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私の中の一期一会 №193 [雑木林の四季]

                   参院選を前に劇場公開された映画「新聞記者}
   ~安倍政権下で実際にあった異常な現実が下敷きのフィクションだが・・~

        アナウンサー&キャスター  藤田和弘

 東京新聞の望月衣塑子記者と言えば、菅義偉官房長官の天敵として、あまりにも有名である。
 無表情の中に冷酷さを秘める菅官房長官に向かって果敢に切り込んでいく望月記者の勇気ある記者魂に、私はいつも感心し、好感を抱いている一人だ。
 その望月衣塑子記者の著書を原案とした映画「新聞記者」が、この28日から全国で公開されている。
 藤井道人監督の映画「新聞記者」は政治サスペンスとして“衝撃的な映画だ”という評判が一部メディアで囁かれているのをご存知だろうか。
 もとより、映画はフィクションだが、ここ数年の間に安倍政権のもとで起こった実際の事件や不祥事が幾つも下敷きになっており、改めてこの国の異様さ・異常さを突き付けた作品だといわれている。
 私は公開された28日に映画を観たかったのだが、あいにく心臓の定期検査の日とぶつかって行けなかった。
 映画のストーリー解説によれば、東都新聞という新聞社に“ある医療系大学の新設計画に関する極秘文書”なるものがFAXで送られてくるところから物語が始まる。
 取材に動くのは吉岡エリカという女性記者だ。彼女の父は日本人で母は韓国人である.
 生まれたのは日本だが育ったのはアメリカという設定で、韓国女優のシム・ウンギョンが演じている。
 彼女の取材活動中に、政権にからんだ胡散臭い出来事が次々に起こり問題化するのだが、その裏側で暗躍するのが官邸の「内閣情報調査室」だ。
 内閣情報調査室に出向している若きエリート官僚・杉原拓海(松坂桃李)は、粛々と任務をこなす日々を送っている。
 仕事の内容は、“政権を守るための情報操作”であったり、“政権に盾突く者たちを陥れるためのマスコミ工作”であったり・・
 杉原の直属上司である内閣参事官は「国を守る大事な仕事だ」とか「国民のため」などという言葉を操って彼らに仕事をさせるのだ。
 そんな日々の中で杉原の元上司が自殺したことをきっかけに、吉岡エリカが追う“大学新設計画"には国家ぐるみの「黒い計画」があることを知ることになる。
 物語の中心になるのは大学新設計画問題だが、政権に睨まれた元文科省官僚に対するスキャンダル攻撃や、総理べったり記者による性暴力被害と、もみ消し”を訴えての告発、政権とメディアの癒着、圧力、など様々な事件が起こる。
 この国で実際に起こった政権の疑惑や不祥事をベースにしたフィクションだが、観客は実話の映画化という感覚で観ることになるだろう。
 “森友公文書改ざんで近畿財務局職員が自殺した事件”や“加計学園問題で前川喜平・元文科事務次官に仕掛けられた官邸による謀略”、総理と親密な記者の“性暴力被害と、もみ消し”を訴える伊藤詩織さんの告発など安倍政権下で起こった実際の不祥事を観客は容易に連想できるのである。
 この映画には、前川喜平元文科省次官に対する官邸の謀略報道そっくりな出来事が登場するが、そこに前川氏本人が出演しているそうで、これもちょとした話題になっている。
 それは、前川氏、新聞労連委員長で朝日の記者・南彰氏、元ニューヨークタイムズ東京支局長マーティン・ファクラー氏、そして望月衣塑子記者で行った実際の座談会が放送されていて、それを前川氏本人が見ているのというシーンだ。何だかドキュメンタリー風でもある。
 この映画の企画・製作を担当した河村光庸エグゼクティブ・プロデューサーは「これらの事件は本来であれば一つ一つが政権を覆す程の大事件です。元号が令和に変わっても継続していくべき大事件が、一国のリーダーと6人の側近によって、“うそ”と“だまし”で終わりにしてしまったことを国民は忘れてはいけない」と語っている。
 官邸と一体化した内閣情報調査室の暗躍ぶりには、「こんなことまでやっているのか」と改めて驚かされる。
 観客の中には「映画だから」と思う人もいるだろうが、映画が描いている内閣情報調査室の謀略のほとんどは、実際に行われていることの再現でもあるのだ。
 参院選は7月4日公示、21日投開票と決まった。
 大手メディアの政権への忖度が働き、報道の萎縮が進んでいる中で参院選の約3週間前に映画「新聞記者」が全国公開されたことに、私は興味を覚える。
 映画を企画・製作した河村光庸エグゼクティブ・プロデューサーのインタビュー記事が29日の日刊ゲンダイ・デジタルに出ていた。
「たくさんの人に見て貰いたいので参院選を狙った」と公開のタイミングが意図的だったことを明らかにした。
 河村氏が「政治がおかしい。異常だ」と思うようになったのは2年ほど前だった。
 この6年半で民主主義的な政党政治は脇へ押しやられ、官邸の独裁政治化が大きく前進した。
 背く者は、自民党員であっても無視され冷遇されるのが現実である。
 忖度を強いられている官僚には特に映画を見てもらいたい。
 単館上映で小さくやると潰され兼ねないので、全国150館規模での公開とした。
 “政治が異常だ”と強く思うようになったのは2年ほど前。きっかけは伊藤沙織さん事件だった。
 首相と親密な元TBSワシントン支局長・山口敬之氏のレイプ疑惑もヒドイ。
 彼は成田空港に到着直後に逮捕される筈であった。それが執行直前に逮捕状が取り下げられたのだ。
 逮捕状取り下げなんてあり得ない。官邸は取り巻きを守るためには警察まで動かすのかと衝撃を受けた。
 官邸を支える内閣情報調査室は「公安」を使って、様々な情報を吸い上げ政敵つぶしに使う。
 映画で内閣情報調査室を取り上げたのは、安倍政治が最も触れて欲しくない部分ではないかと感じたからだ。
当初はリアルな事件をリアルに描こうと考え、実名を使うことも考えた。でもそうすると作品として広がりがなくなる。映画ならではの“表現の自由”を生かして、普遍性を持たせたかったのでフィクション仕立てにした。
 “官邸支配”と“メディアの萎縮”が作品のテーマである。
 認可事業のテレビは局は官邸に服従している。結果的にメディアが、安倍官邸を守る役割を担うこよになるのだ。
 映画の製作にあたって“野党や政治勢力に与するものではない”こと、“一人の記者を礼賛するものでもない”ことを前提とした。
 「報道全体、記者一人一人にエールを送るつもりで作った」と語る。
 「これヤバイですよ」とか「作ってはいけないんじゃないですか?」などという同調圧力を感じながら作ってきた。
 宣伝でも多くの注目を浴びながら、記事にはしてもらえなかった。
 安倍長期政権の下で、権力とメディアの関係は大きく変化した。
 政治について誰もが遠慮なくものを言い、学校でも職場でも自由に語り合えるような、そういう社会に戻さないとまずいのではないかと思う。
      河村光庸エグゼクティブ。プロデューサーは、こう持論を展開したのだ。
      参議院選挙を前に、多くの人が映画館に足を運ぶことを願ってやまない。
      “選挙の前に「新聞記者」を観よう”と私は思っている。
 


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