猿若句会秀句選 №71 [ことだま五七五]
猿若句会特選句集 71 (2017年3月11日)
猿若句会会亭 中村 信
池面より水かげろうや春障子 千田加代子
青空へ貰はれてゆくしゃぼん玉 伊藤 理
娑婆気の抜けたる同士目刺酒 丸本 武
故郷へ春のいぶきを同封す 佐竹茂市郎
古池や亀鳴く噂は嘘らしい 中村呆信
白雲の流るる空の余寒かな 高橋 均
◆猿若句会三月例会の特選句集です。例によって一句だけの短評から始めます。
[短評] [池面より水かげろうや春障子 加代子] この句を特選に選らんだ一人なのですが、短評するにあたって困りました。実は当日の合評会でも話題になったのです。「水かげろう」とは何なのでしょう。皆でいくつかの辞書にあたってみたのですが見当たりません。しかしここでは「水かげろうや」と、切字まで使われています。とりあえず句意はどう云うことなのだろうとなった結果。「池の表面より陽炎のようなものが立ち上っている、その揺らめきが四阿の春障子に映っている、春の一状景として感嘆して見た」これは作者を含めて納得したものでした。俳句としてみると、佳句であり了承です。しかし国語(日本語)としてみると「水かげろう」の単語が不明なので、解釈が成り立ちません。会員には国語学者もおりませんし、「水かげろう」を造語として認めて先に進みました。席題「池」での出句ですので推敲不足は否めません。いずれにしても作者・選者ともに深く検討してみたい句として保留になりました。
後日の調べですが、道路や野原だけでなく、水たまり等でおこる同様な現象も広意では「陽炎」であり、池面にゆらめくのはもちろん「かげろう」だけで良かったようです。とすると、また別の問題がおこります。推敲の結果、造語はせずに作意通りの句が出来たとすると、「陽炎」と「春障子」が季重りになってしまいます。造語の可否・是非の問題は、長くなりますので別の機会に譲ることにします。
◆句会での特選以外の秀作・佳作については中村信のホームページ《あ》[ http://saruwakakukai.web.fc2.com]をご覧ください。(ただし、該当欄が一時的に更新不能のため、同「掲示板」投稿欄にて代替しています)
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