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往きは良い良い、帰りは……物語 №73 [文芸美術の森]

往きは良い良い、帰りは……物語
その73  TCCクラブハウスにて
    『昼花火(ひるはなび)』『鱧(はも)』『朝顔』『梅雨寒(つゆざむ)』

              コピーライター  多比羅 孝(俳句・こふみ会同人)

◆◆令和元年(2019年)6月24日◆◆
当番幹事(西村可不可氏&沼田軒外氏)からメンバー各位へ案内状が配信されました。

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期日●七月十四日(日)午後一時より
会場●表参道・東京コピーライターズクラブ
会費=1,500円
兼題1 【昼花火】
 「きょうは運動会やるぞ……」なんていうときに鳴らす、アレです。最近は昼間の観賞
   用に、煙に色をつけたものもあるようです。
兼題2 【鱧(はも)】
 鱧は京料理には欠かせない夏の食材です。関東ではあまり馴染みがないのは、小骨が
  多いためとか。
●景品は3点(合計1,000円くらいご用意ください。)
●出欠席の連絡は七月十日ごろまでに、このメールに返信で沼田までお願いします。
     七月幹事  西村可不可
                        沼田軒外
幹事連絡先=090-3224-1075 (沼田携帯)

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そうですか。あの花火、ドカンドカンと鳴るだけかと思ったら、煙に色がついているんですってえ。まさに昼間用ですね。見たくなりました。
そして、「昼」を、いつもの資料、白川静の『常用字解』で調べてみることにしました。
そしたら、びっくり。『昼』の字は≪「ひる」「ひるま」「日中」の意味で用いられるが、金文や古い文献に、その意味で用いた例が無く、字の成り立ちや、意味を明らかにすることのできない文字である。≫とのこと。
そうですか。ほほお~。身近にありながら、「昼」ってそんな厄介な文字だったのですか。驚きました。
そこで、私がFAXで送った出席の返信は下載のとおりです。いつもと違って、軒外氏の返信レターは無し。今回、氏は幹事さんですから。でも、在ります。「七月の案内状」が見事です。       

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◆◆さて、当日(7月14日)のトピックスとしては……◆◆
その1. 森田一遅氏の紹介による新人さんが入会されました。コピーライターの大取喜想次氏です。ウエルカム!
自己紹介の際、「私は令和という年号を使いたくないと思っている人たちの一人です。」と述べられたのが印象的でした。
「俳号はまだ、無し」と聞いた鬼禿氏が、「それなら、下戸(げこ)だ。この人、酒が呑めないから。」と、命名してしまいました。鬼禿氏とも知り合いだったのですね。    

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今日から会員。コピーライターの大取喜想次氏。

その2. 今回も新鮮感覚の玲滴さんに「句会の感想」を書いてもらいました。彼女にとって「本日のトピックス」は何だったでしょう。

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こふみ会の楽しみの一つはお弁当です。というより、それを挟んで交わされる食談義です。今回は軒外さんおすすめの≪湘南・鎌倉・大船軒≫の鰺の押し寿しでした。「僕はこれが数ある駅弁の中でベストだと思っているんだけど…」。
前回もお弁当で盛りあがりましたね。皆さん、それぞれに想い出の料理や感動の食材について語り始めたら際限なしといった感じ。お弁当にも一家言あるのが面白いです。

私はといえば、いつだったか、知り合いになったおばさんに彼女自慢の鰺寿司をごちそうになったことがありました。多分この季節だったと思います。押し寿しとは違った、また別のおいしさでした。生だから、もちろん駅弁にはなりません。

鱧は西日本、特に私の郷里の愛媛県では、夏、よく食べられる食材です。東の人は食べたことがないかもと思って、照り焼きなんぞで投句してみました。予想通り選にもれました。湯引き以外にも、私は鱧の吸い物が好きでした。吸い口には、今だったら徳島のすだちがいいかと…。鱧は京都の板前の、粋な料理と思われているかもしれませんが、郷里(いなか)なら、おばちゃんだって出来るのが鱧の骨切りです。こっちで作って投句すればよかったかな。

『昼花火 こっちへおいでと 御座候』の「御座候」は、姫路のお菓子屋さんの、直径10cmはあるような大きな今川焼です。お酒の飲めない下戸さん(今度入った大取喜想次さん)の句だったので、さもありなんと思いました。  (玲滴 記)
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大吟醸・澤乃井(孝多からの差し入れ)
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鰺の押寿し・湘南鎌倉・大船軒

◆◆質問にお答えします。◆◆
今回は下記のような質疑応答の欄≪Q&A≫も載せることにしました。
こふみ会発足以来のメンバーである二人、岩永矢太氏と孝多が相談してまとめたものです。

