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高畠学 №63 [文化としての「環境日本学」]

環境保護には知的エリートが必要 2

                      中国共産党機関紙「光明日報」記者  馮 水鉾 

 中国には多くの知的エリートがいるが、そのほとんどが現実主義の精神に乏しく、田畑の調査、時代に参与する精神、公共のために問題を解決する精神が欠如し、農村であろうと都会であろうと、一時的居住であろうと定住であろうと、常に、自分自身と時代・地域・事柄を切り離し、小さな影響でもそれを受けることを恐れ、時代の渦に巻き込まれることを恐れ、あらゆる事柄の当事者・参与者となることを恐れる。自分に関係のあることに関わりたがらず、自分に関係のないことには更に関わろうとしない。すばらしい現象を見ても関わらず、不公平なことを見ても首を突っ込みたがらない。総じて言うと、自分の手を汚さず、時代から遠く離れ、自然と隔絶するということが、私たち知的エリートの除き去ることのできない遺伝子である。

 時に、とてもおかしいと考えることがある。大学は公共のものであり、研究所も図書館も学術的刊行物も公共のものであるというように、社会はこれほど多くの資金を使って公共事業を行っているのだから、知識と知恵を十分に集結させる権利があり、その能力を活用してそれらの公共資源を人間の身に投入することで〝公共知識エリート〟をつくり出すべきである。残念ながら今日の中国では、実際の知的エリートは知識を身に着けた後、かえって利己的に、そして萎縮し閉鎖的になり、他者に背を向けてしまっているのである。
 著名な環境保護作家・徐剛が書いた『梁啓超伝』の中で、彼のひとつの思想に、「なぜ彼と同じ時代の海外留学から国に帰ってきた人たちは、中華民族の運命が強烈に表現されることに注目しないのか? なぜ勇敢に革命の宣伝者や指導者になろうとしないのだろうか? 〝梁啓超〃 のように〝地元のために尽くす″という、国家や民族の運命のために奔走し力の限りを尽くすことがあるのだろうか?」というものである。梁啓超は当時、〃海外で学び国に戻ったエリート″として金を稼ぐことに忙しかった。近年の〝海外で学び国に戻ったエリート″もほぼこのような特徴があり、当然ながら彼らは以前と比較し非常に満ち足りている。普遍的にこのような考えが全ての知的エリートに広がった。破壊された環境を代弁するような知的エリートは少なく、困っている民衆のために奔走するような知的エリートも少ない。自分の身や利益を省みず、自然のための公共事業や社会のための公共事業に力を注ぐ知的エリートがどれだけいるだろうか。全く参与しないというのは不可能なことであり、知識の道義であろうと、個人の良心からであろうと実際関わらざるを得ない。しかし参与が多くなることでの面倒を嫌い、更に多く参与することで消耗することを懸念する。また、あたりにはこれほど多くの休養をとれる温室があり、リラックスして眠ることのできる温床があり、多くの賞賛の言葉を受け、甘い蜜を吸うことができ、平穏な故郷で空想をめぐらすことができる。このように、自然を対岸の火として眺め、一山離れたところに牛を放ち、すだれを隔ててお見合いをし、靴の上から足を掻く、こうして自分の身の安全を守るのである。

 知的エリートの〝公共性″の欠如は、恐らく中国の環境保全事業の促進を難しくする重要な原因の一つである。彼らの発言が必要な時、彼らは発言せず、或いは悪人の手先になって悪事を働き、悪人を手助け、悪事を働く。一方で専門家の看板を掲げ、人としての良心に背いて自らの身を立てる。

 水杉(メタセコイア) - 星寛治先生及び日本の友人へ

 二つ、三つ、四つ人類の村落の間に
 空が大地と情感を交わす処に
 硬い岩が海へ流される前に
 貴方の六〇年間で醸し出した汁液を人々が撒き散らした
 そして、この大地に存在するあらゆる柔らかい成長と繋がった
 一緒に繋げば遥かに我々を超えてゆく
 雀に庇護を与え、蛍の幽かな光を揺らして
 神の翼下にかれらの棲家を造り
 烏たちは戦を止めた
 この世に常にこのような樹があり
 他所の樹と一緒に立ち並びたい
 この世に常にこのような樹があり
 人類が誕生する前を奔走し、人類が絶滅した後に枯れてゆく
 この世に常にこのような樹があり
 割れ裂けた大地をしっかりと縫い合う
 この世に常にこのような樹があり
 化石のように強き信念を抱きぬく
 この世に常にこのような樹があり
 命で家を支え、また傍で守り続ける
 この世に常にこのような樹があり
 行き先にその根を留めておく
   二〇〇八年六月二八日 日本東京にて  馮 水鉾 

『高畠学』 藤原書店


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