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往きは良い良い、帰りは……物語 №69 [文芸美術の森]

往きは良い良い、帰りは……物語(こふみ通信)
その69 「春帽子」「卒業」「汐干狩」「鶯」
平成31年3月10日(日)  於  TCCクラブハウス
                コピーライター  多比羅 孝(こふみ会同人)記
                   
◆◆平成31年3月1日◆◆
当番幹事(田村珍椿・森田一遅両氏)から案内状が届きました。

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「3月のこふみ会」のお知らせ
年度末のあわただしさと、新しい時代の予感と、
久しぶりの暖かい風に吹かれて、今年の3月がやってきました。
よ~し、ここはひとつ、短冊大量ゲットを目指して、頑張って行きましょう!
期日●3月10日(日) 午後1時より
会場●表参道・東京コピーライターズクラブ
会費●1500円
兼題●【春帽子】【卒業】

●景品は3点(合計千円くらい)ご用意ください。
●出欠席のご連絡は、3月3日(日)までに、
 以下のメール、電話など、一遅までお願いします。
  mrthjm@globe.och.ne.jp
    090-1429-0195
●3月の幹事:田村珍椿/森田一遅
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これに応じた返信レターは……

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いつものとおり素晴らしい軒外氏からのもの。
孝多は毎々、苦しまぎれ。以下、白川静『常用字解』より。

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「卒」の解説=象形。衣の襟(えり)を重ねて結びとめた形。死者の襟もとを重ね合わせて、死者の霊が死体から脱出することを防ぎ、また邪悪な霊が入り込むことを防いだものとみられる。

それで「しぬ、おわる、つきる、ついに」の意味となる。息をひきとると、とり急ぎ襟もとを重ね合わせるので、卒然(にわかなこと。突然)のように「にわかに」の意味に用いる。
≪用例≫「卒業」=事業を完了すること。また、規定の学業課程を学び終えること。「卒中」=脳出血のために、にわかに倒れる病気。「卒倒」=にわかに意識を失って倒れること。(以下略)

★★当番幹事・田村珍椿様、森田一遅様。ご案内有難うございました。出席いたします。どうぞよろしく。★★
          平成31年2月28日          孝多拝
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◆◆いよいよ当日。会場でのトピックス。◆◆
≪その1≫ちょっと手洗いにと思って、私・孝多がそばを通ったら、K氏と可不可氏が話していました。
「暫く離れていたら俳句の作り方、忘れちゃった。難しいなあ。」と可不可氏。退会と再入会のことらしい。「いや、そんなこと無いでしょ。すぐに実力発揮。」と応対しているK氏。ちらりと聞いて私も同感。可不可氏が復活しない筈がありません。
名称未設定 2 のコピー.jpg何しろ可不可氏は多才多芸。句づくりもさることながら、コピーライターとして広告関連のエッセイにも腕をふるい、書もまた良く為(な)して、出版された句集の題字も、自分で書いたほど。当時、渋谷で句と書の二本建ての展覧会も開いています。
こうしたこと、知らない人が多いと思う。知らせたいなあ、皆さんに! と、トイレで、孝多は考えたのでした。本人に確かめたわけではないのですが、きっと俳号の「可不可」は1924年没のチェコの実存主義の作家、フランツ・カフカにちなんだもの。カフカの代表作はご存知『変身』!                      

≪その2≫本日も横幕さんが出席!タイミングをはかって幹事さんがキューを出して、横幕さんがご挨拶。前回はゲストだったけれど今回からは正会員として仲間入り。「俳号は玲滴(れいてき)としました。よろしくお願い致します。前回、景品をお渡しできなかった虚視さん(人)、珍椿さん(地)、紅螺さん(天)には本日、持参致しました。どうぞ、よろしく。」パチパチパチッ!
そこで孝多が立ち上がり、ムカシの≪アイデアル香水≫のキャッチフレーズ「一滴、二滴、三滴、ステキ。」を披露しました。その上で更に、孝多は「玲滴」という俳号の名付け親、S氏のことを皆さんにお話ししました。つまり60年前の氏のTBSテレビのディレクターとしてのご活躍が無かったら、今日に残る「天皇皇后御成婚」のパレードの、綿密にして膨大な映像・音声記録は無かった!という事実。今もって、NHKも舌をまいているというS氏の業績!

