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検証 公団居住60年 №33 [雑木林の四季]

Ⅶ 公団家賃裁判一提訴から和解解決まで

    国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

 6.被告公団の主張

被告公団の主張は、正確を期すため被告準備書面からの抜粋を主とする。ただし年号表記など文章に若干の修正をくわえた。

 ①家賃増額請求の経緯-「1955年以来、公団住宅の家賃は改定されないまま推移、その間物価その他経済事情の変動は著しく、このためその家賃は低額に過ぎて不相当となり、公団住宅相互間における家賃は著しい不均衡が生じるに至った」「不相当に低額となった家賃を相当な額まで増額し、社会的不公正を是正すべき時機に至った」(被告準備書面第卜以下、被準1と略す)

 ②家賃増額請求の法的根拠-「契約書5条1号ないし3号は、事情変更の結果家賃が不相当となる事由を具体的に例示した規定であり、借家法7条 1項と同一趣旨である」「公団住宅の賃貸借関係は私法関係であり、その家賃増額にたいしては強行規定たる借家法7条の適用がある」(被準2)。「施行規則は行政命令であって、原告ら国民の権利義務を定める法規命令ではないから、同規則9条、10条は本件家賃増額請求の法的根拠とはならない」(被準2)。
「公団法および施行規則は公団業務にたいする行政的規制監督の規定であり、その業務が適抑こ遂行されることによって、居従者の受ける利益は、いわゆる「反射的利益」であって、権利として法的保護を求めうるものではない」(被準3)。

 ③本件訴訟における審理対象-「公団住宅の賃貸借関係は私法関係であるから、審理の対象は、改定家賃額が借家法7条1項に照らし相当な額であるか否かの一点に尽きる」(被準2)。「裁判所によって判定されるのは、経済事情の変動に即した客観的相当家賃額はいかなる額であるかであって、建物賃貸人が現実に増額請求した額の積算根拠・方式の当否ではない」「原告らは、政府の住宅政策の適否や被告公団の業務運営の当否などという本来民事訴訟において審理の対象とならない問題について論争を挑もうとしている」(被準5)。
 ④家賃および家賃の不均衡について-「家賃は賃貸住宅の利用による便益にたいする対価である。家賃の不均衡とは、賃貸住宅の利用による便益と負担する家賃額の対応関係が区々になることをいう」「その承離が区々であることは、「家賃の公平」ないしは「家賃の均衡」の原則に反することになる」(被準3)。「公的住宅であるから、使用対価としての家賃の負担は賃借人相互間で不公平であってはならない」(被準4)。「施行規則9条は、公団住宅の家賃につき、通常の(=民間の)家賃と同様、建物および敷地の使用の対価と
してとらえ、その構成要素を定めたものである」(被準4)。

 ①個別原価主義について-「施行規則9条1項は、当初家賃の決定にかんする規定である」(被準4)。「公団住宅の家賃は、原価回収のみを目的としているものではない」(被準4)。

 ⑥家賃増額の大臣承認について-「既定家賃の変更については、一般的改定方式を予め定めることに代えて、そのつど建設大臣承認による方式を採用している」(被準4)。「建設大臣の承認は、原告ら居住者にたいして被告公団がなす家賃増額請求の要件とは関係がない」(被準6)。「極端にいって建設大臣の承認がなくても家賃増額請求は有効と考える」(第8回口頭弁論での裁判長の問いにたいする被告代理人の答弁)。


『検証 公団居住60年』 東信堂

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