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コーセーだから №46 [雑木林の四季]

五十歳創業の哲学  7

                                (株)コーセーOB  北原保

〝先手必勝〟の売り込み/小売店に絶対の信用

コーセー会をひろめる

 経営者若返りの第一号として世間で騒がれた紡績から化粧品までの鐘紡の伊藤淳二社長は資本金百28億円の大会社を武藤前社長から引きうけた新進の経営者である。コーセー化粧品の小林孝三郎社長に比べると、資本といい年齢といい対象的な経営者である。その伊藤社長が挨拶にこられて同行の重役が、開口一番こういった。
 「小林社長の小売店への信用には頭が下がりました。うちがいくら小売店に金を使っても骨が折れました」
 カネボウの化粧品部門は、資生堂につぐ実績を持っており、それを総括する担当重役が北海道の化粧品小売店を集めて挨拶したとき、北海道コーセー会の会長に「コーセーの化粧品ばかり売らないでカネボウももっと売ってくれ」と頼んだ。ところが、会長は「こればかりは私にいわれてもしょうがない。うちの親父とコーセーの社長の関係があってどうしようもないんですよ」と笑っていたという。その重役は「いや、社長の信用にはおどろきましたな」と小林社長と小売店とのつながりの深さに驚いた。
 コーセー会がはじめて東京で旗上げしたのが22年12月のこと。翌年6月には六大都市に生まれ、だんだん各県ごとにコーセー会がひろがった。今では全国6000店が加盟。
 「コーセー協約販売組織という制度が基礎になるわけなんですが、これはメーカーと小売店との直接販売というタテの関係と小売店同士の横の関係がコーセー会という組織なんです。当時まだどこもやっていませんでしたよ」
 当時、小林社長はコーセーという名もない化粧品を売り込むには先手必勝と考えた。戦前、高橋東洋堂時代に「アイデアル会」を組織して販売で成功した実績もあった。
 「あれは大正10年ごろでしたね。東洋堂のセールスをやっているとき、東京でドイツのモンドという水白粉の会社がモンド会という小売店の会をつくり、当時の乱売時代に定価販売をやっていたんです。それでこれはいい手だと思って早速はじめたのがアイデアル会。乱売しない共存共栄の組織というわけですよ」
 〝ころんでもタダでは起きない〟というのは小林孝三郎氏のことかもしれぬ。その手で再度、コーセー会を組織した。
 コーセー会の会費は、小売店が出資した協約金5000円につける利息を小売店が会費として出し、本舗が別途に一割を寄付する。「協約金5000円を出したかわりに5000円分の商品が毎月配給になるから小売店は歓迎した。なんせコーセーから公定価格で5000円分の化粧品をいただくと1ヵ月で5000円もうかる時代。そのころポマードが公定価格で36円が2倍3倍に売れた。
 「売り手市場だから、商品さえ生産すればメーカーも小売店ももうかる。共存共栄は理屈じゃなくて、具体的な事実で示したのだから、小売店にはよろこばれましたよ」
 大手やシニセの化粧品メーカーがぼんやりしているうちに、小林社長は名もなきコーセー会を天下にひろめた。
 当時の小林社長の一日は、朝6時にはじまる。起きると誰もいない一階の工場に降りて、クリームを入れたビンのキャップをする。すると朝起きた社員たちが「おいおい、社長があそこでやっているぞ」と集まって手伝いはじめる。「とにかく、40数人の従業員じゃ品物が間に合わないんです。工場の生産能力は時間をかせがなきゃしょうがない状況でしたからね」、化粧品の能書をたたんで入れるのは、その昔、東洋堂時代にきたえた腕で、女子従業員よりずっと早いし原料の仕入から経理までやるし、ヒマがあるとお得意さんをまわってセールスもやる。何から何まで従業員は社長にかなわない。陣頭指揮とあって、従業員は悲鳴をあげることたびたび。そこには小僧時代からの小林孝三郎氏の体験が生きている。
                                                    (昭和44年10月14日付)

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神戸コーセー会(1951年)コーセー会はほぼ都道府県ごとに結成された
コーセー会に全て参加することが小林孝三郎会長の大切な年中行事の一つでもあった

*当時は終戦まもない頃で食糧事情も厳しかったため、原則として男性の独身社員は寮住まいだった。食事のめんどうは奥様のきん夫人がみていた。昭和27年に北区堀船(現在のコーセー美容専門学校の場所)に購入した割烹旅館だった建物を独身寮とするまで、自宅や会社の二階の一部を寮としていた。

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