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検証 公団居住60年 №32 [雑木林の四季]

Ⅶ 公団家賃裁判一提訴から和解解決まで

    国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

4.全国自治協が提訴した目的

 日本住宅公団は1978年9月、全国35万1,000世帯にたいし初の家賃いっせい値上げをおこなった。理由に「新旧団地の家賃不均衡の是正」と「古い団地の維持管理経費の確保」の2つをあげたが、公団は居住者自治会との協議、話し合いを拒みつづけ、不均衡の具体的な内容や維持管理経費の不足額、値上げ額の積算根拠はいっさい明らかにしない。公共機関にこういう家賃値上げが許されるのか。値上げの不当性を追及し、公団家賃のあり方を解明するのが提訴の目的であった。具体的には以下の点について問題提起をした。

 1)家賃値上げにさいして居住者と協議をつくすべきである。
 2)家賃値上げの根拠としての「不均衡是正」では容認できない。
 3)値上げ額の根拠と算定基準を明らかにせよ。
 4)その他、公団住宅家賃の性格、借家法、公団法規、賃貸借契約書の法的関係を明確にする。
 5)公団のずさん経営と家賃値上げとの関係を追及する。
 6)裁判をつうじて相当家賃額を確定する。

 訴状は、提訴にいたる経緯、家賃値上げの背景と企図をのべた後、値上げ理由については、①個別原価主義に反する家賃変更は許されない、②「不均衡是正」は合理性がない、③「維持管理経費の確保の困乱についていっさい根拠を示さず、値上げ理由の違法性、不当性を自証している。結びに「本件訴訟は、値上げの適否の判断をつうじて、公団住宅の家賃体系の確立をはかることになるのであるが、そのなりゆきは、公団住宅のあり方に対してだけでなく、国民的課題としての公共住宅政策全般に重大な影響を及ぼすこと必至であって、多大の社会的意義をもっている」と記している。

5.家賃裁判を支えた原動カー6年にわたる裁判運動

 わたしは東京地裁の原告であり、この記述は、全国8地裁でおこした公団家賃裁判のうちの東京地裁での進行に限られる。もちろん全国自治協としての運動であり、全国の弁護団、原告団はとも交流を重ね、意思統一をはかりながら進めてきており、違いがあるとすれば、各地裁の裁判官の指揮のしかたに由来する技術上の問題にすぎないといえる。
 訴状は民事31部(牧野利秋裁判長ほか)で受理され、第1回口頭弁論は1979年7月30日、安達十郎弁護団長の陳述ではじまった。傍聴席60人分のところへ52団地255人がつめかけ、入れなかった参加者は廊下を埋めつくした。40分間の法廷が終わって、全員が東京弁護士会館講堂での報告集会に臨んだ。
 東京地裁には当時広い法廷がなく、第2回口頭弁論からは定員20人、つめても40人という狭い法廷となり、原告が自らの裁判にも出廷できないありさまだった。広い法廷を求める署名運動にとりくむ一方、傍聴者が途中で交替し、通路への扉を開放させるなど超満員の傍聴参加をえて弁論をすすめた。
 1985年3月29日に東京地裁で和解手続を終えるまでの5年10か月のあいだに、口頭弁論は30回、それに先だつ原告団および各自治会代表、弁護I動こよる裁判対策会議は30回以上、またそれに倍する裁判対策運営委員会がひらかれた。法廷には毎回平均100人をこえる傍聴、報告集会への参加がみられたことは、家賃裁判を意気高くすすめる何よりの保障だった。全国および各地方自治協の機関紙にはかに「家賃裁判ニュース」全44号の発行、『東京地裁・公団住宅家賃裁判』記録集全3冊(1981-86年刊、A5版682ページ)
の刊行は、家賃運動の学習宣伝活動を大いに助けた。
 原告は、地裁ごと、地方自治協ごとに合同研修会や原告団会議をひらいて運動への確信を深めるとともに、それぞれの団地では原告が先頭に立って、各口頭弁論の前後に家賃裁判の報告・宣伝活動をおこない、毎年秋の全国統一行動のなかで全戸署名と裁判支援カンパを訴えて運動の推進役をはたした。

『検証 公団居住60年』 東信堂

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