地球千鳥足 №38

結納には花嫁の体重の5~10％の金を！～アラブ首長国連邦～

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　グローバル教育者・小川地球村塾塾長　　小川彩子

砂漠の中に出現した近代都市
　アブダビ、ドバイ、シャルジャ、アジマン、フジャイラ等、7つの首長国が１国、アラブ首長国連邦として1971年に独立した。地震無し、台風無し、と日本人には羨ましい国だ。首長国により法律は異なるとか。例えばドバイはアルコールOK、シャルジャでは鞭打ちの刑だ。シャルジャは7つの首長国で最も安全、酔っ払い運転は無く水着は不可という。ビーチ続きだがシャルジャからアジマンに入ると水着が見られる。すぐ北にアラビア湾があるが、この湾はイランではペルシャ湾と呼ぶ。この国は世界7番目の石油埋蔵国となり、首都はアブダビだ。アブダビは緑が多く、ドバイはアブダビより小さい街だが港が2つ、クリークもあり高層ビルが多い。ビルの狭間にモスクが威容を誇示しミナレットが天を突く。6~30年前まで砂漠だった首長国にデザイン競うビル群が林立する現況は地下の埋蔵石油が突如大都会を生んだ趣だ。有名なビルは超有名設計者に依頼して出来た。奇をてらうビルもあるが全体的に渋めの色調でセンスが良い。我々は世界一の超高層ビル、バージュ・ハリファ（地上828m）まで行き、展望台「At the Top」への切符購入を試みたが当日券は売り切れ、翌日券も早朝の4時－7時だけ。大抵の人はインターネットで予約してくるのだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　地上828ｍ、世界一の高層ビル、バージュ・ハリファ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

ゴールドの国は出稼ぎ王国　　
　ゴールドの国、アラブ。市場はスークというがゴールド・スークは目も眩むばかりに輝いて観光客を呼び込む。ゴールドは世界中から買いにくるとか。治安は良い。最近は日本でもアラブ首長国連邦に出かけるのがブームらしく、諸々のスークが日本女性で賑わっている。ペンダントにアラビア語で名前を彫ってもらうとか。現地の女性は結納金、マフルとして金－板状でもアクセサリーでもOK－を体重の5~10％頂くのだそうだ。時には高いマフルを要求する親もあり、結婚を諦める男性もいるとか。最近の不況はこの国にも影響を及ぼし、工事中のビルが放置されたケースを見かけた。にもかかわらず出稼ぎ人の多さ、出身国の多様さに驚いた。実際に話をした人の出身国はフィリピンやインドが目立ったが、ネパール、バングラデシュ、パキスタン、エチオピア、エジプト等。「1年後に本国に帰ります」「お金がXXドル貯まったら帰国します」「妻も子も本国にいるので毎月送金しています」、「国の政治が安定したら帰国します」等、タクシーの運転手やホテルの従業員が話した。我々夫婦は安宿に泊まったが、朝食のバフェーでも隣の中級ホテルの夕食でも、ウェイターが次々と交代で食べ物を皿に取るサーヴィスに来た。我々が彼らの出身地のどの国の話でも出来るので暫くしゃべってはまた交代し、サーヴィスに来るのがおかしかった。

無人メトロの駅は巨大な貝殻
　ドバイに立派なメトロが走っている。3年半前に開通した世界最長の無人電車だ。2路線あり、市内では地下を、郊外では地上を走る。金曜日は礼拝の日、メトロも午後2時からなので要注意だ。渋い金色で流線型の巨大な貝殻を被せたようなメトロ駅はかつてアラビア湾の真珠採取でこの国が栄えたことを物語っているが、日本の真珠養殖の影響で打撃を受けたそうだ。国際都市らしく乗客は外国からの労働者が多い。我々はこのメトロをよく利用し、適当な駅で降りては街を散策した。バージュ・ハリファの真下まで行き、世界一だと評判のドバイ・モールに感嘆した。楽しみ上手の夫は到着直後にアラブ男性用民族衣装、カンドゥーラを購入し、街を闊歩した。お洒落なサングラスでアラブの金持ちに見えた。筆者も夫に合わせて手縫いのパキスタン衣装を纏った。服装の主が日本人と知ると現地人は喜んで握手してくれた。異文化民族衣装を楽しむ旅人は気楽なものだが、夫と父以外には髪の毛と肌を見せてはならない女性たちは目出し黒装束から解放されたくはないだろうか、と気をもむことしきりだった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　地上にあるメトロの駅

（アメリカ、Angle Press. Inc. 発行、Weekly Jangle 第160回、「結納には花嫁の体重の5~10%の金を！　～アラブ首長国連邦～」に修正を加えたもの）。