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バルタンの呟き №54 [雑木林の四季]

「エイプリルフール!」          

               映画監督  飯島敏宏

 エイプリルフール! なんと古めかしく響く言葉になってしまったことか。ひと昔前までは、4月1日の朝というと、目覚めと共にネタを用意して、
「今日は、どんな気の利いた嘘をついてやろうか」
と、周囲を見回し、その日一番に出会った恰好の人物を鴨にして、その効果を楽しんだものでしたが、ここ数年は、世の中がせせこましくなったのか、それとも、こちらがスローモーになったのかよく解りませんが、すっかりそんな風習を忘れてしまい、翌2日になってから「あっ!」と、思い出し、「残念だったなあ、とっておきのネタがあったのに・・」などと口惜しい思いをするようになってしまいました。
と、書いたところで、
「いや、待てよ、もしかすると、去年、何かそれめいた事を何処かに書いたり、近しい人に仕掛けやしなかったかな?」と自信がなくなったりして、加齢性脳萎縮の心配する切ない昨今の話になりそうです。
「これも、年齢のせいか・・・」と、素直に嘆くべきか、それとも、さらに気を奮い立たせて、
「テレビの国会中継番組の見過ぎで、嘘ばっかりの応答と、言い逃れ証言の繰り返される政界フールの氾濫に飽き飽きしてしまって・・・」
エイプリルフールの存在意義が見逃されるのだ、などと怒りに代えて開き直るかは別として、世の中でも、なんとなく方便どころか、嘘が珍しくなくなってしまったせいですか、4月1日のエイプリルフールの折角の楽しみが薄れてしまったようで、なんとなく残念です

 閑話休題、近ごろ、新聞にしても、テレビにしても、NHKはじめ各局こぞって、「天皇陛下ご退位」、「新しい年号は?」という皇室がらみのものか、あるいは「東京オリンピック・パラリンピック」喧伝記事が、トップを埋めつくしています。忌憚のないところ、紙も電波も、何れさまからの御達しでもあったのでは、と疑いたくなるほど、硬派の政治面が軽く扱われ、いわば社会ネタばかりが、目につきます。
こうなると、奇想天外な嘘を考え出して、誰かにぶつけて、うまくひっかけたところで、
「あははは…ごめん、ごめん、きょうは君、許したまえ。4月1日、エイプリルフールだからね・・」
などと面白がったり、逆に、
「なんだい、それ、くだらない冗談はよしてくれ・・・面白くもない!」
と、真面目に叱られることばかりになるかも知れません。
さりとて、相手を探そうにも、わが家の子供たちは独立してすでに久しく、仕事や、塾と部活に忙しい年齢になってしまった孫たちが、時たま、言い含められて渋々、老いたジージとばーばをなぐさめにやってくる他は、がらんとした家の二人暮らしとなって久しい現在、仕方なく買った小さなお釜で、僅か一合のお米を炊きながら、「コンビニで買ってきた【さあ!ご飯!】で、チン、じゃ、ちょっとね・・・」
などと、こぼしこぼしの台所で、一方で、
「脂や、焦げを落とすのが容易じゃないのよ」
と、称えながら魚の干物をガスレンジで焼いている忙しい連れ合いに、
「驚くなよ、実はそれ・・・」
などと録でもない嘘を言って、
「ははは、莫迦だなあ、今日はエイプリルフールなんだから・・・」
などという曲芸は、とてもやれませんしね・・・

 ところで、僕は昨夜、何の因果か、なんとしても眠れずに輾転反側させられたあげく、ままよ、と、今朝は夜明けを待たずに起きてしまったのですが、
「おお・・・・」
信じられない事に巻き込まれたのです。
僅かに開いていたカーテンの隙間から見えた光景に、思わず驚きの声を上げてベッドから飛び出し、カーテンを思い切り引き開けてしまいました。
時間的には、まだ漆黒の筈の空に、びっしりと詰め合わさって輝いている、夥しい星たち・・・
「満天の・・・」
などという表現では全く物足りない数です。
無限の光の粒子を集めて織り上げた煌めきの絨毯・・・とでもいいますか、
「いや、あれは・・・」
ご覧下さい! 星数などという数量では到底表現できません。
その一粒ひと粒は、動いてこそはいませんが、星の瞬きとは違う、なにか、生気のあるものの放つ“気の波動”を送って来る、“存在”なのです。
「・・・誰・・・何者・・・」
僕の渇き切った上顎に、ぴったりこびりついていた舌が、ようやく動いて、これだけの、言葉になったのです。
「イトカワだが」
何も聞こえませんが、僕にははっきりと、そう認識させる、重々しい、声、が僕を捉えます。
「ハヤブサとかいう、お前たちの手でオレのところへたどり着いたヤツが、『此処には生命が存在しない』などとお前たちの原理で結論付けるためのモノを持ち去って、われわれの生命を分析し、単なる小惑星の極めて微小な埃にすぎない。イトカワに生命は存在せず、などと決めつけて、処分、しにかかったり・・・」
続いて
「火星だが・・・」
という存在が、僕の脳裡に、直接コンタクトして来たのです。
「地球人類が、近々、攻撃宇宙船を火星に向けて発進させるとともに、月に対しても、もはや費消し尽くして地球にはほとんど残存しない稀少物質の盗掘および、火星侵略の為の前進基地として人員の移住を企てている事が知れている・・・」
と伝えたうえで、
「遂に、われわれ宇宙連合が召集されて、人類が、地球と名づけたこの惑星に存在すニンゲンなる生命を抹殺するためにやってきたのだ・・・」

「わあ、いいぞ! スケールについても、不服はない!そして、その先はどうなるのですか?」
床に寝そべったまま、大きな声で、叫んだそうです・・・映画監督という職から身に付いた習性からの叫び?とともに、目が覚めました。
でも、まだまだ頭の中には、冷めやらぬフールのアイディアがたくさん轡を並べて、走馬灯のように駆けめぐっていたのです。
加計問題・・・拉致家族・・・不正統計問題、シュアーな、ちょっときびしいフールのネタ、
更に、「一刻も早い、世界一危険な普天間基地返還のこれしかない代替」が、ドロドロの軟弱地盤の改良だけで、回復困難なサンゴ礁や、ジュゴンはじめ稀少動物たちを犠牲にして、少なくとも20年以上かかる辺野古しかないという・・・この不可解な解明不明の事実をネタにして、これこそ、
「エイプリルフール!」
そう、大声で叫びたかったのですが・・・


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