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バルタンの呟き №64 [雑木林の四季]

「ボーっと生きてなんかいられないよっ!」

               映画監督  飯島敏宏

「ワンチーム」
令和元年の流行語大賞は、「ワンチーム」に決まったようです。この秋日本で行われたラグビーWC大会で大健闘した日本代表チームが、各国、各人種の混成チームだったにも関わらず、そのハンディキャップを乗り越えて、無類の繋がりを見せた合言葉が、「ワンチーム」だったのです。
令和元年、東日本大震災その他の地震災害、台風による豪雨災害、原発事故等からの復興が一向に進まない上に、催行予定が二転三転するTOKYOオリンピックパラリンピックを目前に控えている日本の各方各分野で求められている、人と人とのつながり、「絆」と一致したのでしょうか、たちまち大流行のフレーズとなったのです。日本ラグビーの「ワンチーム」凱旋パレードの沿道には、なんと、50000ものにわかファンが押し寄せました。ラグビー日本代表は、少子高齢化がさらに顕在化して、多国、多民族との交流を深めざるを得ない実情を象徴する「ワンチーム」だったのです。

「令」
一方、これも恒例となった京都清水寺の貫主が墨書することしの漢字として選ばれた字が、令。勿論令和の令です。令和新天皇即位の令和元年ですから、順当と言えば順当です。
令和と改まった今年は、気象災害に苦しんだ年でもあったのですが、それと裏腹に、皇室が極端にクローズアップされた年でした。令和天皇即位の盛り上げようは、テレビ抬頭の嚆矢となったご成婚パレード中継放送だけが印象に残った平成天皇即位の時と比べて、安倍内閣総理府が総力をあげて、さらに膨大な国費を注ぎこんで、華やかに盛り上げた感がありました。即位披露パレードこそ、直前の台風が各地に齎した予想外の降雨の被害に憚って日程を遅らせたものの、数回、数日に及ぶ即位の典礼に合わせたテレビ、NET通信、ラジオ、新聞,各週刊月刊紙誌、電波マスコミ報道挙げてのお祭騒ぎでは、あたかも国民の皆さんが、異様なワンチームになったように見受けられました。

でも、バルタン星人の僻眼でみると、昨今のこの大群衆のワンチームぶりが、何故か安心できない、不気味な現象に見えるのです。
令和天皇皇后即位礼の祝賀に皇居前広場に集まった大群衆が、典礼に向かうお二方に「天皇陛下万歳!」と、従来の形式の三唱どころか、関係者が指揮するままに唱和して、数十回も万歳々々と続ける様子を延々と映すテレビ映像、これらの光景が、なにか、いつか見た夢、既視感、デジャビュに映ったのです。
新聞、ラジオ、ポスター、当時のマスコミによる開戦以来打ちつづく戦勝報道に惑わされて、実は逼迫しつつあった戦況も知らされず、日の丸の小旗や提灯を振り上げて、一億全国民が一心となって、万歳々々と昼夜歓喜の行進に沸き立っていた「紀元2600年」祝賀大会です。
明治維新後、新政府からようやく与えられた民権による普通選挙で確立した二院議会制政治が、大正末の関東大震災、昭和初頭の世界大恐慌の不景気、広汎な寒冷地飢饉と貧困から未熟のまま崩壊状態にある間に、富国強兵大東亜共栄圏確立を唱えて台頭した、軍人を首相とする軍国主義政権が、天皇を極度に神格化して軍国日本の前面に押し立てて中国に浸出し、さらに大政翼賛の声の下に、一億国民を一心に束ねて、中国を支援し、日本を資源封鎖しようとする米英蘭を相手の無謀な「聖戦」に駆り立てる空虚な祭典でした。
新聞、ラジオも、すべて政権の手で統制されて、戦争の実態も、世界の趨勢も、国民が、何も知らされないまま、歌い踊らされたあ皇紀2600年祭典の繰り返しに見えて仕方がないのです。
「♪紀元は、二千六百年、ああ、一億の胸はなるゥ」
幼かった僕たちも、まったく無心に、声を嗄らして、祝賀行列に加わった光景が重なってしまうのです。「ワンチーム」「天皇陛下万歳!」「令」どうもいけません。わがバルタンの眼には、どうにも、胡散臭く感じられてならないのです。

「トランプ」も、選抜投票では、結構な得点だったようです。
ゲーム札のトランプではなく、アメリカ大統領のトランプさんです。
日本の、テレビ、新聞その他に、これほど多く登場したアメリカ大統領は、オバマさんを凌いで、トランプ氏ではないでしょうか。でも、これも、大賞を差し上げるには、抵抗があります。彼の品格だけでなく、オンリー・フォー・アメリカの政策が大問題です。
来年の選挙を控えて、ますます露骨な政策を打ち出すかも知れませんし、さすが彼と親密なシンゾーにも、どう間違っても、それだけは、断乎お断りしてほしいのですが、彼の脳裡には、アメリカの為とあれば、北朝鮮との間で、日本を防波堤にしてミサイルの打ち合いをする危険性も孕んでいるかも知れないなどと、そら恐ろしい事も連想してしまうので、これもいけません。さわらぬ神に祟りなし、桑原々々、失格です。

「桜を観る会」当然、バルタン的には高得点。
もしかすると、これぞ今年一番の流行語天晴れバルタン、と膝を叩く方がいらっしゃるかもしれませんが、これは、攻守ともにまったく歯切れが悪く、官房長官が「見たくもない!」と漏らすほどですから、「三日遅れのさくらかな」か「さくら散る」と混ぜ返されて、尻つぼみに終わります。それに、問題なしという長官の同じ口から、なぜか、来年は中止、とのご託宣が下ったのですから、ここまでです。 流行語どころか、死語になるかもしれませんし・・・再来年の「狂い咲き」に期待されたら如何かと・・・

「最新鋭の武器を開発しておきながら、どうして平和について話すことができるだろうか」来日したローマ教皇フランシスコさんが、世界に向けて発信した厳しい言葉です。
「現在と将来の世代が、ここで起きたことを忘れてはなりません」
来日するや、ナガサキ、ヒロシマを尋ねて、戦争の愚かさを説き、地球の将来に不治の禍根を残す原子力発電にも厳しい言葉を遺しました。これは、流行語で終わるのではなく、核の破壊という禁を犯した人類への警告として、未来永劫に遺すべき言葉かもしれません。

そして、世界中の国々の指導者に対して、スウェーデンのグレタ・トゥンベリさん(16)が発した、おとなたちの地球環境破壊、過剰経済活動に対する決定的な行動力不足告発の言葉。
そして、COP25国連会議で、環境問題で矛盾する日本代表として孤立無援の小泉進治郎環境大臣に与えられた化石賞等々・・・いま、暮れようとしている令和元年、今年の言葉として列挙すべきものを考えているうちに、キイを叩く指が、決して老齢の所為ではなく、痺れてきてしまいました。

「リチウムイオン電池が、SDGsの達成に貢献するに違いありません」
令和元年に、ノーベル化学賞に輝いた吉野彰さんのさわやかな言葉に、せめてもの希望を託して、たとえ蟷螂の斧と嘲笑われても、もうすぐそこにある新しい歳に、さらなる呟きを重ねたいと思うのです。
「ボーっと生きてなんかいられないよっ!」


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