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往きは良い良い、帰りは……物語 №72 [文芸美術の森]

往きは良い良い、帰りは……物語(こふみ通信)
その72   TCCクラブハウスにて
 『ハンカチ』『心太(ところてん)』『枇杷(びわ)』『短夜(みじかよ)』
   
                コピーライター  多比羅 孝(俳句・こふみ会同人)
               
◆◆令和元年(2019年)5月30日◆◆
当番幹事(秋元虚視氏&竹内美留さん)から案内状がメンバー各位へ配信されました。

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水無月
こふみ会御案内 
六月九日(日)十三時より
兼題=ハンカチ
   心太(ところてん)
会費=千五百円
会場=いつもの表参道のTCC
出欠=ご連絡は六月五日までにメールで虚視まで
      shigeruru28@gmail.com
景品=三つ。合計で千円くらいなもの。
(今月は久々に『亀戸・升本』のお弁当です。)
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それに応えて、軒外氏の返信は「ところてん」のイラスト。美味しそう! 涼しそう!

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一方、私・孝多は幹事の竹内美留さんと電話で話して、つまり、電話返信だけで「出席」とさせてもらったのでした。結局、返信レターとしては何も送らなかったのですが、調べてみて、兼題二つについて、面白いことが分かって居りました。それを下記すれば……

◆◆「ハンカチ」については……◆◆
一般的な歳時記では「ハンカチ」は副題(サブ)です。メインの見出しは「汗拭(あせぬぐい)」です。そのあとに小さく「ハンカチーフ」「ハンカチ」「ハンケチ」「汗ふき」「汗手拭(あせてぬぐい)」などの語が載っているという扱いです。
例えば講談社の『日本大歳時記』で「汗拭」を引いてみると、その解説の冒頭に、なんと、≪ハンカチーフ、ハンカチのことである。ハンケチともいう。四時の身だしなみに持つものだが、夏は汗を拭うことが多く、汗ぬぐい、汗ふきともいう。≫と書いてあるので驚きます。古いなあ。

角川の『合本 俳句歳時記』では、また、下記のとおりです。
≪●メイン見出し=汗拭ひ。●サブ見出し=ハンカチーフ。ハンカチ。汗ふき。汗手拭。●解説=汗を拭うための布で、昔は手ぬぐいを用いた。現在では主としてハンカチーフを用いる。≫
ずい分、時代がかった説明です。イマでは「手ぬぐい」は「鉢巻」にするくらいのものでしょう。

◆◆「心太(ところてん)」については……◆◆
これまた愉快です。語源辞典などいくつかの本に当ってみましたが、解説として、一番分かりやすく面白かったのは『調理用語辞典(全国調理師養成施設協会編)』です。
少々長いのですが、全文を引いてみましょう。

ところてん【心太】
テングサやオゴノリなどから寒天質を煮溶かし、冷まして固めたもの。天突きで細い糸状にして、しょうゆ、酢、からしなどをかけて食べる。水に対して1~2%の寒天質が溶解しており、98~99%が水である。寒天質の成分は多糖類のガラクタンで、ほとんど消化・吸収されず栄養的価値は望めないが、その触感とテングサによる磯の香りが夏の味覚として古くから親しまれている。ところてんは、古くは「こころぶと」と呼ばれ、心太の字を当てた。これが「こころてい」と呼ばれるようになり、さらに転じてところてんになったといわれる。また、ところてんを戸外で凍結乾燥して偶然できたものが寒天である。

ところてんつき【心太突き】
 =てんつき

★なお、白川静の【常用字解】によれば、国語の「こころ」は「からだの中の、凝(こ)り固まるところ」という意味だそうです。「ところてん」も凝り固まったもの、ですよね。

◆◆さあて、当日(令和元年六月九日)のトピックスは……◆◆
その1=何と言っても第一は『コピーライターほぼ全史』のことでしょう。

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厚さ3センチ強。左右15センチ強。天地22センチ強。重さ750グラム強。定価3,500円プラス税。日本経済新聞出版社発行。東京コピーライターズクラブ「全史プロジェクト」編。タイトルフレーズ≪誰が日本の広告をつくったのか。時代と格闘したコピーライターたち。コピーライターほぼ全史。≫

この本が出版されたのです。読めばファイトが湧くでしょうし、手もとにあれば、コピーライターのことを、ひいては、こふみ会のことを、調べるにも便利に役立つ本です。
ですから、こふみ会がまとめてTCCから購入して、TCCから直接、献本を受けた人を除いて、こふみ会のメンバー全員に1冊ずつ無料で進呈しようということになりました。句会が始まる少し前に、岩永矢太氏と孝多が相談して……。

