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バルタンの呟き №62 [雑木林の四季]

        「2020TOKYO」によせて

              映画監督  飯島敏宏

 2020TOKYOオリンピック・パラリンピックまで、あと一年を切りました。最近すっかり鳴りを潜めた日本国内の政治記事に代わって、矢鱈にオリンピックがらみのスポーツネタが、新聞ばかりでなく、NHKをはじめ、テレビ各局のニュースのトップを占めているような気がします。もっとも、週刊誌、月刊誌は、2020TOKYオリパラどころか、その先に待ち受ける超高齢化社会の、死の世界から、さらに死後の世界までがトップを飾っている始末ですが・・・

 僕にとって西暦2020年といえば、バルタン星人の原点と申しますか、宇宙人ものの淵源となった、ケムール人が、地球にやって来る年に他なりません。50年以上前に円谷プロで撮った空想特撮ドラマ「ウルトラQ・2020年の挑戦」です。その頃の僕たちにとっては、遠い遠い未来だった、西暦2020年の地球に他ならないケムール星から、1950年ごろの地球へ、過度に発達した文明と引き換えに、極限まで悪化した環境に耐えるために、醜怪な外皮に包まれた劣悪な体躯と化してしまったケムール人が、健全な肉体を具える地球人を拉致するためにやってくる、という物語でした。
 その設定を発展させて、たび重なる核爆発、核戦争で居住不能にまで荒廃したバルタン星を離れ、宇宙流浪の果てに、いまから50年ほど前の地球に到達して、地球人との共生を求める「ウルトラマンシリーズ・侵略者を撃て」に登場する宇宙人が、バルタン星人なのです。勿論、バルタン星は、未来の地球を示唆する反面教師という設定でした。

 その、2020年が、いよいよカウントダウンの段階にまで迫ってきてしまったのです。正直のところ、「ウルトラQ」を撮っている頃には、西暦2020年といえば、遠い遠い未来でした。まさか、自分自身が、その地球に存在してその日を迎えることになるとは、考えもしませんでした。
 そして、現実はどうでしょう、2020TOKYOオリンピック・パラリンピックのニュース画面、新聞紙面に登場する、日本の陸上水上の候補選手たちの、「ウルトラQ」撮影当時には思いもよらなかった見事な体躯と美しさは、目を見張るどころか、驚嘆すべきものがあるではありませんか。これでは、僕は、大嘘つきだった、といわれても仕方がありません。一時は、来年は、ひっそりと鳴りを潜めて、何処ぞに蟄居してやり過ごそうか、という気もちになりかかってしまいました。

 しかし、しかしです。幸いにも、といっては語弊がありますが、ここへきて、あながちそうではないかもしれない、という気配が、急激にかいま見えて来たのです。大外れどころか、予見を遙かに超えた、地球環境の激変の兆候が、顕われはじめたのです。

 オリンピック競技の開催時期が、日本の、最悪な時季である、という愚かな事実は、オリンピック競技大会そのものが、IOCによる商業主義的な運営によって変貌してしまったことはさておいて、開催に自ら名乗りを上げて獲得してしまった日本の自己責任であることは動かし難い事実です。しかも、これは必ずしも、民意ではなく、徒に経済成長を狙った政策であったのも否めません。復興五輪をうたいながら、膨大な競技施設の建設に事業従事者人口を奪われて、東北の復興は停滞し、さらに、引き続く災害の拡大で、肝心の復興事業は停滞するばかりですが、楽天的な国民性といいますか、いまは、ともかくオリンピック・パラリンピック、とチケットも売り出されて、カウントダウン、気運も盛り上がりつつあるように報じられています。

 冷却のために敷き詰められるということで開発された走路の特殊舗装の効果も確たるものでなく、セ氏40℃を超える高温と、多湿の環境で走り続ける42,195キロメートルマラソンの苛酷さもさることながら、体温を超える水温で、しかも、耐えがたい臭気と、防ぎ得ない細菌に怯えながら泳ぐトライアスロン水泳のテスト泳者をして、その不潔不快に音を上げさせざるを得なかったというニュースもあります。
 異常な高温多湿がもたらす、未経験の熱帯性疫病のパンデミックも十分な対応処置が待たれます。
 さらに、周期的に見て、喫緊の災害対策を求められている、南海トラフの大地震の逼迫もあります。
 さらに、なによりも重大な危惧は、いまや、辺境までも巻き込んだグローバルな過剰経済成長がひき起こすにちがいない戦争です。その果てにあるものは、AIが操縦する兵器による非人道的戦争と、核戦争です。卑近なところでは、北朝鮮をめぐる軍事列強国の対応があります。なかでもとりわけ剣呑なのが、選挙対策に狂奔するトランプ大統領が「北朝鮮のミサイルは、アメリカ本土に届かない、短距離ミサイルであれば、問題ない」と、ツイートするアメリカです。北朝鮮が発射実験を繰り返すミサイルが、グアムには届かなくとも、沖縄、そして、TOKYOには、充分届くのです。カッコ着き挙国一致、この道しかありません」と、「強固な軍事同盟を堅持」しようと、異論を許さずに邁進する日本の2020年です。
 あの日「皇国に生を享けたる諸君の進むべきただひとつの途である」といって学生たちを戦場に送り込んだ東条英機総理大臣と同じフレーズで、「この道しかありません」と唱える道の先に、全国民を巻き込む恐ろしい戦争が待っているのだけは、御免蒙りたいものです。
 レイワよ、平和であれ!2020・8・15平和の日に、靖国にひと柱の霊も送り込むことが無いように、と祈ります。そのために、大嘘つきめ!と叱られるのは大歓迎です。

 8月15日。終戦記念日。


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