So-net無料ブログ作成

日めくり汀女俳句 №35 [ことだま五七五]

四月九日~四月十一日

         俳句  中村汀女・文  中村一枝

四月九日
噛(さえず)りの高音高音にうながされ
              『紅白梅』 嘲り=春

 朝うつらうつらしていると、どこかで音がしている。例の鼠の一件以来、鼠の物音に敏感になっているから、これは又か、とおののいた。よく聞いているとどうも外の、それも屋根の上、雀たちが庇の上を踏んでいるらしい。同じ生き物でも、鼠と雀とでは全く受けとり方が違う。
 大古の昔から雀は人間になじみ深く愛されてきた。体も鳥より小さいし、見た目にもかわいさがある。昔話に「舌切雀」というのがあった。悪いお婆さんに舌を切られた雀が良いお爺さんに助けられ宝の袋を贈る。欲深いお婆さんは同じ事をして汚物の袋を貰う。今でも通用しそうな話。

四月十日
春慶や一人もよろし行かしめよ
            『薔薇粧ふ』 春の塵=春

 一緒に暮らしたことがないから不満も起こらず葛藤もない。汀女と私とは極めてさっぱりした嫁姑であった。それで満足していたということではないだろう。汀女はあきらめていたようである。
 義妹には「一枝さんは個性的だから」と言ったそうだ。変わり者で言うことは聞かない、困った嫁を個性的と評するなんて〝やられた〟と私はひそかに舌を巻いた。これは勝てない相手と思い知った。
 二〇〇〇年四月十一日は汀女百回目の誕生日。私は四月十日生まれ、陽春の気ほころびるころ生まれたのが似ている。

四月十一日
たんばぽの花には花の風生れ
            『半生』 蒲公英=春

 鼠作戦もどうやら大詰めに近づいたらしいと鼠仕掛け人に言われほっとした。家族を失った雄か雌のどちらかが生き残りを賭けているときいて同情さえしたのだ。その次の日何と寝室に鼠が。私はパニックだった。捕虫網ならぬ捕鼠布を作った。
 二、三日たって犬が妙に臭いをかぎまわる。玄関の物入れの裏側に鼠の頭を発見、棒で突いている内に廊下にとび出した。犬も棒立ち、私は大声、鼠も慌てて表へ逃げていった。鼠作戦はどうやら長期化の様想を里しつつある。


『日めくり汀女俳句』 邑書林

nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。