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猿若句会秀句選 №102 [ことだま五七五]

猿若句会特選句集 102(2019年10月19日)

              猿若句会会亭  中村 信

 箸使ふ国こそよけれ秋刀魚焼く  丸本 武
 鐘楼にしばし夕陽や萩の寺  原 健一
 秋時雨傘持つ人と持たぬ人  高橋 均
 風炉の陽に袖も乾かず秋時雨  中村呆信
 焼きたての秋刀魚醤油を跳ね飛ばす  佐竹茂市郎
 大皿に小さき秋刀魚や酒二合  大橋一火

◆猿若句会十月例会の特選句集です。例によって一句だけの短評から始めます。
[短評] [箸使ふ国こそよけれ秋刀魚焼く 武]。いま猿若句会のなかで一番安心して読めるのはこの作者です。それは文法が一番確りしているからです。文意もわかり易く特に問題はないと思います。そこで、今月は短評の枠を少々超えて俳句の表現方法について少し書いてみます。
  現在の俳句を大きく分けると二つの潮流があります。伝統俳句と現代俳句です。伝統俳句派は雑誌『ホトトギス』に依拠するかその流れに属する人たちです。文語文法に基づき文語文で作句しています。ですから、その基礎となる歳時記も旧暦を基礎としていますので、実際の季節とはほぼ一月ずれています。一方、昭和も十年頃新興俳句運動がおこり、口語文(現代仮名づかい)で作句しようということで文法も口語文法です。なかには無季派も現れ、歳時記への考え方も大きく変わりました。もともと俳句は文語ですし「や」や「かな」「けり」などの切字を文語と考えると現代文の表現に無理がでてきます。これを理解したうえで、猿若句会はどちらも容認にしています。これは句柄よって使い分けると云うことではなく、個人が信じる表現方法で創ることを容認にしているということです。
  さて上掲の俳句は伝統俳句でしょうか、現代俳句でしょうか? もちろん伝統俳句です。「箸使ふ」が文語文法ですし「……こそよけれ」も文語文です。句意も伝統俳句的と言えると思います。今回は「秋刀魚」が兼題、「秋時雨」が席題。特選句も一句を除いて題句になりました。秋も漸く深まり秋らしい句で締め、句会上では秋を堪能しました、しかし十一月にもなり、暦の上では冬も間近だというのにこの天気には困ったものです。
  実は私は文法を大の苦手としています。詩を書いていた学生の頃、「自分らが書いているものが、やがては新しい文法になるのだ」などと不遜な言を嘯き、わざと文法を無視した詩作や言辞を使ったりしていた報いです。(閑話休題)
◆句会での特選以外の秀作・佳作については、新ブログ[パソコミ誌『あ』の電脳版]http://a-houshin.hatenablog.com/に掲載しています。ただし、まだテスト版に近いもので、おいおい充実させてゆくつもりです。ご覧いただき・ご支援ください。


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