SSブログ

ウルトラマン50年 №2 [雑木林の四季]

「ウルトラマン50年」  第二回             

                              映画監督  飯島敏宏+千束北男

           (一)?ウルトラマンをご存知ですか?

 いくらマニア向けの随筆ではないと言いながら、ずいぶん失礼な質問じゃないか、とお叱りを受けるかも知れませんが、まあ、お読みください。

 ウルトラマンが誕生して50年、この文章を打っている2016年5月現在、円谷プロが生み出した純正ウルトラマンは、実に、41体あるのです。純正でないウルトラマンとは、円谷プロダクションが創ったり認証したりしていない、いわゆる海賊版ウルトラマンのことです。
 あなたが、何年生まれで、どのウルトラマンをご存知なのか、ひと口にウルトラマンと言いましても、この50年にわたって、一体一体が、すべて「別物」として登録されているので、円谷プロの公称では41体を総じてウルトラファミリーと称してはいるものの、それぞれが、生まれ、育ち、知力、能力、武器その他が、原則的には、まったく違う個体であるはずですから、何時、あなたが何歳の時にご覧になったウルトラマンなのか、つまり、あなたが、「ウルトラマン」と認識されているのが、どのウルトラマンなのかによって、ウルトラマンが違うという訳です。“ウルトラファミリー”は、実は、全く血のつながらない個体も含んだ、不思議な、混成ファミリーなのです。
 最近は、新シリーズがスタートするたびに、目まぐるしく新個体?が登場する上に、オンエアされるチャンネルもいろいろ変わるので、円谷プロが認知する純正ウルトラマンであっても、中には、私の眼に触れる間もなく何処かに飛び去ってしまったウルトラマンもいるという有様で、本来がウルトラマニアでない私では、とても、フォロー出来なくなってしまったのです。

 つい最近封切られた劇場映画「ウルトラマンⅩ・きたぞ!われらのウルトラマン」もそうですが、いうなれば、最近のウルトラマンは、M78星雲からの宇宙人ではなく、主人公の所持する特殊なメカを使って呼び寄せるか、あるいは、メカの中に死蔵されているウルトラマンを、メカを作動させて巨大ウルトラマン化して、ユナイト(と称して乗り込む)するようになってしまいました。私としては、行動の意思決定が、一方的に人間側にあるのであれば、ウルトラマンは、単にバトルマシーンではないかと思う次第です。私が、あえてウルトラマンを何体と、聞き慣れない数え方にした理由は、そこにあるのです。生命の内在する宇宙人であるウルトラマンと、マシーンと呼ぶべきウルトラマンが混在してしまったからです。
 そもそも、原初のウルトラマンは、M78星雲にある「光の国」から飛来した宇宙人だったはずなのですが、最近のものは、マジンガーZや、機動戦士ガンダム、あるいは、仮面ライダーなどとあまり変わらない、戦士とか、あるいは巨大戦闘マシーンと呼ぶべきものになってしまったのです。ですから、ひと口に「ウルトラマン」と申し上げても、ウルトラマンと出会った年齢によって「あなたのウルトラマン」は、それぞれ違うということなのです。

 それ程遠くない過去にウルトラマンと出逢った若い読者の方々は、多分、私とは違う評価をされると思いますが、私のまったく個人的な見解として申し上げると、そのシリーズの主人公である人間の持つ機器から現れて、主人公の青年が乗り込んで(一体化)行動して、「スターウオーズ」の主人公らが使った、光剣(蛍光を放つ熱剣)まで使って闘うウルトラマンとなると・・・これはもう、良し悪しは別として、ウルトラマンと呼んではいけない別のヒーローではなかろうかと思ってしまうのですが・・・いかがでしょう。
 
 何はともあれ、「怪奇大作戦」以降、円谷プロから遠ざかっていた私が、ウルトラの世界に呼び出された時は、その都度、円谷プロの制作担当プロデューサーが、ウルトラマンを「初心に帰って創りたい」と思った時だったので、私の手掛けたどのウルトラマンもすべて、バトルマシーンではなく、初心の通り「光の国」からやってきたウルトラマン、つまり全部が、生命を持った宇宙人のウルトラマンばかりだったわけです。
 実のところ、決して私が、確固たる節操と高邁な信念でそうしたわけではなく、私が手掛けてしまうと、頭の中が自然にリセットしてしまって、初代ウルトラマンのDNAが甦ってしまったのかも知れません。
 まあそんなわけで、私がこの欄でウルトラマンとしてとりあげるのは、私が脚本家あるいは監督として関わった、初代のウルトラマン、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンコスモス(劇場版)、ウルトラマンマックスの、5人と呼んでいい、「光の国」からやってきた宇宙人のウルトラマンとご承知いただければ幸いです。

 敢えて、これは私見ですが、と申し上げるのは、他のウルトラマンを生み出した監督、脚本家、その他スタッフへの中傷と受け取られると甚だ心外だからです。単なる分類とご承知おきください。念のために・・・

 さて、改めて、あなたは、どのウルトラマンをご存知ですか?

           (二)?ウルトラマンは何処から来たのでしょうか?

