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私の中の一期一会 №179 [雑木林の四季]

      カリスマ経営者カルロス・ゴーン前会長の逮捕は,日産のクーデターなのか
        ~マクロン大統領が安倍首相に首脳会談を要請、3社連合はどうなる~

               アナウンサー&キャスター  藤田和弘

 東京地検特捜部は19日、日産自動車のカルロス・ゴーン会長(64)を金融商品取締法違反の疑いで逮捕した。罪状は有価証券報告書の虚偽記載である。
 新聞の報道によれば、“ゴーン会長は2011年3月期から15年3月期までの5年間に役員報酬約99億9800万円を得ていたのに、有価証券報告書には約48億8700万円と少なく記載して関東財務局に提出していた。
 共に逮捕された腹心のグレッグ・ケリー代表取締役(62)と共謀して、意図的に過少申告した疑いが持たれている。隠したとされる金額は約50億円に及ぶというから開いた口が塞がらない。
 19日夜に記者会見した日産の西川(さいかわ)広人社長は、「内部通報に基づいて数カ月にわたって社内調査を行ってきた結果、逮捕容疑になった“役員報酬の虚偽記載”の他、“私的目的での投資資金の支出”、“私的な経費支出”が確認されたので、東京地検に情報を提供した」と報道陣に説明した。
 日産自動車は11月22日に臨時取締役会を開き、明らかになった不正を理由にカルロス・ゴーン氏の会長と代表取締役の解任を全会一致で決議したと発表した。グレッグ・ケリー氏も代表取締役の職を解かれている。
三社同盟の一角、三菱自動車も26日の臨時取締役会で、ゴーン氏の会長職を解任している。
 ルノーの筆頭株主でもあるフランス政府は25日、ルメール経済相が「フランス国内では違法行為は確認されていない。不正の証拠や情報が日産からもたらされていない。明確な証拠がない限り“推定無罪の原則”が働く。仏ルノーの会長を解任するつもりはない」という考えを示した。
 元東京地検検事で弁護士の郷原信郎氏は「検察当局が具体的な中身を明らかにしていないため事実が判然としないのが現状だ。断片的な情報や憶測が錯綜して、日本の報道が迷走を続けているのはそのためだ」と語っている。
 ゴーン会長の逮捕から今日30日で12日が経過したが、ゴーン容疑者に関するニュースが流れない日は一日もない。
 それほど、世界的自動車メーカーのトップが逮捕された事件の衝撃が大きい訳だが、ゴーン容疑者らが起訴されるかどうかが、未だにハッキリしていないのは気になるところだ。
 アメリカのウォールストリート・ジャーナルは27日の社説で「これは宗教裁判だ」と批判する記事を書いている。
 日本の法律では、東京地検によるゴーン容疑者の取り調べに弁護士は同席出来ない。
 疑惑が次々メディアにリークされる中、ゴーン会長は一方的に企業のトップを解任されてしまった。
 検察は捜査の透明性を高め、ゴーン前会長に自らを弁護する機会を与えなければ、“この出来事は日本経済の汚点として残る”だろうと書いている。
 フランスの経済紙は電子版で、「フランスでは日本が仕掛けたゴーン会長追い落としのクーデターではないか」という見方が強いと伝えている。
 英国BBCなどは「逮捕、拘留、解任は冷静に計画された“悪意ある攻撃”ではないのか」という声まで伝えている。c
 イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙も“陰謀説が駆け巡っている”という見出しつきで「逮捕を取り巻く状況が不透明だ。ゴーン容疑者の主張が全く報じらていないのはおかしい」ど逮捕の背景に疑問を投げかけた。
 レバノンの日本駐在大使は、ゴーン容疑者が拘留されている東京拘置所を28日に訪れゴーン容疑者と接見している。駐日大使は「全てにおいて無実だ。健康状態はとても良い」と報道陣に語ったという。
 これまでの調べで、カルロス・ゴーン容疑者は、自身の退職後の報酬の支払いを確認する文書を作成していたことが分かった。
 前会長は調べに対し、文書の存在を認めつつ、「サインはしておらず、将来の支払いも確定したものではない。有価証券報告書に記載する義務はなかった」と逮捕容疑の一部を否定している模様だ。
 日産とゴーン前会長の姉が、実体のないアドバイザリー業務契約を結んで、年に10万ドルが支給されたとされる点については「正当な理由がある」と説明しているという。 アルゼンチンのブエノスアイレスで30日から開かれる主要20カ国首脳会議(G20)に合わせ、フランスのマクロン大統領が安倍首相に首脳会談を要請していることが分かった。
 仏経済紙レゼコーが伝えたものだが、会談では日産、仏ルノー、三菱自動車の3社連合の関係を巡って意見を交換することになるらしい。
 フランスのルメール経済相はパリで世耕経産相と会談した際、ルノーと日産の資本関係について「現状維持が望ましい」との考えで一致したと述べている。
 両社は現在、ルノーが日産の株を43.4%、日産がルノーの株を15%持ち合っている。ルノーには議決権があるが、日産にはない。
 この不平等を日産は見直したいのだが、ルノーは現状維持を主張して譲りそうもない。
 カルロス・ゴーン前会長は1999年に多額の負債を抱えて“倒産寸前だ”と言われた日産自動車に「再建請負人」としてルノーから送り込まれてきた。
 全従業員の14%に当たる2万1000人のリストラを断行、国内5工場の閉鎖、部品メーカーに値下げを迫るなど「コストカッター」として剛腕を振るった。その結果日産の業績はV字回復したのである。
 2005年にはルノーの社長兼CEOにも就任し、日仏の大手自動車メーカーのトップを兼務するまでになった。
 西川社長は、こうした日産への貢献を認めつつ「非常に注意しなければいけない権力構造だった」とゴーン氏に権力が集中し過ぎていたことを反省点として挙ていることを記者会見で語っていた。
 20年近くに及ぶ“カリスマへの権力集中”で、弊害が如実に表れていたのは“役員人事”だという。
 ゴーン容疑者の不正解明でカギを握るのは腹心といわれてきたグレッグ・ケリー容疑者だが、ケリー代表取締役が何をしていたかを知る人は日産社内にも少ない。米国在住のままで、日産本社に出社することは殆どなかったからだ。
 最近のゴーン会長も、日産本社への出勤頻度は減っていて1~2か月に1度程度だったという。
 17年に発覚した不正検査問題でも西川社長任せで自ら矢面に立つことはなかった。
 ゴーン前会長逮捕の背景には、こうしたカリスマの劣化(?)と社内統治での不信感が増したことが、「追放」につながったと見られている。 
 ゴーンなきあと、ルノーと日産の関係がどうなっていくのかが一番の関心事なることは間違いない。
 ルノーが日産に43.4%出資している以上、日産の思惑通りに話しが進むとは限らない。
 マクロン大統領と安倍首相の首脳会談がどうなるかに注目してみたい。
 
 

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笠井康宏

藤田さん、こんばんは。ゴーン逮捕は当然だと思います。独裁者は必ず滅びることが証明されました。こんな奴に金をピンはねされるなら、工場で汗水流して働いている人達に還元させるべきです。大阪のホンダカーズがゴーン逮捕を喜ぶ見出しを出して炎上していましたが、なんともガキっぽいと思いました。明日はわが身ですよ。
by 笠井康宏 (2018-12-10 01:53) 

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