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バルタンの呟き №65 [雑木林の四季]

2020年の幕開けに                  

              映画監督  飯島敏宏

令和2年、西暦2020年が明けました。2020TOKYOオリンピック・パラリンピック競技大会の年、安倍総理大臣風の惹句で称えさせていただけば、「わが日本が、世界に輝く年」のはずです。皇居前にも、特例として令和天皇皇后とともに、ご退位後の上皇皇太后も併せてご臨席されたお立ち台に宮中ご一家総員を一目見ようと詰めかけた数万の国民の皆様の日の丸の小旗が波打ち、やがて、際限なく繰り返される万歳々々の声が、ご一同ご退出まで、こだまするに違いありません。戦後75年、ようやく迎えた平和日本の隆盛の年、所謂戦後レジム脱却を遂げた、と国民の皆様の圧倒的な支持を得た現政権が、胸を張りたくなる情景が、テレビ、ネットを席捲しているかもしれません。たとえ、バルタンの僻目には、どうしてもその上には、巨大な星条旗が覆いかぶさって見えてしまうにしても・・・です。

ところで、この欄ですでに幾たびか呟かせて頂いたのですが、僕にとっての西暦2020年は、「いよいよ来てしまったか!」
と言わなければならない年なのです。
西暦1966年5月8日TBS-TVから流れた「ウルトラQ・2020年の挑戦」という空想科学特撮ドラマ番組で、僕は、全国の子供たちに、「西暦2020年の地球は、過度な生産活動から生じた公害で、自然環境が荒廃し、醜怪脆弱な肉体のケムール人と化してしまった人類が、健全な肉体を求めて西暦1966年現在の東京へ、人間を拉致しにやってきた」という映像を流して、テレビの前の日本中の子供たちを恐怖のどん底に落としてしまったのです。その時点では、西暦2020年は、はるかに遠い未来で、まさかそこに僕自身がいて、米寿を迎えるとは思っていなかったのです。
「ウルトラQ」では、西暦2020年の地球は、日中でも、CO₁を含むスモッグに覆われて太陽光が地表に届かない暗闇で、ケムール人は、大きな複眼の目を常に回転させて周囲を窺うために見開いていなければならないし、排気ガス等の刺激を受けて、皮膚は変質して、岩石のように固まり、気圧も減少して、重力がのしかかり、手足もつねに吸盤のように地表に張り付いていなければならない、といったコンセプトで成田亨さんがデザインしたあの醜怪なケムール人が、1966年の地球に向かって飛び立たねばならない年なのです。「ウルトラQ」を放映して、僕たちは当時の子供たちに、そう告げてしまったのです。
ですから、もし、この令和二年に、オリンピック・パラリンピックが日本のTOKYOで無事に行われでもしたら、僕は大ウソつきの汚名を着せられなければならないのですから、この年明けは至極憂鬱なのです。さりとてまさか新年早々せっかくのTOKYOオリンピック・パラリンピックの不成功を祈るわけにもいきませんから。
しかもどうでしょう、最近のスポーツ選手を見て、さらに嘆かわしいのは、なにかにつけて目に触れるかれらは、男性にしても女性にしても、実に見事な、逞しく美しい肉体を備えているではありませんか。西暦2020年の今日の地球は、ケムール星と化した地球どころか、人類が最も優良な体躯と文明を謳歌している時代と言わなければならないのかもしれません。
うーん、でも、そうでしょうか。ここでシャッポを脱いでKEYを置くべきでしょうか。
いや、でも、まだまだ分かりません。例えば、頭上に広がる碧い空です。一見、美しい筋雲と映る幾条もの白雲は、この空を引っ切り無しに飛び交う巨大ジェット航空機の排気が作り出した排気ガスの痕跡であり、吹き付ける北風には、いまだに石炭燃料を燃やし続ける中国大陸の巨大工業地帯から送られてくる微小有毒物質pm2.5を含むガスが潜んでいるし、地球が天体として自然に営む地殻変動で逃れられないとされてきた首都東京直下型大地震も、富士山噴火による大火砕流等々も、いまや、グローバルに行われ続ける人類の過剰な生産活動が自然の周期を超えて加速させていると実証されつつあり、生命存続の限界を超えつつある異常気象も人為的な原因であり、まだ、この始まったばかりの令和二年に、それらが全く発生しないという保証はないのですから・・・
それに加えて、いま、世界は、宗教的政治的な事情ばかりでなく、経済的、物質的なバランスが失われたカオス状態から、一触即発の戦争勃発の危険にさらされているのではないでしょうか。習さん、トランプさん、キムさん、それに加えて安倍さん・・・弱体化した民主主義と、原理と実情との矛盾に苦悶する共産主義体制・・・その解決のために、盲目的に押し進める軍拡競争・・・自国のウインばかり主張してギブの全くない、経済構想・・・
今年、わずか17歳になるかならないかの少女グレタさんに面罵されても、一言も反論しえない地球のSDGs・・・

バルタンの僻目には、世界はいま、方向舵を失って漂流する巨船が、潮の流れに翻弄されるまま盲目的に驀進しているように見えてなりません。
令和二年、今日からまだ365日もあります。西暦2020年の地球が、ケムール星化するチャンスは、まだまだあるのです。
今年の大晦日、「この嘘つきめ!」と、ぜひ、お叱りを受けることを切望してやみません。
あけまして、オメデトウございます!


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