言葉あそび入門№9 [文芸美術の森]
言葉あそび入門 その9
ひと味違うダブルの尻取り(巻・壱)
コピーライター 多比羅 孝
お約束のとおり今回の言葉あそびは尻取りです。でも、スズメ→メダカ→カミナリ→リンゴ…といった、あのあどけない、懐かしいのと違って、ちょっとひねりのある≪ダブルの尻取り≫です。いくつか種類がありますが、その第一弾がこれから述べる「返り」の尻取りです
古くからある尻取りですから、ご存じの方も少なくないと思います。しかしこのブログ仲間との「共演」は初めてでしょうから、そのことを大切にしてお楽しみいただきたい……。
ということは、皆さんに作って頂き、それを発表して共に楽しもうという点については、いつものとおり、ということです。さて本番です。
第一部 返りの尻取り
◆たとえば≪「い」返りの尻取り≫といったら、次ぎのようなものです。
痛い→忙しい→池の鯉→戦(いくさ)は嫌い→石焼き芋が食べたい→遺影に礼→一生懸命→医師たちの研究会→→→
◆そうです。「い」から始まって「い」で終わる言葉をつないでいく尻取りです。常に、「い」で≪返る≫、次ぎの「い」に≪渡す≫から「い」返りの尻取りと呼ばれます。 (アタマとオシリが同じ「い」ですから≪ダブル≫。)
◆たとえば「ろ」で返るのでしたら、それは、≪「ろ」返りの尻取り≫で、下記のようなものです。
露天風呂→ロマンチックなヨーロッパのお城→六合目から真っ白→ろうけつ染めの手提げ袋→老人だって十人十色 →→→ (「ろ」の≪ダブル≫ですね。)
◆ここまで書いてきて思い付きました。タイヘンです。「同一作者であろうとなかろうと、一度使われた言葉は二度と使えない」というルールを大事に守っている人たちが相当多数おいでだということ。
◆つまり、「い」返りの尻取りのところで、今私が書いた「痛い」はもう次ぎには誰も使 えないのだということ。
『石あたまでも叩かれれば痛い』とか、と思い浮かんでも、「痛い」はさっき使ってしまいましたから、もう使えないのです。残念!
◆「忙しい」も駄目だそうです。そもそも「~しい」がアウトとのこと。ですから「忙しい」だけでなく、「美しい」「楽しい」「悲しい」「いまいましい」「望ましい」など全部 駄目。「~しい」という言葉は多過ぎ、かつ「~しい」は、何にでもすぐに付くから駄目なのだそうです。同様に「食べたい」などというときの「~たい」も一度だけは良く、あとはいけないというキビシサ。
◆このルールでいけば、さっき私が書いた「池」も、「鯉」も、「戦」も「嫌い」も(みんな使い勝手の良さそうな言葉なのに)再びは使えないという情け無さ。
◆確かに前記した「医師たちの研究会」の「会」は、何にでもなります。「医師たちの運動会」「医師たちの飲み会」「飲み会の二次会」「三次会」「旅行会」「ゴルフ大会」「将棋大会」……
◆これでは、制限が必要という考えが生じ、「同じ言葉は二度使えない」というルールが成立するようになるのも、もっともなことと理解できないわけではありません。
◆しかし、私はこうしたことをタブー(禁止規定)にしないことにして居ります。作る人、ひとりひとりの美意識や遊び心に委ねられていいことだと、思うからです。同じ言葉が何回使われても良し。「~しい」も「~たい」も何度でもOK!
◆のっけからの制約はひとつもなく、大丈夫、あれもフリー! これもフリー! と解放され、 思う存分あばれてほしい、遊んでほしいと願っています。
◆ただし、このあと第二部で述べる「しばり」。つまり、ゲームとしての拘束・制約はアリとします。「しばり」はゲームの難易度を高め、ゲームをより深く楽しむための束縛です。(どんなものか? ご期待ください。)
◆ここでもうひとつ思い出したことがあります。「返り」の尻取りには、このブログの第五回と第六回でやった「回文」が付き添っているということ。
◆「い」返りに挑戦しようとすれば、下記のような回文の単語がすぐに浮かび上がって来ますね。
痛い・遺体・異体・憩い・居合・遺愛・祝い・委細・畏敬・異形・異性・威勢・以内・意外・以来・依頼……
そしてこれらの単語をみな矢印でつないで行けばそれだけで立派な「い」返りの尻取りに なります。このことを覚えておいて損はないでしょう。
第二部 「しばり」のかかった返りの尻取り
◆「しばり(縛り)」は第一部で述べたフリー!フリー!の反対で、ゲーム性を高めるための≪制約的な取り決め≫のことです。
◆たとえば、≪「飲食」しばりの「は」返りの尻取り≫といったら次のようなものです。
花見酒に焼酎派→春の七草の葉→初鰹にビビッとふるえた脳波→ハーブティーを飲みながら聴くバッハ→白菜がひっか かった奥歯(濁音OK)→鱧(ハモ)に目のない伯母(濁音OK)→花嫁の好きなビビンバ(濁音OK)→ハヤシライスに涙をこぼす戦中派→鼻につんときたわさびの根葉→ハイボールをやけ飲みしてるアロハ→ハムエッグはボーイのいろは→発泡酒でワッハッハ→→→
◆そうです。飲み食いに関連した内容にすることを義務づけられた「は」返りの尻取り。 それが、≪「飲食」しばりの「は」返りの尻取り≫です。では……
◆やってみませんか。≪「飲食」しばりの「に」返りの尻取り≫を。今度は「は」ではな く「に」ですよ。お間違いなく!
