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検証 公団居住60年 №42 [雑木林の四季]

Ⅷ 公団住宅の市場家賃化と「建て替え」着手
      国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

2.家賃値上げの国会審議と「国会要望」
 全国自治協は1988年、例年の秋とは別に春にも緊急に全国統一行動をよびかけた。第3次家賃値上げ案の撤回とともに、居住者も納得できる家賃改定ルールづくりを要求し、公団が建設大臣に値上げの承認申請をするにおよんでは国会での集中審議を求めた。短期間に約57万人の署名が集約された。こうした運動の結果、4月15日に衆院、同21日に参院の各建設委員会で公団家賃問題にかんする審議がひらかれ、両委員会とも全国自治協の代表が参考人として招かれ、意見を述べた。両参考人は、①基本懇家賃部会での審議のあり方、②家賃値上げにたいする自治協の基本的な考え方、③家賃改定の方法、④公団住宅居住者の生活実態などについて発言した。
 両院建設委員会は審議のあと委員長要望(衆院7項目、参院8項目)をまとめ、全会一致で採択した。「国会要望」によって、値上げ上限額それぞれ500円の引き下げ、敷金追加徴収の中止などの成果のほか、家賃改定ルール、建て替え、住宅修繕、高齢者世帯への措置等について公団とひきつづき交渉する足がかりを得た。
 ここで4月15日の衆院建設委員会にわたしが参考人として出席したので、会議のもようを一部紹介しておこう。
 会議は午前10時にはじまり、午前中の参考人は石原舜介(東京理科大学教授)、畑中達敏(住宅新報社顧問)、多和田栄治(全国自治協代表幹事)、午後は丸山良仁公団総裁ほか公団理事たちのそれぞれ3名であった。午前の会議では、参考人がそれぞれ約15分意見を述べたあと、各党委員が参考人を指名して質問するかたちで進められ、午後は委員が順に質疑をおこない、6時30分に終わった。
 公団基本懇家賃部会長をつとめる石原は、家賃改定ルールが適切な手続きをへてつくられ、公営限度額方式に欠けている地価反映を補正することで妥当な算定方法といえると述べた。畑中も同部会のメンバー、民間家賃との不均衡を強調し、今回の改定方式では不均衡はいつまでも是正されないから、将来は不動産鑑定評価手法が望ましいとの見解を示した。
 多和田は、「はじめに家賃値上げありき」と第3次値上げ案に「改定ルール」をセットした押しつけであり、国会要望の趣旨に反すること、地価高騰便乗型の高家賃化ルールであること、居住者の負担能力、住宅設備の実態を無視していることの3点を指摘した。
 委員の質問は、おもに基本懇家賃部会の運営、公営限度額方式の問題にむけられ、多和田には「家賃の不均衡」についての意見を求めた。
 石原は、4人の専門家が検討したルール案をもとに家賃部会を4回ひらき、12対1の賛否できめた。十分審議された、強行ではないという。多和田は、専門部会に当事者の居住者代表を加えず、しかも何が討議され、どういう資料が出されたのかいっさい非公開、部会で値上げ案はほとんど討議されていない。公団家賃の問題点について十分に検討し、資料も公開して世論にも問い、そのうえで家賃改定ルールを固め、値上げを提案するのは筋ではないかと反論した。委員から「自治協委員1名は数十万居住者の代表」との発言があった。
 石原は、公団家賃は地価を正当に反映していないといい、居住者の負担能力について問われると「公団は福祉政策的な対応をする性質のものではない」と答える。畑中は空き家応募倍率の高さも立地補正の根拠にあげる。
 多和田は、質問に答えるなかで両氏に反論をくわえつつ、公団家賃の住宅相互間、民間家賃との格差を公平性とか不均衡の問題としてとらえる前に、良質で低廉な公共住宅の絶対的な不足、高家賃を野放しにして不均衡をつくりだしている住宅政策をこそ審議するのが国会の役割ではないか、との観点から意見をのべた。
 後日、家賃改定ルールと第3次値上げ案の国会審議にそなえ公団が作成した「公団家賃値上げに関する国会対策・住民対策問答集」を入手した。163項目にわたり200ページをこえる。想定問答集をなぞった発言ばかりの「学識経験者」「有識者」といわれる人たち。その正体、役割を知らされた。


『検証 公団居住60年』東信堂

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