ではすぐに!と矢太氏が立ち上がりました。氏は「全史プロジェクト」のチーフリーダーですから、本がクラブハウスのどこに積んであるか、現在の在庫は何冊か、熟知しています。日曜日で事務局の人がいなくても大丈夫。

早速、句会の席に11冊が持ち込まれ、1冊ずつ手渡されました。説明を受けて皆さん、嬉しそう! 本当にタダでいいんですか? いいんですよ。ご心配なく!
代金については、会員割引で1冊¥3,024.その11冊分をTCCの銀行口座にタヒラタカシの名前で出来るだけ早く振り込むこと。(手数料も当方モチ。)その財源は、こふみ会としての銀行預金。毎月ほんの僅かずつですが、たまっていますから。

ふむふむ、ふむふむ。手にした「全史」にうなずいている人。そうか、そうか、≪すげえや≫ と言いつつ、表紙のウラなどにサインを求めて歩きまわっている人。おっと、よごしちゃいけない、目の前の飲み物、食べ物を片付けてからと、丁寧な人。皆さん、それぞれ、もらっちゃった喜びが顔にも声にも出ています。良かった良かった。

でも、どうなんだろう。今どき、3,000円以上もする本、買う人、少ないんじゃないか、という声もあったようです。矢太氏のご苦労、販促のために、これからも、限りなく続く……ということのなきよう、祈ります。
及ばずながら私・孝多も個人的に、9冊ほど購入致しました。割引料金ですけれど。以降も思い付いたら買って、先方にお届け謹呈するつもりです。

トピックスその2=今回もご馳走たっぷり。
幹事さんの言う、久々の「亀戸・升本」の御弁当。ビールは鬼禿氏よりの差し入れ。

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一品ごとの旨(うま)み。さらに、詰め合わせとして、全体的にまとまった調和の美味(うまみ)。視覚的にも! 流石・升本!


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   差し入れ 可不可氏より 

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  差し入れ 弥生さんより

トピックスその3=名古屋にはお寺が多い?
前回まで仮りの俳号「直哉」だった岡田氏が、以前から縁の深かった名古屋にちなんで、正式に、「尚哉(なおや)」を号とすることになりました。「ナオヤ・ナゴヤ」ですか。お寺が多いから「お尚さん」の「尚」とも聞きましたが、私・孝多の空耳でしたか……。

トピックスその4=幹事さんは喋っていられる
いいよなあ、幹事になったときは、もう、兼題も席題も作ってあるんだから、ラクチン・ムードで、お喋りしていられる。まるで、場を盛りあげるためのサービスであるかのように……。
今回のK氏なんかその典型みたい。ムカシ、就職試験を受けたときの思い出を語るときなんか、まるで、かって書いた自叙伝風の本を読んでるかのように名調子、なめらか。自己陶酔かも知れない。いいよなあ、と思う人もいれば……
同時に幹事をしていても、今回のMさんのように、まわりの皆さんに飲み物の世話をしたり、メモ用紙の追加要望に応えたりしながら、背を丸めるようにして作句しているというケースもあるし……。いやあ、さまざまですなあ。良いとか悪いとかではなく、立場によって人が在る、ということですか。
今回、つくづくと、それを感じつつ見てました。

◆◆そうこうしているうちに、さあて、本日の成績発表で~す。◆◆
軽妙なイラスト付きの兼題・席題が張り出され、「ハンカチ」「心太」「枇杷(びわ)」「短夜(みじかよ)」。作句から正の字による得点リストの作成まで、滞りなく進んで大詰め。係が声を張り上げます。

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★本日のトータルの天は~61点でダントツの矢太さ~ん
代表句=「青空から 枇杷二つ三つ 頂戴す」 パチパチパチッと拍手。

★トータルの地は~34点の可不可さ~ん
代表句=「短夜の 眠るふりして 眠りけり」 パチパチパチッ。

★トータルの人は~33点の一遅さ~ん
代表句=「またいずれ という日があるのか ハンカチ振る」 パチパチパチッ。

★トータルの次点は~29点の舞蹴さ~ん
代表句=「ハンカチに 正方形の ドラマあり」 パチパチパチッ。

皆さん、おめでとうございました。パチパチパチッ。

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賑やかに15枚。銘々が天位に選んだ句を短冊に書いて、絵も付けて、作者へ謹呈。

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選ばれた御三方。左から地の可不可。天の矢太。人の一遅。もらった短冊を持っています。撮影=軒外(敬称略)

いやあ~、おかげさまで今回も愉快な集いでした。

次ぎは7月14日。パリ祭です。当番幹事は可不可氏と軒外氏とのこと。どうぞよろしく。次回を楽しみにして居ります。皆さん、お元気に。   (孝多)
                                                第72話 完

