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ペダルを踏んで風になる №8 [雑木林の四季]

山道サイクリング

              サイクリスト・バイクショップ「マングローブ」店主  高橋慎治

自転車はスポーツとしてもホビーとしても本当に一年中楽しめます。
気候の良い春から暑い夏、残暑の残る初秋頃まではロードバイクなどで颯爽と心地良く風を切って走ることがサイクリングの醍醐味ですが、これからの冬本番を楽しむために山道サイクリングのことをお話しましょう。

冬は、太陽が高いところまで昇ってくれる昼間の時間帯になれば空気も多少暖かくなりますが、日の出ていない朝晩は当然寒いものです。
その冷たい空気の中を、風を切って走る行為自体が身体の冷えとともに更に寒さを助長してしまいます。
ですから、冬のサイクリングにおいて身体を冷やさずに運動強度を確保するためには、スピードが出なくて踏み込みの重い環境、すなわち抵抗の大きい車輪で低速でも負荷の大きい自転車でのサイクリングが相応しいと考えています。

それでは、冬の朝と夜では一般的にどちらが寒いでしょうか?
そうですね、放射冷却の起こる朝の方が圧倒的に寒いですよね。
加えて寝起きは体温が少し低い傾向が多いでしょうから、余計に寒さが凍みると思います。

では、朝よりマシな夜の寒さですが、山の中でも街道筋の峠道ではなく、木々の間を行く本当の山道=トレイルにヒントがあります。
冬の山の中は昼間の太陽熱を蓄えた木々からの温もりがシットリと残っています。
確実に、夜のトレイルは体感温度として「温もり」を感じるのです。
ただし断っておきますが、ここでいう山は高所ではなくて里山・裏山レベルのお話です。

ここでいうトレイルとは、すなわちオフロードですから、ロードバイクで走るのは程度にもよりますがリスクも多いですし、そもそも根本的に無理があります。
そこで、皆さんご承知のとおり【MTB=マウンテンバイク】の出番です。

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「マウンテンバイク」は世に生まれてから40年にも満たない新しいジャンルの自転車で、アメリカ人のヒッピー達がスクラップのオートバイから車輪やブレーキ、ハンドルバーなどをビーチクルーザーなどの街乗り自転車にくっつけて、各自が仕立てたオリジナルの自転車にて急斜面の山下りで競ったのが始まりとされています。
その後、量産品のマウンテンバイクが初めてアメリカで発売されたのが1981年ですから、一般にMTBとして広まって今年でやっと30年です。
そんなMTBの歴史を、私自身が草創期から眺めてこられたことは、自転車史において大変幸運なことだと思っています。

ところで、MTBが生まれる前の日本にはそんな自転車の楽しみ方が無かったかと言われると、山道を走っているサイクリストは実際のところ少なくありませんでした。
既に山岳サイクリングというジャンルの楽しみ方もあり、未舗装の峠道を征する乗り方を「パス・ハンティング」と呼んで、使われる自転車はタイヤの太いツーリング車から泥除けやキャリア、電装品など、自走で上れない山道を時には担ぐことも考慮して、走ることに支障のない部品を取っ払って軽量化をしました。
さらに、急な下り坂では乗車姿勢も前のめりになるため、ハンドルバーもドロップハンドルからストレートハンドルに交換をすることで腰を大きく後ろに引ける様にして重心の安定性を確保しました。
そうなんです、日本にもMTBが生まれる以前から「山自転車」と呼べる自転車【パス・ハンター】が存在していました。

後に日本でMTBがブームになったのは、ちょうどバブル景気の時代にシンクロします。
その時代、空前のアウトドアブームに牽引されて、スキーやスキューバダイビング、キャンプに4WD車と、外で仲間達とワイワイ騒ぐことがステイタスなことでした。
当然、流行に敏感な趣味人達は舶来のブランド物が大好きで、人と違ったものや人よりも良い物を求めてセンスのアンテナを高く広げてしていました。
そんなタイミングで海の向こうよりマウンテンバイクがやってきて、その新しいジャンルの自転車を街や野山で乗り回すことがファッション雑誌でも特集される程の流行の最先端だったのです。