さて≪その3≫は、美留さんの快挙。いわゆるダントツで43点。本日のトータルの天。おめでとうございました。パチパチパチッ。 兼題、席題、4句ともに優秀作。「一句稼ぎ」でないところが大きな話題になりました。巻末の≪本日の全句≫にて、「再確認」「再感動」する人も少なくないでしょう。

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≪その4≫は……席上、「鶯を たずねたずねて 麻布まで(菓子舗・青野)」という、あの著名な句を誰かが言い出したとたん、今回の席題の「鶯」は、食べ物でもいいのか、ウグイス色という色のことでもいいのか、場内アナウンスのウグイス嬢(じょう)でもいいのか、鶯を呼ぶ鶯笛でもいいのか……とかとか、それぞれの人から、いろいろなハナシになりました。
しかし、最後は某氏によって、ばっさりと断定されました。「何でもいいんだよね、良くないと思ったら選ばなければいいんだから。」まいりましたあ! そうこうしているうちに時間です。

◆◆さあて、さてさて、本日の成績発表!◆◆
得点を示す正の字を計算して係が声を高めます。

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         左から人の舞蹴、天の美留、地の虚視・撮影=軒外(敬称略)

★本日のトータルの天は~43点の美留さ~ん。パチパチパチッ!
 (代表句は1句に限るのは難しいけど「音程に 迷ひつ鶯 初音かな」)

★トータルの地は~29点の虚視さ~ん。パチパチパチッ!
 (代表句は「小走りに 待ち人来たる 春帽子」)

★トータルの人は~27点の舞蹴さ~ん。パチパチパチッ! 
 (代表句は「春帽子 少女の如く かぶり来る」)

★トータルの次点は~26点の鬼禿さ~ん。パチパチパチッ!
 (代表句は「沖までも ぱんぱんの晴 汐干狩」)

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すっかり定着した絵付き短冊

パチパチパチッ! 皆さん、おめでとうございました。今回も盛会。良かった、良かった。
でもまあ、何としたことか。美味だった飲み食いのことを書き忘れていました。今、書きます。

★先ずは、とり松の「ばらずし」。京都・丹後地区のみにて供されるという伝統的な逸品。鯖をおぼろ状にして数々の具にまぜ、木箱に詰め、段状に重ねて締め、切って取分けて食すという、手のこんだもの。鬼禿氏が推薦して止まなかったと幹事さんから聞いて居ります。

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京都府京丹後市 網野名物「ばらずし」美味!

★次いで純米吟醸「おりがらみ」の「糀」。ラベルのイラストはカメレオン? 日本酒をもっと、もっと、若い女性に楽しんでもらいたいというのが日本中の蔵元の願いとか。そのためのカワイイ仕立てなのでしょうか。甘筋の、この酒の味、そう若くはない男性たちにも好評でした。差し入れに感謝しながら杯を重ねた次第です。

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今は全国的に女性がターゲット

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最近、こふみ会でも、(個性を示す誤用例もありますが)旧仮名を正当に用いた句が目立つようになりました。今回では巻末の≪本日の全句≫にも載っている「鶯」の≪音程に迷ひつ≫や「春帽子」の≪闘病を終へ≫が光っています。「変わりつつ上昇する」「仮名遣いにも留意する」「刺激し合って発展する」いいことですよね。それが「座」の文芸。では、また次回。お元気に。

              第69話 完    (孝多)

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今回のこのブログ、UPされたあとも、筆者として私・孝多は気掛かりでなりませんでした。『卒』のことです。
UPされた文章だけでは片手落ち、大切なことが書いてありません。つまり……

なぜ「兵士」「兵隊」のことを「兵卒」というのか。
なぜ「召し使い」や「従者」のことを「僕卒」とか「従卒」とかというのか。(どうして『卒』という言葉が使われるのか。)
それについて、書いてありません。全く触れません。

『卒」については、ただ、返信レターに、平凡社・白川静の『常用字解』から採って、次のように書いただけです。再記しますと……

『卒』は象形文字である。衣の襟(えり)を重ねて結びとめた形である。死者の衣の襟もとを重ね合わせて、死者の霊(れい)が死体から脱出することを防ぎ、また、邪悪な霊が入り込むことを防いだものとみられる。それで「しぬ、おわる、つきる、ついに」の意味となる。
息を引きとると、とり急いで襟もとを重ね合わせるので卒然(にわかなこと。突然の)のように「にわかに」の意味に用いる。
用例=「卒業」事業を完了すること。また、規定の学業課程を学び終えること。「卒中」脳出血のために、にわかに倒れる病気。「卒倒」にわかに意識を失って倒れること。