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.こふみ会の短冊は、なぜウラ(白面)に書くのですか。

.自作ではない、贈る、進呈する句を書くのですから、本当は敬意を表してオモテ(金面)に書くべきなのですが、自分の字が下手だからと謙遜して、ウラに書く。こうすれば「書いた人は句の作者ではないですよ」ということが一目瞭然にもなる、という利点も生じます。それ故にウラに書く習慣がついてしまったと申せましょう。
絶対にウラに書くべし、というわけではありません。オモテでもウラでもいいことにしましょう。

.こふみ会の短冊には、絵が描いてありますが、俳画は短冊にではなく、色紙に描くものではないでしょうか?
.色紙とは限らないんですよ。俳画を描く用紙は様々で、短冊、扇面(せんめん)、幅(ふく)と呼ばれる、短冊よりも横が長いもの、など、いろいろあります。先人たちはその場に応じて、あるいは好みによって、それらを使い分けて来たのですね。
しかし、自分の句と共に絵を描いて、自分の句に味を加え、充足をはかったという点では、どれも同じです。
こふみ会の場合は、選者が書く短冊ですから、句の作者自身が描くわけにはいきません。選者が思うままに、勝手に描くため、選んだ句に対して失礼に当たることがあるかも知れません。
そして、それを咎める人も無きにしもあらず、かも知れません。
でも、もともと、こふみ会では、絵を描く描かない、は自由なのです。誤解を招いているようでしたら、ご免なさい。
なお、このブログ上では「俳画」と称したことはなく、『絵付き短冊』と表現しています。

.こふみ会では、その句を天に選んだ人が、その句を短冊に書き、その句を作った人に謹呈するのがナラワシです。短冊に、天位の句を書いて「〇〇選」と、選者名をしたためたうえに、更にに、〇〇さんのハンコも押すということがよく行われています。でも、このハンコ、落款(らっかん)は自分の作品に押すものですよね。
サインだけで、ハンコは押さない場合も多々ありますが、そのハンコも、ひとの作品に押している……。おかしくないですか?
.そのとおりです。他人の作品に自分のハンコを押す。おかしなこと、と言ったら、おかしなことです。
でも、それが容認されているのは、その意気込みを評価する周囲の眼があるからでしょう。気分、気分! ひとの作品に自分のハンコを押すなんて、マナー違反、と極めつけても、句会が楽しくなることは無いでしょう。
総じて、俳句の、形式や作法や規則といった縛(しば)りを、ゆったりと解いて楽しむ。それが、こふみ会の流儀です。カタクルシイのは嫌(いや)ですよね。    

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(色紙) 野茨に からまるはぎの さかり哉    龍之介
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(幅) 白菊と 黄菊と咲いて 日出哉    漱石

掲載の2作品ともに、『筆墨・俳句歳時記(秋)』村上謹 編著(二玄社)からの引用です。       

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「いやあ~、むずかしいなあ」「同類の句が出揃ってしまうんじゃないか?」「鱧っていう字は鱧に似てないね。」「≪梅雨寒く≫でもいいんだよな」……詠題が張り出されると、いろいろな声が、飛び出してきます。
でも、いっとき、シ~ンとなって、次ぎに、ごそごそと動いて、投句して、やれやれ、と肩の力を抜いたりして、最後は係が正の字の得点を計算して「成績発表」です。声高らかに……
★さあて、本日のト―タルの天は~48点の弥生さ~ん
代表句は「梅雨寒や 文字も薄れて 鯨尺」 パチパチパチッ。

★トータルの地は~47点の虚視さ~ん
代表句は「朝顔や 伸び行く先に 夜のあふれる」  パチパチパチッ。

★トータルの人は~42点の孝多さ~ん
代表句は「梅雨寒や ビニールの傘 パンと開く」  パチパチパチッ。

★トータルの次点は~30点の茘子さ~ん。
代表句は「朝顔は 今日の命を 今日で終える」 パチパチパチッ。

皆さん、おめでとうございました。パチパチパチッ。     

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左から人の孝多、天の弥生さん、地の虚視さん、撮影は軒外氏

さあて、さてさて、今回のブログの≪Q&A≫のところにも書きましたが、この「絵入短冊」(俳画にあらず)は、当こふみ会の、今や、名物ではないでしょうか。今回も見応(みごた)えアリですね。     

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当然のことながら、本日の全句も、下載のとおり、賑やか。とくと、ご覧ください。ご質問ほか、お気付きの点がありましたら、多比羅孝多までどうぞ。TEL、048-882-7577  FAX, 048-887-0049  では、また、来月。皆さん、どうぞ、お元気に。
                              第73話 完     孝多