 「光の国から、ぼくらのために、きたぞ、われらのウルトラマン~」と唄われた最初の主題歌通り、ウルトラマンは、M78星雲の惑星「光の国」から、僕らの地球の平和、そして宇宙の平和を守るために、やってきた宇宙人なのです。
いままで、まったく「ウルトラマン」を御覧になったことのない読者のために、とりあえず、「ウルトラマンとは」の、ベリベリショートなガイダンスをしますと、こんなことになります。

 第一話「ウルトラ作戦第一号」で、宇宙空間にある怪獣墓場から逃亡した凶悪な宇宙怪獣ベムラーの乗った宇宙カプセルを追ってきたウルトラマンのカプセルが、偶々警戒飛行中だった科学特捜隊員ハヤタのジェットビートル機と衝突して、ハヤタを死なせてしまった代償に、ウルトラマンが自らの命をハヤタに提供(憑依)して、危急の際にハヤタがβカプセルを掲げてフラッシュビームを焚くことによって、太陽の光エネルギーを浴びつつ巨大ウルトラマンとして登場したのですから、ウルトラマン講座的には、ウルトラマンが何処から来たのかという設問の正解は、M78星雲に存在する「光の国」から来た、ということになります。

 「なんだ、そんなことは先刻承知・・・」というなかれ・・・ここからが、私がこの欄を書かせて頂いている由縁なのですから。まあ、お読みください・・・

 私の答えは、「ウルトラマンは、沖縄からやってきた・・・」なのです。
 つまり、M78星雲、光の国とは、沖縄の人々が信じる海の彼方に或る豊穣の地、ニライカナイであるというものなのです。
 問の採点者は、私の答には恐らく×をつけることでしょう。これを牽強付会、と言う勿れ、これは、決していま私が唐突に言い出した奇矯な答えではありません。マニアの方々が疾うにご存知のように、私と共に「ウルトラマン」「ウルトラセブン」を撮った監督の一人、実相寺昭雄君が著した本の中でも、彼によって、同じように唱えられているのです。「ウルトラマンは、沖縄からやってきた・・・」と。
 キイワードは、「ウルトラマン」の企画立案者である、当時円谷英二特技監督の(株)円谷プロダクション企画文芸室長を勤めていた、金城哲夫(以下敬称略)です。

 今から、15年ほど前、私が病後(胃部全摘)に思い立って制作した記録ビデオで「ウルトラの揺り籠」(デジタルウルトラプロジェクト作品)という、「ウルトラQ」「ウルトラマン」に関わった方々のインタビュー記録作品があります。DVD化されて発売されていますから、ご覧いただいたかもしれませんが、その際に、金城哲夫をフューチャ―するために、彼の足跡を辿って沖縄を訪ねたのです。
 「揺り籠」は、ウルトラマン誕生当時「ウルトラマン」のフジ・アキコ隊員役だけでなく、「ウルトラQ」の江戸川由利子役も勤めた女優桜井浩子さんにインタビューアーをお願いして、「ウルトラQ」「ウルトラマン」誕生に関わった人たちの証言を集めたものですが、その中でも、ウルトラマンの企画原案立案者、当時(株)円谷特技プロダクションの企画文芸室長の金城哲夫が「光の国」としたものは、彼の生まれ故郷沖縄の多くの人々が今でも信じる、波の彼方に或るという豊穣の地、祈ることによって恵みを与えてくれるという存在、ニライカナイなのではないか、という考察をしているのです。
 ニライカナイとは、ある種の理想郷とも言える存在らしいのですが、実際に、金城哲夫が生まれ、育ち、遊んだ沖縄の地を辿ってみて、その時、初めて、彼の心の中に描かれていた「光の国」なるものの一端を理解したのです。日本国への復帰以前の沖縄から日本本土に渡ってきて、本土と沖縄双方の民意に触れた彼ならではの平和への希求のほんの一端を、ようやく知ることが出来たのです。
 50年前、初代ウルトラマン撮影当時に、金ちゃん(金城哲夫)の口から、ニライカナイという不思議な響きの言葉を聞いたことが確かにありました。でも、当時の私は、沖縄を、あの太平洋戦争の敗戦間際に、上陸した米軍との激しい戦闘が行われた遠い遠い島々という感覚でしか、理解していませんでした。しかし、実際に金ちゃんが遊んだ百名ビーチを訪ね、斎場御嶽(うたき)御嶽で祷り、いわゆる飛び型のウルトラマン・フィギュアを万座毛近くの真栄田岬の突端から海に向けて飛ばしてみて、「ああ、確かにこの何処までも碧いサンゴ礁の海の彼方に、金ちゃんが言ったニライカナイは、あるに違いない・・・」と思ったのです。金ちゃんの「光の国」は、撮影当時私が解釈していた「理想の星」という概念とは一筋違う願いのこもったものだったのだ、と、理解したのです。
 沖縄、金城哲夫、ニライカナイ 光の国・・・これをキイワードにして、ここから先、更につぶさにウルトラマンを解明して行きたいと思います・・・

                           おたのしみに


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0