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図書館の可能性№4 [アーカイブ]

図書館の可能性                

                                                                 昭和女子大学教授  大串夏身

図書館の価値を高める

(図書館の価値)と言ったとき、次の三つが考えられる。1)図書館それ自体がもつ価値。それぞれの設置目的にあわせた良質なコレクションをもつこと、つまりコレクションの価値である。2)利用者に目的をもって活用してもらい、その結果、社会的に有用な、あるいはプラスの成果物をもたらすことによって価値を評価される。3) 社会的、国家的な視点からの価値の評価。   

 

 1) 「図書館それ自体がもつ価値。それぞれの設置目的にあわせた良質なコレクションをもつこと、つまりコレクションの価値である」 これは、優れた図書をもっている図書館が社会的に高い評価を受けていることから言える。ヨーロッパの歴史ある図書館の多くは、良質なコレクションをもっていることで社会的に高い評価を受けている。日本では、その例として東京大学附属図書館が上げられる。同図書館は、紀州徳川家から「南葵文庫」 の寄贈を受け、現在そのコレクションのすばらしさを称賛されている。これは図書館が本来もっている役割、資料を後世に伝える役割を実現していると言える。 

もう少し述べておくと、コレクションのなかに歴史的に重要な図書、学問史上重要な図書、文化的な観点から評価が高い図書などが含まれている場合、一般に価値が高いと見なされる。ヨーロッパでは、羊皮紙の美しい写本やグーテンベルクの 『四十二行聖書』やインキュナブラなどを所蔵し、その点数が多い、系統的に収集されているなどの要素が加わると価値が高くなる。日本では、江戸時代の多色摺りの図版がある、滝沢馬琴などの著名作家の刊本がそろっている、近代になると有名作品の初版本があることなどで評価が高くなる。それらは、ときどき資料展示として公開される。もちろん特定テーマに関して系統的な収集が行われているとか、そうした収集を行った収集家のコレクションが寄贈されているなどによっても、高い評価が与えられる。   

 

2) 「利用者に目的をもって活用してもらい、その結果、社会的に有用な、あるいはプラスの成果物をもたらすことによって価値を評価される」 これは、小説家や研究者の成果物、つまり著名な小説や研究の新しい知見を生み出すもとになった資料を提供したとか、その図書館で勉強して立身出世した著名人、有名人がいるなどである。アメリカでは、図書館で勉強して、それがその人の人生を変えて、社会にプラスの効果をもたらしたなどの例は枚挙にいとまがないようである。たとえば、アンドリユ1・カーネギーがそれで、カーネギーはそのことを忘れず、多くの人に図書館の恩恵を受けてほしいという願いを込めて、生まれ故郷のスコットランド、そしてイギリス、アメリカに二千五百館の図書館を作るための援助を行ったと言われている。このような例は、日本ではあまり聞かない。この価値をもつのは、ノトヘル賞受賞、有名実業家、高名な小説家、著名な人物などが活用した場合である。  

 

3)「社会的、国家的な視点からの価値の評価」 これは、図書館が収蔵する学術研究成果や知識・情報の蓄積、図書館の役割が企業・国家の戦略などを考えるうえで欠かせないという視点から、価値を評価するもので、アメリカは図書館を民主主義社会を作る基盤として位置づけている。また、国が図書館にかかわる各種の政策を立案して、それをすすめようとしているのもこれにあたる。企業が企業内図書室や情報センターを充実させたり電子図書館に取り組むことなどもこれにあたる。

 次に、図書館を充実させる考え方・方法について考えてみよう。

『図書館の可能性』青弓社


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