(当日の全句を下記します。お気付きのことがありましたら、ぜひこのブログのコメント欄へご一報のほどを。)

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第594回 こふみ会 本日の全句
令和元年6月9日  於TCCクラブハウス

◆兼題=ハンカチ      順不同
ハンカチに 包み位牌と 旅に出る      可不可
またいずれ という日があるのか ハンカチ振る    一遅
今日の夫(つま)に 敢(あ)えて木綿の ハンカチ  鬼禿
白麻の ハンカチ父の ダンディズム          弥生
使い切らぬ ハンカチ残し 母逝きぬ     美留
ハンカチに 目隠しさせて 下着干す          尚哉(なおや)
木苺の 熟れてハンカチに 染む                軒外
デートには ハンカチ持参と 恩師云う    玲滴
風通(とお)す 麻のハンカチ 川座敷     茘子
ハンカチに 悲しみ吸わせて 折りたたむ   孝多
遠い記憶 テラスの椅子と ハンカチーフ   珍椿
ハンカチに 正方形の ドラマあり      舞蹴
ハンカチに アイロンかけて ひと思う    紅螺
シャツきまる ハンカチーフが きまらない  矢太
翻(ひるが)える 千のハンカチ 夜の海   虚視

◆兼題=心太(ところてん)  順不同
姉妹来て 亡き母しのぶ 心太        玲滴
水はじく 切子の皿に  心太                     舞蹴
心天 喉(のど)に銀河の 流れゆく           茘子
縁側に 宇宙映して 心天                    尚哉(なおや)
染付けの 青を透かして ところてん            紅螺
心太 あなたの返事のよう 旅の宿              一遅
赤き舌出し 犬来たり  心天         虚視
家々に 石花菜(てんぐさ)干すや 心天   弥生
ところてん 噎(む)せる婆々(ばば)をり 甘味処(かんみどこ)美留
ふざけるな 押されればすぐ出る 心太           軒外
忙しき 日のまん中の 心太                         可不可
殴りたい 一人や二人 心太                         矢太
心太 性同一の 裁判員                              鬼禿
心太 男ひとりの うふふかな                      孝多
参道脇の 茶店毛せん 心太                         珍椿

◆席題=枇杷(びわ)    順不同
枇杷の種 播いて一日 終えにけり              尚哉(なおや)
わが胸に 確信生まる 枇杷の種       可不可
近所にも 居る枇杷の家の 笑わぬ男     軒外
小雨降る 枇杷がまあるく 濡れている    孝多
たおやかに 枇杷むく指の 爪の赤       紅螺
枇杷の実の うぶげ正しき 十二才       鬼禿
しばらくは 生きる元気を 枇杷喰らう     舞蹴
箱席の おばちゃんくれたよ 枇杷ふたつ    美留
枇杷茶飲み すきっと朝を 迎えます      珍椿
殺人の 家にも枇杷は たわわなり                  茘子
重重(おもおも)と 枇杷成る家に 主無く   一遅
枇杷の実の 熟す季節よ 便り来る        玲滴
オーボエを 吹く君十五 枇杷匂ふ        弥生
枇杷剥くや 密滴るを 唇(くち)で吸い     虚視
青空から 枇杷二つ三つ 頂戴す         矢太

◆席題=短夜(みじかよ)   順不同
始まりは 終わる始まり 短夜(みじかきよ)  舞蹴
短夜の 微笑(ほほえみ)世は こともなし   軒外
短夜や パソコンにらんで 空白む       玲滴
短夜や まだ移り香の 消えやらず       虚視
短夜や 肋骨小さく 鳴きにけり                       矢太
名もつげず 女(ひと)と別れる 短き夜    茘子
短夜に 涙乾かす 暇もなく          尚哉(なおや)
言はれしこと 幾度思ひ出す  短夜や       美留
短夜の 眠るふりして 眠りけり        可不可
短夜や 乾杯のとき 触れた指         孝多
短夜の 明け初めし頃に 鵺(ぬえ)来たり   一遅
対戦を 始めて気が付く 短夜かな       珍椿
短夜や これから昇る 細い月         鬼禿
切れ切れに アリラン聞こゆ 短かき夜     弥生
短夜や マリアカラスで 明けそむる      紅螺

                                  以上15名 計60句

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コメント 1

水野タケシ

孝多先生

今月も楽しく拝読させていただきました!!

『コピーライターほぼ全史』、すばらしいですね!!

全国の図書館にも置いてもらいたいものです!!\(^ ^)/ バンザーイ
by 水野タケシ (2019-07-01 09:16) 

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