだ。
 ビジネスチャンス拡大を意図した教育産業の暗躍を指摘するメディアもあった。
「高校生のための学びの基礎診断」と言えば聞こえはいいが、実態は受験生のためではなく、文科省のためでもない。英語試験業者のための改革だったのではないかというのだからヒドイ話しだ。
 無理なゴリ押しは、政権運営や改革推進に得策でないという判断が、「桜を見る会」で追い込まれている官邸側にあったのかも知れない。
 だから安倍内閣の中枢にいる萩生田大臣がストップをかけたのであろうと山下教授は言う。
 誰も得をしない杜撰な改革が実施寸前まで、何故進んでしまっていたのかを考えなければならない。
 問題の核心は、ズバリ“政府”、“官邸”、“安倍晋三内閣”にある。
 官邸で生じた声は、声の主の思い以上に絶大になって政治化され、政策化される。
 そうなると異論や反論は一切起きないものだ。現に大学の現場から出る批判の声は大きくならなかった。
 昨年3月の時点で「英語の民間試験は採用しない」と宣言していた東京大学でさえ、ひと月ほど後には「採用の方向である」と軟化していた。
 東大総長らが下村博文元文科相に“自民党本部に呼びつけられた後”であったという。
 こうなると問題点の整理やリスクの排除もなされにくくなる。
 こうした異論・反論の排除は末端まで行きわたっており、教育界中枢だけのものではないのだ。
 本来なら、現場から上がってくるべき声も一切挙がってこなかったのである。
 問題点は放置され、政策だけが実施寸前までいっていたことを思うと、萩生田大臣にストップしてもらって良かったとさえ教授は書いている。
「安倍一強」という強権体制を“本気で解かないと”政治が主導することさえ、まともに動かなくなっているのだ。
 入試改革の頓挫は氷山の一角、色々な局面で不都合なことが露見し出している。
 カジノを含むIR産業だって、ホントに儲かるか分からない。特にアメリカ・ラスベガスの業者参入なんてことになれば、利益はみんな持って行かれるに違いない。なにしろ後ろにはトランプ大統領がいるのだから・・
 IR誘致疑惑も、逮捕された秋元司容疑者で終わらず、白須賀貴樹衆銀議員、勝沼栄明・前衆議院議員などへの捜査もあるかも知れない。まだまだ裾が広がりそうな気配を否定できない。
 政策の現場では「本来こうあるべきだ」や「こうでなければ困る」という声より「反対しても仕方がない」とか「逆らわないほうがいい」の無気力が勝っているのではないか。
やったふり」の無責任、弱者への責任転嫁も日常茶飯だったりして・・・
 今回のように、政権は政策が実現しているつもりでいたら、「真面目にそれをやっていなかった」ということが起こってしまうのだろう。
 よく言われることだが、“中央集権は必ず腐敗する”のだ。強力な体制であっても必ず欠落は生じるものなのだ。
 安倍政権は憲法改正を口にするが、長い割には何のレガシ-もないのは周知の事実だ。
「モリ・カケ」や「桜」では公文書が次々に消えるなど内政は崩壊している。
 もし同じようなことが外交や軍事、経済領域で起きれば、国民全体の暮らしに与える影響は計り知れない。
 こんな状態は早く解かなければならないのだ。
 我々はもういい加減に、現行の政治体制が持つ問題点を直視し、改善に手を尽くすべきなのである。
 次の政権には、それが与党であれ野党であれ、まずやらなければならないことは政治体制の健全化である。
 自浄装置(?)の取り付けが政治使命の第一歩かも知れない。
 そして首相及び内閣に集まり過ぎた権力を元に戻さなければならない。
 国民は、どれ程の危機感をもって、ここ数年の安倍政権にリスクを感じていたかが問題になるが、一見して見えない危機に警鐘をならしたくてこの一文をしたためた。
 令和2年がよい年になれば心よりと願うと述べて山下教授の小論文は閉じられている。
 私も令和2年が良い年になるよう願う一人だが、もし国民が安倍首相の逃げ切りを許すようなことがあったら、良い年にはならないだろう。
 私はそう思っている。
 


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