◆むかしはよくやったものです。ロケバスの中でです。コマーシャルの撮影で現地へ向かう一台のバスにモデルさん、カメラマン、そのアシスタント、照明さん、メイク&ヘアアーチスト、スタイリスト、コピーライター、アートディレクターなどなどが乗り込んで、ロケ地に着くまでの間に。
◆『やるか』『やろう!』、てな具合で始まるのです。コピーライターがしょっぱなに立って宣言します。『飲食しばり~!、「は」返りの尻取り~!』ちょっとした説明があってすぐに開始です。
◆すると、運転台に近いあっちから、「ハ~イ!」うしろの方からも「出来たあ~」そして指名されれば大声で≪ハンバーガーを喰うスピードはマッハ!≫とか≪葉唐辛子をきかせてかっ込む、おいらは鷹派≫とかと大騒ぎ。よ~よ~!パチパチッと拍手が湧いたり、『なんだあ、それぇ?』と突っ込まれて『分かってもらえませんかねぇ、鷹の爪ですよ』と応じてみたり。いつも他愛なく、いつも和気あいあいでした。大事な撮影前の緊張緩和のための、楽しいひとときでもありました。
◆ですから発表も、プレッシャーがかかりやすい座席の順番制などではなく、「ハ~イ、 ハイッ」という明るく軽い≪任意の挙手制≫だったのです。
◆さて、このデンでやってみたら如何でしょうか? マイカーで家族旅行する際などに。お子さんが一緒なら、「い」返りで何でもアリのフリーフリーが良さそうですね。
≪いつもトランプでパパが勝つからくやしい≫とか……
≪いろんなアイスクリームを食べてみたい≫とか……
≪いちばん、いちばん、ママがいい≫とか……
楽しく嬉しいのが、きっと飛び出すことでしょう。
◆始める前に例として出すのには、下記のようなものがふさわしいかも知れません。 (「い」返りの場合)
≪芋ようかんを食べてるおじい。≫
≪一年生は、かわいい。≫
≪色をぬると、きれい。≫
≪いかした先輩。≫
≪生きている鯛。≫
◆お子さんたち、お孫さんたちには発表会やお誕生日パーティなどの際に、名前を詠み込み、五七五にまとめてカードに書いたものをプレゼントに添えるのも一興かと思います。
たとえば
≪タクヤくん えらいぞピアノ よくひけた≫……「タ」返り。
≪ナナミちゃん ハナマルもらって かしこいな≫……「ナ」返り。
≪ダイちゃんは 7さいじじは 70だ≫……「ダ」返り。
◆いや、上記とは別に、幾人かの仲間同士でお互いにこれをメールでやりとりするなんてことが、あってもいいわけですよね。
◆たとえば『魚介類シリーズ(魚介類しばり)の「ト」返りの尻取り。スタートするぞ~。』
初めは俺≪隣からもらった金魚に名前をつけて飼っている妹≫
そしたらAさんから≪特筆したい釧路でイカソーメンを食べたこと≫
次ぎにBさんから≪トロで笑顔もとろりっと≫が届き……
続いてCさんから≪飛び込んで鮎を追いかけたふるさと≫ですって。楽しいですねえ。 仲間からの刺激を受けて、もひとつ、もひとつと、一人一人が何回も!
◆そしてもうこの辺でひとくくり、となったら良き時代にはそれらを和綴じの本にまとめたり、手拭に染めたりしたそうです。やってみますか!
◆話が長くなりました。今回は第一部と第二部だけにします。≪ダブルの尻取り≫の第三部と第四部は次回にゆずることに致します。
◆そこで、これまたお約束どおり、皆さんに作って頂くことにしにます。宿題は第二部の初めの方に書いた≪飲食しばりの「に」返りの尻取り≫です。
◆お一人、何作でも結構です。、つまり、前後を結ぶ文中の矢印はいくつ付いてもOK!ということ。
時間が少なくて恐縮ですが2月12日までにお寄せくださいますよう。
◆内容はいわゆる「飲食物」に限らず、食器、食卓、食べる場所、作る場所、作る道具、 作る人、食べる人……など「飲食に関すること」なら幅広くOKです。
◆第一部で述べましたとおり、何のタブー(禁止規定)もありません。どうぞ、のびのび遊んでください。そして沢山お寄せください。では、お元気に。
追伸
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肉食女子が闊歩する葦原の国→肉よりも元を取るなら先ずは蟹→兄さんたち酔ってかないと誘う阿国
今回もお世話になります。
頭の先からつま先まで、肉食女子の志満子でございます。
もっときわどいのもあるのですが、自粛いたします(笑)。
by 志満子 (2010-02-01 09:25)
では続けて、
握り飯買ういつものコンビニ→ウニ食いすぎて失くす銭→煮ても焼いても食えぬワニ
今回は頑張って考えます。
思いついたらまた書きますね。
どうぞよろしく。
by 五七 (2010-02-01 14:32)
上の2つめ、
ウニじゃだめでしたね。
「ニシン大量うなる銭」に訂正します。
by 五七 (2010-02-01 14:48)
あ、また間違えた。
大量→大漁です。
コメント欄を汚しまくってスミマセン。
by 五七 (2010-02-01 14:50)
あまり難ししいのは苦手なので
ニンニクくさい兄→煮ても焼いても美味いズキーニ→人気のスイーツ買ってきたでオーキニ→庭で豆ぶつけられて逃げる鬼
どなたか格調高いのお願いします。
by 寿限無 (2010-02-01 15:14)
どひゃー、今回は大人気や!
