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検証 公団居住60年 №23 [雑木林の四季]

大資本奉仕の実態と黒い霧 3

         国立市富士見台団地自治会長   多和田栄治

3 さらに民営賃貸住宅の建設・販売まで

 政府は早くも1961年12月に省令を改正して、特定分譲住宅を、①自社の従業員にたいし住宅を供給する事業をおこなう会社、②住宅の賃貸事業を営もうとする者にも譲渡できるとした。
 そこに住むのは「住宅に困窮する勤労者」にはちがいないが、民間企業が自力で確保すべき社宅にくわえて、従業員への持ち家販売を事業とする企業にも公団が国費を使って住宅を建設し分譲する。さらには賃貸住宅事業を営もうとするものに者にも販売する。なりふりかまわぬ公団事業の拡大に、公団の正体見たりというべきか、公共的役割をはたすべき存在理由をみずから否定する方向に突き進んでいた。74年度に「民営賃貸用特定分譲住宅」制度が実施され、特定分譲住宅は給与用持分と民営賃貸用持分に区分された。
 1974年度に民賃持分がはじまると、これを契機に給与用の建設は急速に減少し、民賃用が際立って増大した。74~79年度の6年間に民賃住宅が計47,375戸、以後87年までは年間6,000~9,000戸のペースで建設されたのにたいし、給与用ははこの間7,905戸、以降減少していった。そこで公団は新たな困難をかかえることになる。
 民賃住宅実務について会計検査院の81年度および87年度の報告は、概要つぎのような問題点を指摘していた。

 公団は公団住宅を81年度までに2,445件65,544戸を建設し、公団総戸数の36、8%に通し、賃貸および分譲住宅と並ぶものとなっており、近年、民賃住宅の伸びは著しく、割賦金の総額が急増している。
 ところが民賃住宅割賦金の償還状況を検査してみると、滞納率は住宅12・9%、施設28.0%、計17.7%ときわめて高い。毎月1回徴収することにしている割賦金の住宅約259億円、施設121.4億円のうち未収金はそれぞれ33、7億円、34億円にのぼっている。滞納額にかかわる遅延利息相当額は8・7億円に達し、1契約につき12回分以上滞納しているものが104件51.5億円、未収額の76.1%を占める。
 12回以上滞納の態様は、①貸家経営の不振(入居者が少ない、低賃料で貸す)、②施設経営の不振(借り手がない)、③賃料収入金の他事業への流用、④賃料収入金の借入金返済への充当(土地購入資金など金融機関からの借入金返済)、⑤譲受人の不誠実、⑥その他、に分類され、入居者の賃料滞納、居住環境の悪化による入居者の退去、管理人による賃料収入金の横領、第三者のための保証債務の履行など種々の理由による。

 このような事態を生じさせた公団の事務処理について会計検査院は、(ア)民賃住宅の譲受申込みと償還計画にたいする審査、需要見通し、予定賃料の設定への考慮の不十分さ、(イ)滞納事案についての支払い催告の処理が総じて緩慢、不適切と断じ、公団総裁に厳正な指導監督の徹底を求めている。
 87年報告は、民賃事業者が制度の趣旨、定められた条件に違反して賃貸している事例を指摘し、公団に防止措置を求めた。主な違反は、賃借人から規定の額を超える敷金、とってはいけない礼金、更新料の受領である。

 公団は自らすべきでない「営利」事業によって財務を悪化させてきた実例の一つである。
 以上、賃貸住宅と、賃貸用特定分譲をふくむ分譲住宅の建設戸数を年度別にみると、1976年度をさかいに賃分は逆転し、分譲は賃貸を大きく上回わり、年間2万から5万戸あった賃貸住宅は、とくに79~81年度、2、3千戸台にまで激減し、企業向け分譲は賃貸の10倍にも膨らんだ。この逆転は、バブル崩壊後の1994年度までつづいた。賃貸持分と分譲住宅の建設は、2004年の都市再生機構への改組によって停止に向かった。
 1955~96年度における住宅建設の実績をみると、総戸数は145.9万戸、うち賃貸住宅が78.2万戸(団地53.1万戸、一般市街地6.5万戸、面開発市街地18・6万戸)、分譲住宅29.8万戸、企業用の特定分譲(民営賃貸用・給与用)37.9万戸、計677万戸と、分譲は全体の46%を占めた。1955~88年度の年度別建設状況を図示しておく。


『検証 公団居住60年』 東信堂

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