引用は以上のとおりでした。
しかし、これでは、いけません! 上記の疑問「なぜ兵卒などには『卒』の字が使われるのか。」についての解決のためには、少しも役に立ちません。全く、触れてないのですから。それが気掛かりだったのです。

そこで、調べることにしました。(面倒なことになりそうだな、とは思いつつ。)
先ずは手元にある白川の『常用字解』以外の漢和辞典を見ることにしよう、と、最初に当たってみたのが、『常用字解』と同じ平凡社、白川静の『字通』。これは無駄でした。厚くて重いだけで、書いてあることは『常用字解』と同じこと。
次ぎに当たったのが学研の『漢字源』と、小学館の『新選漢和辞典』と、博文館の『新修漢和大辞典』と、六合館の『新訳漢和大辞典』。

すると、嬉しや、「白川」には載っていないことが学研と小学館には出ているではありませんか。
学研と小学館には会意文字として『卒』とは、十把一絡(じっぱひとからげ)の者たちのこと。雑兵(ぞうひょう)のこと。召し使いのこと。人夫、人足のこと。下級の兵士のこと。僕(しもべ)のこと。小者(こもの)のこと。従うこと。あわただしいこと。死ぬこと。ついに、終わり、にわかなこと。と、あります。(これで解けました、兵卒や従卒の疑問。『卒』には、そういう意味もあったのですね。)

そして、かつては、雑兵、召し使いなどは、はっきりと身分が判るシルシ付きの法被(はっぴ)のようなものを着せられていたので、それをモトにした『卒』の字が出現したという説を、学研と小学館は採り入れています。
ですから、この点も、死者の襟もとを重ね合わせる、という平凡社の白川静の説とは、大分、へだたりがあります。
違いますねえ。白川は法被や雑兵を無視し、学研・小学館は襟の重ね合わせや死者の霊のことに触れません。どうなのでしょうかねえ。
白川は『卒』を襟合わせの象形文字と見ている状況ですし、(小学館は会意文字)この問題、複雑です。私たちとしては今後も、ずっと、監視を続けていなければなるまい、ということですかね。
なお、博文館も六合館も、短縮されているだけで、内容は学研や小学館と殆ど変わりません。「しもべ」「従う」「下級の軍兵」です。死者の「襟合わせ」についても同様に、ひと言もありません。今後を見守りましょう。(孝多)
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第591回 こふみ会≪本日の全句≫
平成31年3月10日    於 TCCクラブハウス

◆兼題=春帽子     順不同
おーい船が出るぞオ 春帽子      矢太
晴れ晴れと 搭乗口の 春帽子     紅螺
春帽子 鏡の向うは モネの庭          茘子
野をわたる 風にゆらぐよ 春帽子   玲滴(れいてき)
闘病を 終へ春帽子 被る朝             美留
振り向けば 小さく手を振る 春帽子      孝多
安徳帝の もとに沈みし 春帽子    弥生
暑くなく 寒くもなくて 春帽子         軒外
網棚に 忘れられたる 春帽子            可不可(かふか)
越へて来し 絮(わた)止まらせて 春帽子  鬼禿
春帽子 ふわりと降りる 無人駅    一遅
春帽子 少女の如く かぶり来る    舞蹴
いろいろと 色めいてきて 春帽子   珍椿
小走りに 待ち人来たる 春帽子    虚視

◆兼題=卒業                順不同
頬紅く 卒業の子ふたり 山の町    一遅
父帰る 卒業式の その朝に               矢太
あれこれと 卒業する年 八十            珍椿
卒業子 真っ直ぐな瞳(め)の 危うさよ   弥生
卒業の 無き時のなか 面を打つ         虚視
卒業歌 片恋(かたこい)の傷 セピア色   茘子
卒業や 旅の途中の 駅ピアノ     紅螺
ピアノの鍵(キイ) ひとつ叩(たた)いて 卒業す  孝多
卒業を 茶柱たちて 祝う朝       玲滴(れいてき)
好きな子は 好きな子のまま 卒業す   舞蹴
卒業式 詰め襟ホック しめ直し     軒外
仰げば尊し 卒業式の 講堂                鬼禿
鉛筆に 噛みあと残し 卒業す              美留
人生の 卒業式の その先へ        可不可(かふか)