おかげで当時はMTB愛好者の人口も増え、街では「マウンテンバイク専門店」が多く出現し、都内のおしゃれな街角にも流行の最先端ツールとしてマウンテンバイクが並びました。
さらに、スポーツとして捉えて本格的に山道に分け入るサイクリストも増え、週末は都市部近郊の里山などに大挙してマウンテンバイカーが押し寄せる状態になり、当然ハイカーとの摩擦や事故などによって結果的に多くの山道からマウンテンバイクは締め出されることとなります。

最近のノーブレーキ固定ギヤのピストバイクの問題も、ロードバイクの大集団での一般道走行も、結局は群集心理から来るモラルの欠如が原因で、個人一人なら判断のつく善悪がおろそかになっているのでしょう。
自転車が社会的に脚光を浴びれば、その影をほじくる勢力も頭をもたげます。
自転車を取り巻く環境の関心が日本の交通システムの改善に役立ってくれることを望みます。

さて、里山では、夏の間は下草が伸び、蚊やブヨ、スズメバチなど嫌な昆虫も多く、何より蒸し暑いことで敬遠してしまいますが、秋には木々の葉が色付き、冬の訪れと同じくして綺麗な落ち葉の絨毯で山道を覆ってくれます。
だからと言って、山深い険しい山道に挑む必要はありません。
近所の雑木林や裏山の獣道、池や湖の畔など、落ち葉の絨毯は身近なところで待っているかも知れません。
そのときには、やはりハイカーの立場を優先して下さい。
全く難しくはありません。
自転車から降車して、こちらから「こんにちは」って挨拶をすれば大概の摩擦は回避出来るはずです。

そこで、マウンテンバイカーとハイカーとの山行における共存について考えてみました。
ハイカーの方々の大半は、実は冬でも日の出前の早朝から山行に入ります。
もちろん、その意味は「日が短い」ということで、下山スケジュールにおいて行動が早いのです。
ここで、山道サイクリングをされる方は早朝からではなく、早くとも午前9時頃から山に入ることを提案します。
理由は簡単です。
ハイカーの方達との行動スケジュールを大幅にずらすことによって狭い山道での摩擦を回避することを目的とします。
山道で自転車が悪い印象を与えてしまうのは、ほとんどが下り坂でハイカーを追い抜く(降車厳守)ときのタイミングです。
ですから、ハイカーが下山してくる時間帯に頂上を目指して自転車を押し上げたり担いだりのタイミングであればハイカーを追い抜くことはありません。
当然、頂上到着は午後の時間になるでしょうが、慌てる必要はありません。
マウンテンバイクでの山道を下るスピードは、ハイカーの数倍の速度を稼ぐことが出来ます。
上手く段取りが進めば、下山したバス停で同じハイカーに「さようなら」のご挨拶が出来るかも知れませんね。
要の装備は、タイムスケジュールを夕方にずらしていますから、パンクや転倒などのアクシデントに備えてナイトランにも対応する高性能なライトの準備が必要です。
日が暮れてもライトさえあれば、山の「温もり」に抱かれてゆっくりとナイトトレイルランで無事に下山すればOKなのです。

街中の喧騒から離れ、ザクザクとMTBのペダルを踏んで、自分の昂った呼吸しか聞こえない世界に分け入ると、チョットだけ野生を取り戻したかの様に思えてくるかも知れませんね・・・

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【ツール缶】

「チェーンが伸びる」って知っていましたか?
知識として理解されても実際の「伸び」って確認したことが少ないと思います。
チェーンは自転車の駆動系の部品として欠かすことの出来ないものです。
チェーンの伸びは皆さんのどんな自転車でも進行しています。
係わってくる部品は、チェーンリング、スプロケット、Rディレーラープーリーですね。
とんでもなくチェーンが伸びてしまった場合は、係わっている部品が総取っ替えになってしまうので、ご注意くださいませ。


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