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日めくり汀女俳句 №32 [ことだま五七五]

三月三十一日~四月一日

         俳句  中村汀女・文  中村一枝

三月三十一日
少年のかくれ莨(たばこ)よ春の雨
            『春雪』 春の雨=春
 手鍋提げても、という言葉、今は死語になったかなと思うが、そういう必死の恋愛なんて昨今、めったにお目にかからなくなった。
 道具が一つもなくても、コンビニという便利なもののおかげで住みついたその日から生活を始められる。たちまちおままごとができるから恋もまた手軽である。
 ついたり、離れたりも心の痛みはさほど伴わないらしい。
 そのくせ人はラブストーリーには憧(あこが)れる。切ない感情を共有したいと願う。安っぽいテレビドラマもまたにぎわう由縁である。

四月一日
たんばぼや日はいつまでも大空に
              『春雪』 蒲公英=春
 介護保険の被保険者証なる物が郵送されて一寸(ちょっと)ぎょっとした。よく考えてみると私も貰う資格ありということで、有り難いやら、悲しいやらの心境である。
 初めて年金を貰った時は、むしろ嬉しい方が先に立って、やったーつと思ったのだが、介護保険となるとわが身の行く末がよたよた縮んでいくような切ない気分になってくる。
 友人に介護認定の審査を頼まれている人がいて、「私は何て言うのに当たるの」と聞いてみると、「あんたは自立よ」と冷たく突き放され、何だかほっとするのである。

四月二日
ゆで玉子むけばかがやく花曇
              『春雪』 花曇=春
 江国香織さんの小説「きらきらひかる」を読んだ。本屋で題に惹かれて買ったのだが、私の子供くらいの年齢のお嬢さんの感性がとても気持ちよかった。アル中で情緒不安定な妻とホモの夫のかもし出す日常、アンバランスなのに居心地がいい不思議な小説である。
 今江祥智氏があとがきを書いておられる中で、不意に、この汀女の「ゆで玉子」の句がでてきた。あっ、と思った。
 この句の持つ芳醇でつややかな味わい、そのくせ無機質の匂い、似ているのである。江園さんと汀女の、六十年以上のへだたりなど何一つ障樽にならないのだ。

『日めくり汀女俳句』 邑書林

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