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西洋美術研究者が語る「日本美術は面白い!」 №9 [文芸美術の森]

                     シリーズ≪琳派の魅力≫

                  美術ジャーナリスト 斎藤陽一

            第9回:  俵屋宗達「唐獅子図」「白象図」
   (元和元年・1621年頃。杉戸絵。各182×122.5cm。重文。京都・養源院)
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9-2.jpg京都の三十三間堂の近くに養源院というお寺があります。もともとは、豊臣秀吉の側室・淀君が、亡父・浅井長政の菩提をとむらうために創建した寺ですが、火災にあったあとに、淀君の妹である徳川秀忠夫人・お江が再建したのが現在の養源院です。
 この再建時に俵屋宗達が描いた絵が、今も残っています。
 その中から、杉戸に描かれた「唐獅子図」一対と「白象図」一対を見ましょう。

≪愛嬌のある獅子と白象≫

 先ず「唐獅子図」から。
 右の杉戸には白い獅子、左の杉戸には金色の獅子が描かれています。白獅子は身体をかがめて飛び上がろうとする瞬間、金色の獅子は大きくジャンプして着地した瞬間でしょうか。
 背景には何も描かず、杉戸の木目をそのまま見せ、画面いっぱいに大きく獅子たちをとらえています。獅子の身体は大胆にデフォルメされていますが、躍動感が感じられます。同時に、恐ろしい獅子というよりも、二匹の犬が遊んでいるような、ユーモラスな感じですね。とても個性的で、思わず「これぞ宗達の唐獅子図!」と言いたくなります。

9-3.jpg 宗達のこの絵よりも少し前の桃山時代、狩野永徳の描いた「唐獅子図屏風」(右図)を思い起してみましょう。
 
 そもそも桃山時代には、「唐獅子図」は力を象徴する図柄として武将たちに好まれていた画題でした。
 永徳のこの屏風は、かつて豊臣秀吉の身辺を飾っていたものとも伝えられています。
 狩野永徳は、そのような時代に気分にふさわしく、堂々と闊歩する獅子を豪放な筆致で描いています。

 これに対して、宗達が描いた獅子は、なんとも言えない飄逸な味がある。あの「風神雷神図」に共通する宗達の個性と気質が感じられる絵画です。

 同じことは「白象図」にもあてはまります。
 こちらも、思い切って単純化したフォルムで、杉戸いっぱいに白象を描いています。眼はちょっと鋭いのですが、これまたユーモラスで、おおらか、たっぷりとした量感がありますね。

9-4.jpg 与えられた杉戸のフレームを目いっぱい使って、モチーフをクローズアップで描き、鮮やかな印象を与える ― これも、宗達が扇絵の制作で培ったデザイン感覚なのかも知れません。
 一対の獅子たちと一対の白象たちは、いずれも「阿吽(あうん)の形式」をとっていると言われます。

 もうひとつ、仏教絵画では、獅子は文殊菩薩が乗る動物、象は普賢菩薩が乗る動物であり、養源院が浅井長政の菩提を弔う寺であることを考えると、この杉戸絵は仏教的なものも暗示しているのかもしれません。
 とは言え、大胆な単純化とデザイン化によって、少しも仏画っぽくない、明快な絵画となっているのも「宗達的」です。

 次回は、俵屋宗達が平安朝の物語『源氏物語』から主題を採りながら、「大和絵」の伝統を大きく革新した絵画作品「源氏物語関屋澪標図屏風」を紹介します。


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