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浜田山通信 №235 [雑木林の四季]

『キム・ジヨン』100万部

             ジャーナリスト  野村勝美

 韓国で100万部が売れたというベストセラー小説『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んだ。びっくり仰天した。日本は負けたと思った。
 物語の主人公のキム・ジヨン氏は2015年秋に33歳。三年前に結婚、昨年女の子を出産。三歳年上のチョン・デヒョン氏はIT関連の中小企業に勤めている。キム・ジヨン氏も小さな広告代理店で働いていたが出産で退職した。妻も夫にも“氏”がついている。もっとも男には、夫以外、父親、祖父、二女一男の男の子にも名前はでてこない。男性差別どころか完全無視。無視されてもしかたがないと、男として生まれ生きてきた私でさえ思い知らされる、かってのというか、いまも、男尊女卑の世界である。
 キム・ジヨンの生まれた1987年、前年には全斗煥政権で金大中に死刑判決がでたりする暗黒時代だったが、一定の落ち着きも出てきていた。(ジヨンが漢字表記でどうなのか知らないが、せめて氏名、地名だけでも漢字を認めてくれれば、日本人も中国人もどれほど韓国、朝鮮に親しみを持つことだろう。)ジヨンはこの年生まれた女の子の名前で一番多かったものらしい。
 女性差別については私なども一定の理解と持っているつもりだったが、ここに書かれていることはそれをはるかに越えている。母親のオ・ミスクは二人の女の子を産んだ時には義母に「申し訳ありません」と誤り、三人目は中絶してしまう。夫に次ぎも女の子だったらと相談したら、「縁起でもないことを言わないで、さっさと寝ろ」といわれたのが原因だった。
 とにかく誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児、どれほどの苦しさ、辛さ、悲哀が女の生きることにつきまとってくるか。フェミニズムには若干の理解を持っているつもりの私にもグサリグサリと突き刺さってくる。翻訳の斎藤真理子氏、解説の伊東順子氏の文章が、作者チョ・ナムジュ氏の真意を的確にとらえており、日本でもベストセラーになることを望んでいる。
 その日本だが、ついこの間まで財務省の次官、元TBS記者のセクハラ問題やハリウッドの大物プロデュューサーらの「♯Me Too」運動がメデイアにとりあげられたが、いまやどこかへ消え失せた。どころか前橋市の役人が交際相手を刺殺したり、週刊誌「SPA」が女子大生の名誉と尊厳を傷つける記事を掲載したり、あげくのはては「人権派」で世界的フォトジャーナリストの広河隆一氏が「デイズジャパン」の女性スタッフへセクハラに及ぶ。テレビタレントの松本人志氏は、アイドルグループNGT48メンバーの暴行被害者告白問題で「それやったらお得意のからだを使ってなんとかするとかさ」とからかい、翌週は「きょうから無口なコメンテーターで、ギャラ泥棒になっていこうと思う」と。
 日韓関係は一触即発、とことん話し合いをしましょう。

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