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台湾・高雄の緑陰で №32 [雑木林の四季]

台湾よいずこへ行く

                              在台湾・コラムニスト  何 聡明
 
 2012年も師走を迎えた。台湾にとって今年の一月は台湾人が総統選挙と国会議員選挙で又も外来の中国国民党に大敗を喫した年である。選挙公約では台湾経済の建て直しと、清廉政治を行うことを約束した馬英九はその約束の十分の一も果たせぬまま今日に至っている。物価は上昇を続け、失業者は増え続き、財政は悪化、経済は衰退、国防は弱体化、外交は今でも休止中である。だが、尖閣諸島の主権を主張する馬總統は台湾の東北方に位置する固有の島(澎佳嶼)に上陸、尖閣諸島の方向に向かって、「釣魚島は台湾の領土だ!」と叫んだのは噴飯ものであった。馬英九が確実に前進を続けているのは中国との交流だけである。馬氏に投票しなかった有権者はもとより、馬を全力支持し続けた多くの有権者やメヂヤまでが今では馬政府を痛烈に批判をしている。
 馬政府は全ての批判に対してお座なりの説明をしているが、本気で取り合っていないというのが一般民衆の見方である。近来公務員による汚職事件の頻発も手伝い、馬総統の支持率は史上最低の13%を記録したが、本人と幕僚達はそれに反論をしながらも、大して気にはしていないようである。何故だろうか?
 それは、中国国民党が既に中国共産党に台湾の未来を預けているからだと私は見る。馬英九が4年半前に総統に初当選以来取り続けている政策は野党から「傾中」だとも「親中」だとも指摘されているが、そのように甘いものではない。国防の弱体化は中国との軍事衝突を避ける為、外交の休止は自粛をして中国を刺激しない為、経済の不振、物価の上昇、失業者の増加、貧富差の拡大,国庫の負担を無視して義務教育の期間を米国並に12年に改制、徴兵制度を廃止して募兵(志願兵)制度へ改制等々は台湾人を貧困に追い込む戦略である。そして、中国共産党政府に財政と経済の救済に依存し、最終的には中国に統一される態勢をつくることにあるのだと私は考えている。
 馬は亡き父の遺言である「化独漸統」、即ち「台湾独立勢力を瓦解させ、逐次中国との統一を計れ」の忠実な信奉者である。馬は父が亡くなる前にも、自分の畢生の目標は中国との「終極統一」であると国民党幹部会議で表明した。勿論、選挙戦の時に彼は自分の目標をおくびにも出したことはない。馬英九のこの統一戦略は台湾併呑を憲法で明記している中国共産党政権と水面下で結ばれているに違いないのだ。魚心に水心である。
 馬政府の意図を知ってか、知らぬふりをしているのか、台湾の自主権を守るべき本土野党の対応は実に生ぬるい。総統就任満一年を経れば総統を罷免できると法律で定められているので、野党台連党が馬総統罷免の署名を始めているが、例え署名者が法定人数に達し、公民投票審議委員会の審議を経て公民投票が実現しても、結果的に総統の罷免が成立する可能性は極めて低い。一方、最大野党民進党は国是会議の開催を馬総統に求めているが、仮にそれが受け入れられても総統罷免が議題に上がる事はありえない。野党と反統一勢力はより積極的で果敢な行動を取らなければ、馬政府の統一戦略の前進を阻止できない。
 若し、台湾にも一縷の望みがあるとすれば、それは馬英九政府が米国の動きにも気を使っていることであろう。米国の動きは日米安保同盟の動きにも繋がる。本土野党と反統一派は固いスクラムを組み、米国会が国内法として立法した「台湾関係法」を米政府が尊重して、台湾人の意志に反して台湾が中国に併呑されることのないよう米国に強く求める努力を持続すべきである。その努力が米国の対中、対台政策にどれだけの影響を与えるかは予測できないが、民主自由主義陣営のリーダであると称されている米国とて、自国の国益が最優先であれば、台湾人が期待する結果を望むのは難しい。
 Quo vadis Formosa?


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