SSブログ

ペダルを踏んで風になる №37 [雑木林の四季]

中二病

      サイクリスト・バイクショップ「マングローブ・バイクス」店主  高橋慎治 

天気の良い日は春らしい日差しを感じるようになりましたね。
ただし、まだ朝晩と昼間の気温差が大きいですので体調管理は大切です。
この時期は春めいて嬉しくもあるのですが、花粉症の私はメタメタです・・・

pedaru37-1.jpg

 
                         ※私の実車ではなくイメージです。

さて、高橋少年が念願の【ROADMAN】を手に入れましたが、実はここからが自転車人生の始まりでした。
学校が終わると毎日真っ直ぐに帰宅して、愛車【ROADMAN】を引っ張り出します。
自宅を起点に西へ東へ、北へ南へ、道路標識を頼りにペダルを踏みます。
少しずつ自分の行動範囲が広がっていくことが楽しみになり、自分自身においても密かな自慢でした。
気ままなサイクリングも遠出をすると日が暮れてしまってナイトランになってしまうことも度々ありました。
そんな時は【ROADMAN】に装着している発電機とランプヘッドが一体になったブロックダイナモが車輪の回転から光を生み出し行き先を照らしてくれます。
当時は国道筋でも今ほど街灯が整備されておらず、街灯の谷間の真っ暗に感じるところもブロックダイナモの光を頼もしく思いました。
何度か暗い夜道を走っていると、色とりどりのランプで飾られた大型トラックに時々出くわします。
映画「トラック野郎」が流行っているときだったのでしょうか。
ピカピカと光るデコレーショントラックの華やかさは、とにかく目立ちます。
「あれなら暗い夜道も怖くないし、目立って安全だ!」ということで、私もデコレーションの材料調達にホームセンターの自転車用品売り場に直行です。
既に青や緑、赤、オレンジ色の発光部のミニライトがたくさん売っていて、どれにしようか迷うくらいでした。
まずは配線の簡単そうな前ハブ軸ナットで共締めする旗立てのような長さ15cmほどのポールタイプのライトを取り付けました。
ポールの部分はコイルスプリングになっていて多少の振動やブツケでも難なく、その先端に色付きプラスチックカバーのランプが付いています。
最初はブロックダイナモ側にポールライトを1本、しばらくしてして当然のように反対側も取り付けてダブルに。
ナイトランでは単純な白熱球の明かりに加えて青と緑の光が彩りを添えてくれます。
これならライトのための発電で重くなるダイナモでも、綺麗なカラーランプを見たいがために頑張ってペダルを踏み続けられます。
秋冬のサイクリングでも、帰路にライトを点灯したくてわざわざ時間をずらして出掛けたものです。

pedaru37-2.jpg

こんなことで喜んでいる訳ですから、当然ほかにも同じようなことをしている自転車乗りはいるものです。
「トラック野郎」のようなランプがたくさん付いたトラックを「デコトラ」と言うように、「トラック野郎」のような自転車を「デコチャリ」と呼ぶようになります。
その「デコチャリ」は車雑誌などでも取り上げられるようになり、私の【ROADMAN】のようなドロップハンドルの自転車ばかりか普段乗りのママチャリでもランプを買い足して自転車をデコレーションしていきました。
ランプの数を競ってくると、当然のように供給する電力の不足に直面します。
発電機一つではランプがキレイに全点灯しないのです。
お兄さんやお父さんが電気に詳しい方なら知恵を拝借出来ますが、私は電気に対して大した勉強もしていませんから「ダイナモ一つでランプ4個は点くけど5個はダメ・・・」とか、ランプの組み合わせのトライ・アンド・エラーを重ねたのです。

その後の展開は皆さん想像が付きますよね。
そうです、私の【ROADMAN】のシートステーには二つ目のダイナモ(発電機)が金具でガッチリと装着されて、後ろ向きに左右各1個(合計4個)の赤とオレンジのランプが光を放つ仕様になっていました。
日が沈んで夜になると前後の発電機を前後輪のタイヤサイドに押し付けて自慢げに走ります。
しかし、涼しい顔とは裏腹にペダルを踏み込む重さはさらに増し、気を抜くと走っている惰性がなくなってしまうほどです。
それでも、明るいキレイなランプの光を眺めたいがために登り坂でも必死に漕ぐのです。
皆さん、そろそろ気付きましたか?
私は自分の知らない間に自転車で負荷を掛けたトレーニングと同じことをしていたのです。
「デコチャリ」はその後、大人たちが本気になってデコトラ用の本物のランプを取り付けたり、電源にオートバイ用や自動車用のバッテリーを積んで走行時のダイナモの負荷を取り払ったり、カウリングやスポイラーなど自転車には過剰な装備を取り付けた「デコチャリ」に進化していきました。
大人に資金力を見せつけられては、少年たちの「デコチャリ」への興味は次第に薄れていきました。

そうなると中学生では年相応にオートバイや自動車に興味が向いていきます。
そんな思考は自分も例外ではありませんから、授業中に男子生徒でオートバイ雑誌の回し読みなどをしてたわいもない夢を膨らませていました。
当然、中学生の自分たちですから運転免許証は誰も持っていません。
おまけにオートバイを買うお金も当然ありませんから本当に妄想だったわけです。
そんな中、あるときオートバイ雑誌の記事の中に週末の峠道で走りを見せ合う(?)通称「ローリング族」の記事を目にします。
乗り物と言えば「スピード至上主義」的な要素が強いもので、昔も今も高出力・高性能なスペックは羨望の的です。
ただし、直線であれば誰でも恩恵に与れるハイスペックも峠道のようなところで速く滑らかに走らすためには運転者の技量が肝心です。
ある週末、同級生の興味のある連中と「ローリング族」のメッカである国道20号線沿いの峠道に朝から自転車で向かいます。
街中を過ぎて、国道は郊外の山間に分け入っていきます。
だんだんと道路の勾配がきつくなってきてペダルに立って漕がなくては進まなくなってきます。
途中、何台ものオートバイに追い抜かれました。
それも、ステーカーの張り込んであるフルフェイスヘルメットにボロボロのニーパッドの革ツナギを着たバイク乗りたちです。
そんなライダーたちのオートバイは、大概1度や2度の転倒を経験していそうな迫力のある車体に感じました。
ローリングのエリアは国道の峠の頂上から湖に下りる側のカーブの連続する区間です。
やっとの思いで峠の頂上に辿り着いた自分たちはオートバイの走ってくる車道ではなくガードレールで仕切られた歩道を通ってポイントに向かいます。
ガードレールにかぶりついて驚いたのは、転倒と接触スレスレに走るオートバイの姿でした。
中学男子のマンガの世界のような妄想が現実となって目の前で繰り広げられていることに大変興奮しました。
その後何度か誘い合ってローリング族を見に行きましたが、仲間は峠までの登り坂が嫌で足しげく自転車で通ったのは自分だけだったわけです。
峠道を週に何度も自転車で登って行きましたから当然登坂力も身に付いてきます。
山に登れば当然下り坂もありますし、何度も通る道ですから下り坂の走り方も慣れてきます。
あるとき意を決して下り坂で思い切り漕いでスピードを出してみました。
自分なりに緊張と快感と充実感を達成できたと思った瞬間、つむじ風のように一台の自転車に追い越されました。
自分的には頑張って漕いだスピードだったのですが、その自転車は下り坂で足を止めて惰性で下ることもなくペダリングを続けて速度を保ったまま視界から消えていきました。

「なんだぁ?あの自転車は?」

こうやって私の自転車に対する「きっかけ」も増えていくのです。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0