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バルタンの呟き №51 [雑木林の四季]

右側の胸ポケット            

                    映画監督  飯島敏宏

 「なにがめでたい!」の佐藤愛子さんは、「これっきり!」と、断筆宣言をなさったようですが、僕としては、一方で、命の終わる時まで書き続けます! とおっしゃる瀬戸内寂聴さんにあやかろうと決めて、わずか86歳!にして、近頃しきりに自覚症状を覚え始めた加齢性脳萎縮症という、高齢になれば、誰しもが避けて通れない症状の進行と折り合いを付けながら、僕としても、恥ずかしながら、なにか、この世の中に、僅かでもいいから寄与できることが出来ないか・・・と、今年も、春節にちなんで、改めて、バルタンズ・アイ、あの大きな目で世の中を見つめて呟き続けていこう、と、干支の変わるこの春節に臨んで誓ったものです。
ですが、さて、と開いた新聞でまず目を射たのは、
「ああ、今年もまた一陽来禍・・・」
と、連日生中継されている、ばかばかしさに呆れる国会の予算委員会の報道と記事写真でした。
ご承知の通り、新元号を俟つ今年の干支はイノシシ、猪突猛進の歳です。来年に東京オリンピックパラリンピックを控えて、というより実は差し迫った選挙をひかえて、安倍ニッポンは、「成長々々」の実績連呼です。なにやらその成長の実績が、役人の忖度数字で粉飾されていた気配でもありますが・・・攻める野党も、一向に足並みがそろわず・・・頼みのマスコミ、新聞にしても、一面トップが政治ではなく社会ネタの「嵐」一時閉店記事で、バルタンの眼も、何処を向いていいのやら、ただ徒らにきょろきょろ見回してもと、諦めかけた途端・・・ありました、ありました。

見るだに嘆かわしい、あの食材の大量棄捨のシンボル「恵方巻き」です。ふんだんな具材を巻き込んだ、立派な太巻きが、燃えるゴミのなかに、半齧り、あるいはひと口齧っただけの、いや、恐らくは売れ残りなのか、丸のまま包装もというものを含めて、どさっと・・・無惨としか言いようがありません。
昨年来、いや、一昨年来、新聞その他で取り上げられながら、結局、このありさまは、何でしょうか。
「恵方に向けて一本まる齧り・・・」
こんなもの鵜呑みしたって、福が来るはずがないじゃありませんか。
関西のどこの神社から始まったのかよく知りませんし、知りたいとも思いませんが、先日ある会合で出会った関西の某名刹宮司氏に、恵方巻きのそもそもの来歴を伺ったところ、
「ありゃ、どこぞの海苔やが、考えはったんとちゃうやろか」
の一言でした。
神社ばかりでなく、それに乗って、コンビニその他、食品関係業者が始めたのでブームになったもののようで、この春節には、某デパートの食堂街フロアに出店する全店が、食種によっては、これが太巻きなのか不可解!なものまで、全店「恵方巻き」イベントが組まれる有様でした。
関東もんの僕が呟くのもなんですが、一切れ一切れ、良く斬れる包丁で丁寧に切っていただくほうが、得も言われない口福が訪れるのとちゃいまっか・・・
成長々々の掛け声で生まれた過剰消費の社会現象は、「恵方巻き」ばかりではありません。
恵方巻きと同様に、凄まじい過剰供給の一例に、服飾を取り上げても、その弊害が顕著にみられます。既製ブランドのスーツ類では、過剰供給どころか、店頭に並ぶことさえなく捨てられるものが夥しい量に達した、という新聞報道がありました。

ところで、ちかごろ、家人ばかりでなく、各週刊誌の見出しからも執拗に迫られている、終末期!を身近に控えて、せめてものせめて身近からの断捨離ということで、永年の間見ることもなく溜まるにたまった写真類を整理している際に、僕が生まれた昭和初期の物と思われる、セピア色に褪色したある集合写真を見て、おや、と、気がついたのですが、名士を含む、見るからに上級の紳士と見受けられる人々の列の中に、三つ揃いのスーツで、縞柄の上質な生地仕立てながら、上衣の胸ポケットが、右側にある洋服を着ている方が一人おられたのです。
「あっ」
と、思い当たったのは、僕が、注文洋服屋の倅だったからかもしれません。
昔は、ある程度着古した服の縫製を丁寧にほどいて、生地をクリーニングして、補正しながら再び縫い直して殆んど新調のようにようにする「裏返し」という作業が、結構頻繁にあったことです。一部上場会社の高給取り社員でも、昔はサラリーマンは洋服が看板で、生地に懲り、柄に拘り、仕立てに凝って月賦ばらいで上等な背広を仕立てたものです。裏返して胸ポケットの部分を、かけはぎして、左に新たなポケットを付ける技法もありました。

 予め渡された予定通りの質問に、側近の手で作成された原稿の読み上げではぐらかし、自分の声で真摯に答える事をしない閣議決定専横の議会中継に倦んで、議員諸先生の洋服を眺めると、圧倒的に上質な麻生副総理の服を筆頭に、高価な注文仕立ての洋服を着ている閣僚、議員諸氏も見かけますが、殆んどが、高級ブランドであっても、昔、吊るし、と総称された、似たり寄ったりの類似デザインの黒系既製服を着ておられます。間違っても、裏返しに仕立て直した服は見かけられません。でも、若い議員先生はともかく、古手の先生方には、自宅のクローゼットに、以前無理して作った注文服の、今のような化学繊維や無織生地ではない、重厚な生地を体躯に併せて裁断して、仮縫いまで施した洋服が眠っているのではないかなあ、などと考えて、保守系幹部議員、お一人おひとりのお顔を拝見しています。そうです、「ぼーっとしてるんじゃねえよ!」、と、国民に言われる前に、右側にポケットが来てもいいじゃないですか、初志を思い出して、自分の体に合わせた服を着て、自分の声で、自分の心に従って、自分を信じて、議員としての職務を果たしていただければなあ・・・この国の行く道が開けるのでは・・・と、呟きたいのです。挙国一致で自衛隊員募集に、自治体が積極的協力を、などと災害救助に結び付けて叫ばれると、昔を思い出してしまうのです。挙国一致に次に来たのは、国家総動員! 一億一心!でした。専守防衛で、戰爭をしない自衛隊だから、やりがいのある仕事として自衛隊に入ったのです。同盟の名の下に、他国の防波堤、前線基地にされる恐れのある、あるいは、救援ではなく、他国の戦争をお手伝いさせられる恐れのある自衛隊に応募しようとする若者が・・・いると思う方が不思議だと思うのですが・・・


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