煮干したべすぎアゴが猪木似→
2個黒たまご食べて14年長生き祈る大涌谷→
逃げるなよ、殴るぞ!盗んだろウニ
マッチョでまとめました。
おーきに!
by 一番のりお (2010-02-01 15:25)
私も挑戦。
日清製粉のマ・マーマカロニ→にんべんの鰹角煮→日本橋貝新の佃煮→ニッスイのサバ水煮→ニチレイのレトルト筑前煮→日本ハムのウイニー→日産自動車のサニー
あっ、最後は違う。
by 福達磨密輸団 (2010-02-01 23:48)
↑の方、超うまいなあ。
ちょっとビビリますが、がんばりまっす。
肉は独裁者しか食べられない国→煮豆はキライじゃないのよと微笑む鬼→逃げた方角わるく流れダマ喰らい犬死→憎らしい海老蔵釣った妹ダニ
(麻央ちゃんゴメン!)
by 赤羽デスクワーク (2010-02-02 12:58)
はじめまして。久喜市の青毛のアンと申します。
面白そうなので、挑戦してみますね♪
苦瓜に顔をしかめる浜田ブリトニー → ニースで見かけた南仏風お雑煮 → ニョッキがおいしいホテル・ニューオータニ → 煮込みには目がないトニー谷 → 尿酸値が高いですね。アルコールは控えめに → 肉や内臓もダメですよ。ではお大事に。
こんな感じでどーでしょうか??
( しかし、トニー谷は古すぎるな・・ )
by 青毛のアン (2010-02-02 16:21)
川崎在住の五郎七です。
また都都逸でやってみます!
煮ても焼いても
喰えないお方
あたしゃこのまま
焦がれ死に
↓
にっこり笑って
ごちそうさまと
女は帰る
一散に
↓
握り持ち上げ
くちびる触れて
なめて飲み干す
マルティーニ
by 五郎七 (2010-02-03 00:25)
高円寺在住のダチ瓶です(^-^*)/コンチャ!
いつもお世話になっている高円寺界隈の定食屋さんでまとめました。
肉豆腐チゲの美味しいオモニ→
似た者夫婦の定食屋のいとこ煮→
ニセのビールを売りまくってアブク銭(こういう店もある)→
煮込んだシラタキ旨いコンビニ(給料前です。てへっ)
by ダチ瓶 (2010-02-03 12:50)
国しばり、で参ります。
日本一の富士の鱒の甘露煮うまし駿河の国→
肉巻きおむすび日向の国→
煮たり焼いたりアメリカザリガニ珍重する仏の国→
日本からの白米ほしい北の国→
ニコニコとスイーツ語る大乃国
最後はご愛嬌ということで(笑)
by 水野タケシ (2010-02-04 09:24)
水野さんの傑作に、すっかり意気阻喪しています。もっと早く投稿すればよかったな…。でも他人と比較するのは遊びの邪道だと自らに言い聞かせ投稿します。
カニ縛りです
日本海なら松葉ガニ→
西伊豆行ったらタカアシガニ→
煮ても焼いてもタラバガニ→
ニーハオ好吃(ハオチー)上海ガニ→
憎いぞ唐揚げ沢のカニ→
カニ尽くしはもう終わりカニ
お粗末でございました。
by 楢崎茂彌 (2010-02-06 20:33)
五七さんと同じく追加です。花咲ガニが無かったですよね。
カニ尽くしはもう終わりカニ→
睨んで問うのは花咲ガニ
やっぱり蛇足か…。(タラバガニも花咲ガニも脚は四本です)
by 楢崎茂彌 (2010-02-06 20:49)
出遅れました~。
ことこと、ぐつぐつと、おいしそうな献立です。
ニシンは昔ながらの甘露煮
↓
ニジマスはなんと洋風トマト煮
↓
ニンジンは青菜と一緒にキムチ煮
↓
尿酸値が気になるけど牛肉はビール煮
ああ、書いているだけで腹が減ってきました……。
by 杉山竜 (2010-02-10 10:06)