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対話随想余滴 №14 [核無き世界をめざして]

対話余滴14 関千枝子から中山士朗様

             エッセイスト  関 千枝子
 
 なんだか、この前の手紙、泣き言ばかり書いたようで失礼しました。ただ、大腿骨骨折のリハビリの大変さを、痛感しています。退院は四月は無理で五月になりました。
 それにしても驚くのは年寄りの入院者の多いことで、まるで老人病棟のよう。それも女性が多いのです。完全に認知症と思われる人もかなりいます。年寄りの骨折がいかに多いか、ということだと思います。身の回りのことも何もできない人も多く、結局家族が見るということなのでしょう。幸せな方々かもしれませんが、いろいろな意味で考えてしまいます。ただ一つ言えることは、やはり、けが(骨折)はいけませんね。高齢者には禁物です。屋内で骨折する人も多いようなので、中山さんも、これだけは気を付けてください。
 病院に篭っているうちに世の中いろいろ変わってきました。不愉快なことが多いです。まず、元号騒ぎです。これで安倍氏の支持が増えたなど、信じられませんね。でも、中山さんのお便りに「海ゆかば」のことが書いてありうれしくなりました。「令」の字の持ち上げや萬葉集賛歌が言いふらされる中、「海ゆかば」のことを誰も言わないのに、私は怒っております。最近、「海ゆかば」のこと書いている新聞もあることに、気づきましたが、とにかくテレビの世界では(今、私は、新聞を読む機会が少なくて、多くの情報をテレビに頼っていますので)、海ゆかば」のことに触れているテレビ番組など見当たりません。戦中を少しでも生きた人間だったら「海ゆかば」を忘れた人はいないでしょうに。
 あまり腹が立ち、女性文化研究所の機関誌(ニュース)に、そのことを書かせていただきました。依頼は「今伝えたいこと」というテーマで、数回連載で、思っていることを書いてくれということで、私の生まれたころからのことを書こうと思ったのですが、この「令和騒ぎ」で、昨今の話題と絡めて皆さんが忘れていることを書こうと思います。
 第一回は、「海ゆかば」のことを書きました。萬葉集が貴族から庶民までの歌を集めた国民の歌集のように言われるが、あの頃の庶民があの難しい万葉仮名を書けたか。その中でも貧しい東国の防人が歌を詠み、書くことができたのか。五七調は日本語をしゃべる人にとって言いやすいので、少し教えれば、短歌めいたものをしゃべることはできたかもしれませんが、万葉仮名で書くことはどうでしょうか。誰かがあとから添削したものではないか、そんな疑問をもっています。
 さらに、「海ゆかば」の曲のでき方に対する腹立たしさです。
 あの歌は、一九三七年、盧溝橋事件から始まったシナ事変が実質的戦争に広がり、近衛内閣が、「国家総動員計画」を立てた。その最初の国民を鼓舞する大宣伝が「国民歌謡」でした。月に一度「国民歌謡」を作りラジオで放送するというのです。昭和の初めに出現したラジオは、満州事変を経て国民に広く普及、よく聞かれておりました。国民歌謡の第一回が「海ゆかば」でした。信時潔氏の作曲による荘重な調べは国民の心をとらえ、誰一人知らぬものはない曲となりました。天皇のために命を惜しまない、それが日本人、戦死は「誉」という考えが自然に国民の中に行きわたっていったのです。
 特に忘れられないのは戦争末期、玉砕の報とともにこの調べが流されたことです。鬼畜米英憎し、一億火の玉となって聖戦を闘い抜く、と悲壮な気持ちになったものです。
 なぜ、国民歌謡第一作が「海ゆかば」だったか。私は、どう考えても信時氏が自分で海行かばの歌を選んだとは思えないのです。国家総動員で難局に対処する、国民を鼓舞する歌には何がよいか。それには防人の天皇への忠誠の歌こそ最高、と考えた人がいて、当時超一級の作曲家信時潔氏に曲をつけることを依頼したのではないかと思うのです。
 この歌のすさまじさ。海でも山でも野垂れ死にOK。屍などどうなっても構わない、遺骨どころではありませんね。しかし、こんなことを本当に防人が心から思って歌に詠んだのだろうか。万葉仮名を自分で書くことは無理でしょうから、元歌のようなものがあっても誰かが手を加えたのではないだろうか、と疑ってしまうのですが。
 もっとも恐ろしいことは、今回の「令和」騒ぎで万葉ブームが起きたのに、「海ゆかば」のことを誰も言わないことです。皆さん、「海ゆかば」のこと忘れてしまったの!
 とにかく、元号というものに、私は大反対で、世界に通用しない日本だけの「馬鹿な習慣」それに対し、まったく無批判で、「時代の区切り、節目だから」など平気でしゃべっている人の多さ、何だか、悲しくなってしまいます。
 こんなことを書いているうち五月一日になってしまいました。今日から令和一年になるわけで、テレビをひねったら、一晩寝ずに踊っただの、令和と名付けたお菓子に行列ができたの、デパートの初売りに大騒ぎだの、まるで、去年のハロウィーンの渋谷の騒ぎを思い出すような騒ぎがあちこちで行われたようで、ほとほといやになってしまいました。日本人はお祭りが好きで、なにかにつけ直ぐ舞い上がるようで、怖いと思います。新しい時代になったなど平気で言っている人、何を考えているのでしょうね。世界中の大部分に人が元号なんて知らないのに、日本人だけが「新しい時代」なんておかしいですね。
 天皇(上皇ですか)は平成を戦争がなく、好かったと言いましたが、私から見れば、この三十年、限りなく戦争に近く、戦前の趣を呈しているように思えてならないのですが。
 世の中の「バカ騒ぎ」と別に、とても心配です。日本だけでなく、世界中の逆コース(こんな言葉、ありましたね。覚えておられますか)心配です。NPO会議でも核を持つ国々の態度はますます荒々しく、気持ちが逆立ってくる思いです。


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