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第595回 こふみ会全句
令和元年(2019年)7月14日     於 TCCクラブハウス

◆兼題=昼花火       順不同
昼花火 静かに見上げる 老女あり          孝多
昼花火 見上げるゴリラ 大欠伸(あくび) 舞蹴
昼花火 病床で聞く 命の音(ね)          茘子
立ち呑みに 飛び込む合図や 昼花火        尚哉
この音に 血騒ぐ人ありや 昼花火          玲滴
アーケード 万国旗垂れ 昼花火             虚視
ツエルニー30番 昼花火で 中断す        軒外
昼花火 二つ鳴って 子らの声                珍椿
昼花火 姉の瞳の まんなかに                矢太
昼花火 こっちへおいでと 御座候          下戸(大取喜想次)
民主主義 危うしどんと 昼花火             可不可
デジャヴュとか 遠く何処かで 昼花火   弥生
新盆と 知らせておくれ 昼花火             華松
今がすべて 君と並んで 昼花火             一遅
パ・パンパン 届け昼花火 保健室          鬼禿
昼花火 手持ち無沙汰で 日暮待つ          紅螺

◆兼題=鱧              順不同
鱧の骨 古都千年の 舌ざわり       鬼禿
鴨川の 夕闇鱧を 刻む音                    可不可
鱧出でて 酒器も涙を 流しけり              尚哉
性悪(しょうわる)の 骨を断(た)ちたし ぼたん鱧 華松
シャツ一枚 鱧裂く人の 無表情              一遅
鱧の味 わからぬまんま 60才               下戸(大取喜想次)
受け流す 心の憂さや 鱧の骨      舞蹴
神妙に 鱧食う異国の 美少年                 紅螺
ゆうげには 父の好みし 鱧の照り焼き  玲滴
夏空を 瞳(ひとみ)に映し 鱧売らる  茘子
鱧選(え)る亡母(はは) 錦市場の 白日夢  弥生
板前の 手仕事 鱧料理                         珍椿
ボケて来て ますます愉快 鱧囲(かこ)む   孝多
鱧を切る もうあの闇に 帰れない           矢太
鱧湯引き 盛る板皿は 魯山人                 軒外
鱧裂かれ 湯に放たるや 反り返り    虚視

◆席題=朝顔           順不同
朝顔の かたへに埋めし 金魚一匹           弥生
朝顔に 今日は笑って 生きてゆく      舞蹴
朝顔が しおれる頃に 昼寝する             下戸(大取喜想次)
朝顔や 今日も明日も 明後日(あさって)も  可不可
朝顔咲く 夢の終わりの その後の    鬼禿
ひとつ咲き またひとつ咲く 朝顔の         軒外
朝顔は 今日の命を 今日で終える            茘子
路地裏に 誰がまいたか 朝顔の咲く   玲滴
朝顔咲く 百歳の住む 家の庭                 孝多
朝顔の つる這うように 腕まわし            華松
朝顔や 伸び行く先に 夜のあふれる         虚視
朝顔や へのへのもへじと 青空へ            矢太
朝顔や 自立の前こそ 蔓が要る               尚哉
放課後の  花壇 朝顔の列                         珍椿
朝顔を 描く筆先の 浅葱色                   紅螺
ジョギングの 道おはよう! 朝顔くん       一遅

◆席題=梅雨寒           順不同
梅雨寒や 折れ線グラフの 頭痛かな          茘子
グーグルに 23℃着る 梅雨寒の朝           下戸(大取喜想次)
梅雨寒に 半袖で出かける 伊達男             一遅
梅雨寒の みまい飛び交う メールかな    玲滴
梅雨寒や いつまで泣いて いるんだい        矢太
梅雨寒や ビニールの傘 パンと開く     孝多
梅雨寒や 疎遠の兄を 思う朝                   紅螺
梅雨寒の せいにしますか 僕の横             華松
梅雨寒や 人影のなき モネの部屋             可不可
梅雨寒に 伺いますと メールする             軒外
故郷(ふるさと)を 捨てし月日や 梅雨寒し   舞蹴
梅雨寒や 文字も薄れし 鯨尺                   弥生
梅雨寒し 息子は部屋から 出てこない        鬼禿
梅雨寒や 髪一房の 重さかな                   虚視
梅雨寒し 私は令和を 使わない                尚哉
ブルブルッと 梅雨寒の朝                         珍椿

                                以上16名 計64句

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水野タケシ

孝多先生、今月も大変面白く拝読しました!!

そして、総合人賞、おめでとうございます!!

梅雨寒が懐かしくなる暑い日々……どうぞご自愛くださいませ!!

v(*'-^*)ゞ・'゚☆ブイ
by 水野タケシ (2019-08-01 09:23) 

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