◆席題=汐干刈              順不同
汐干狩 膝まで濡らさぬ 白さかな    孝多
汐干狩 水平線に 貨物船        矢太
汐干狩 少女二人の 腕まくり               紅螺
貝殻の 模様に見とれ 汐干狩      弥生
尻ぶつけ 譲らぬテリトリ 汐干狩    美留
汐干狩 ブルマの尻も 泥のしみ     軒外
汐干狩 いる筈もなき 蛤も       可不可(かふか)
沖までも ぱんぱんに晴 潮干狩     鬼禿
汐干狩 頬打つ風が まだ寒し      舞蹴
尻からげ 一心に掻く 汐干狩      珍椿
背を伸ばし 時々空見る 汐干狩     一遅
親は子を 子は親を見ず 汐干狩     茘子
気がつけば 中洲に一人 汐干狩     虚視
汐干狩 子らの歓声 空に舞い      玲滴(れいてき)

◆席題=鶯      順不同
鶯に 耳かたむける 熱帯魚       矢太
うぐいすの 恐る恐る ホーホケキョ   珍椿
書を閉じて 鶯の声 遠ざかり               紅螺
たどたどし 鶯の鳴くや 天気雨     鬼禿
鶯の 昔返えりか 遠き日に       舞蹴
音程に 迷ひつ鶯 初音かな       美留
鶯の ひと声啼いて それっきり     可不可(かふか)
鶯の けさは初鳴き ねぼけ声      玲滴(れいてき)
鶯鳴き 骨格標本 微動せり       軒外
鶯や 園舎は緑に 塗られゆく      弥生
おっ鶯 読みさしの書を 閉じて聴(き)く  孝多
雲たれる うぐいすは鳴くを 躊躇して  虚視
鶯よ もう少し早く来い 妻逝きぬ    一遅
舞(おどり)子の 鶯と共 天城越    茘子

                                      以上14名 56句
                                    

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コメント 3

タケシ

孝多先生、今月も楽しいエッセイありがとうございます!!

可不可さん復活なのですね!!楽しみです!!


(*^-゚)vィェィ♪
by タケシ (2019-04-01 09:32) 

水野タケシ

孝多先生、

わたくし、この4月からテレビ制作にかかわることになりました。

テレビ朝日の新番組「川柳居酒屋なつみ」です。

芸能界の第一線で活躍する芸能人が日々抱えている愚痴や文句を川柳で発表し、トークを展開していくトークバラエティー番組です。

私の担当は、番組の肝になる川柳の監修。

司会は、3月までテレビ朝日のアナウンサーだった宇賀なつみさん。
ムロツヨシさんもレギュラーで出演します。

お話しをいただいたときは「どんな感じで川柳が使われるのか」やや不安だったのですが、

初回を観たら大爆笑。川柳も効果的に番組に使われていて大満足でした。

初回は本日深夜1時59分から2時24分(火曜深夜)です。

今は関東ローカルなのですが、全国放送になるように頑張ります!

ますますご指導お願いいたします!!


ドウゾ (っ´∀`)っ))ヨロシク
by 水野タケシ (2019-04-02 16:49) 

chinokigi

至急のおしらせ

こふみ会のメンバーの一人、横幕玲滴さんの俳号の名付け親、S氏の若き日の大活躍につきましては、このブログ上にて、ご紹介したとおりですが、またまた「やったあ」「素晴らしい!」であります。つまり……

S氏こと鈴木茂夫氏がテレビに出演して、60年前の「平成天皇の皇太子ご成婚パレード」の想い出を語られるのです。

  放送番組=ビビッと(TBS系列局)
放送日=平成31年4月10日(水)
放送時間=午前8時~午前10時

皆さま、ぜひ、ご覧ください。
この、鈴木茂夫氏を中心とするTBSテレビの取材班の活動が無かったら、今日に遺る膨大、かつ、綿密な記録は皆無であったろうといわれる歴史的な偉業です。
新しく、どんなお話を伺えるか、再び、どんな映像を見せてもらえるか……。4月10日が楽しみですね。ではまた。(孝多)
by chinokigi (2019-04-06 21:43) 

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